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はっぴーめりーくりすます。2

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はっぴーめりーくりすます。2

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18


 夕方を過ぎて。
「もう、帰らなくちゃ」
 リィナはウルスに背を向けた。
「またな」
「…………」
 頷くまいと、思っていたのに。
 またね、と小さく声に出してしまった。きっと、彼のよく聞こえる耳には聞こえてしまっただろう。
 ――本当、馬鹿だなあ。
 訂正しないところも。
 聞こえていたらいいなぁ、と思うところも。
 ――馬鹿。
 もう一度、心の中で繰り返した。
 自身が眠る霊園に着いて、気付く。
「……?」
 誰かが、リィナの墓の前に立っている。
 ――近付かない方がいいのかな。おばけだと思われちゃう。
 踵を返したその時に、
「こんばんは」
 声を、かけられた。
「待っていたんです。お姉さん」
「今日は私、随分人気者だねぇ」
 苦笑ひとつ、零しながら。
 リィナは声の主へと向き直る。


 時間は少し、遡る。
 メティス・ボルト(めてぃす・ぼると)は、レン・オズワルド(れん・おずわるど)ザミエル・カスパール(さみえる・かすぱーる)と共にノア・セイブレム(のあ・せいぶれむ)が普段世話になっている教会へ来ていた。去年のように、チャリティイベントを手伝いに。
「…………」
 なのに、どうにも思考は別のところへ飛んでしまった。記憶を遡り、ハロウィンの日へと。
 あの日、リィナの前でリンスが見せた表情を思い出す。
 嬉しさや寂しさ。哀しさや辛さ。
 様々な感情が入り混じったものだった。
 何があれば、彼のあんな表情を引きだ出るのだろう。
 ――知りたい。
 強く想った。
 ――私はリンスさんの過去が知りたい……。
 リンスについて、メティスが知っていることは少ない。
 出会った日から、今日にかけて。
 共に過ごした日しか、知らないのだ。
「心此処にあらずだな」
「!」
 ザミエルに声を掛けられて、肩が跳ねた。
「悩めるメティスに良いことを教えてやろう」
「え、っと、……」
「知りたくないか? リィナ・レイスの墓の場所」
「!」
 何も話していないのに、どうしてわかるのだろう。
 呆然とザミエルを見る。ザミエルは楽しそうに口角を上げてみせた。
「想像はつくさ。私は情報通だからな」
 折り畳まれた白い紙が差し出される。手を伸ばし、受け取った。
「……逢えるでしょうか?」
 零れたメティスの言葉に、ザミエルがさあなと首を振る。
「が、今日はクリスマスだ。奇跡を期待するには十分な日じゃないか?」
 にやりと笑う緋色の目には、全てが見えているように思えた。


 メティスがリンスに『好き』と伝えた。
 それが『Like』だったのか『Love』だったのか、恐らくは彼女自身にもわかっていないだろう。
「だが答えはすぐ傍だ」
 断定口調でザミエルは言った。
「その答えがどんな未来が呼び寄せても、私達はメティスの選択を尊重しよう。その選択はアイツを必ず幸せにする」
 それ以外はありえないだろう?
 話を振られて、レンは静かに顎を引いた。
「探しに行ったのか」
 己が知りたいことを。
 恐らくは、リンスのことをよく知る人物のところへ。
 レンの中に、僅かな確信があった。
 リンスのことを知ろうとして取ったこの行動で、メティスは自身の中に芽生えた感情の答えを知るだろうと。
 真っ直ぐだ。
 真っ直ぐ、道を進んでいる。
 駆け引きの似合わない彼女にはぴったりだろう。
「待つだけか」
 彼女が答えを見つけて来るのを。
「悪くはない」
「だろ?」
 が、それはあくまでレンとザミエルの意見であり。
「レンさん、ザミエルさん、大変です! メティスさんの姿がありません!!
 迷子!? 誘拐!? 神隠し!!?」
「「…………」」
 ノアは一人、大慌てなのだが。
 どうする、とザミエルに視線を向けた。放っておけ、と返されたので、黙々と手伝いの続きをすることにした。
「えっ、どうして二人はそんな通じ合ってる感じなんですか!? 私だけ!? 私だけですか! 私だけ今回も除け者ですか!!」
 ムキー、と吠えたノアが、「ちょっとそこのカメラマン!」と呼び出された紺侍に難癖をつけ始めるのを見て。
 悪いな、と思いつつ、レン達が止めに入ることはなかった。