校長室
ニルヴァーナの夏休み
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遺跡探索―帰還 遺跡では調査隊が引き揚げ作業をする中、青葉 旭(あおば・あきら)が山野 にゃん子(やまの・にゃんこ)と同乗するイコンで、遺跡内部を巡回し始めた。 「どうして遺跡探索が終わった後にイコンで出撃してるの? こまごまイコンとか車両、人数、武器の種類だとか弾薬の数量なんかのチェックも事前にしてたみたいだけど?」 にゃん子が訊ねる。 「一応管制システムが停止したということだが、完全にこの要塞が味方と決まったわけじゃない。 今後のデータ分析なんかがすむまではな。 敵意があるのかは不明だが、襲ってきた生き物もいるし、こちらの武器なんぞが逆用されてはたまらんだろう。 そういうものの回収が目的だ」 「え、不発弾や遺棄された物資の回収ですって!?」 「そうだ。イレイザークイーンのような例も考えうるだろう? 調査隊にもぐりこんだ敵がわざと有用な物資を廃棄と見せかけて置いていっていたらまずい」 「わざと不発弾や遺棄物資を作って、敵に拾わせようとしてないかってこと?? 不発弾処理は専門メンバーに任せればいいんじゃないのかな〜……。にゃん子はこんなことするの面倒よ!」 「誰かがチェックしなければならんのだ」 にゃん子はため息をついた。 (あ〜あ。打ち上げパーティーで楽しく過ごしたかったなー……。そういうのがあるかはわかんないけど。 それかプールリゾートで遊ぶとかさ……) 遺跡探索から続々と戻ってくるイコンをイコン整備場で整備、およびデータ収集にあたっているのはイーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)とジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)だった。 「やっとニルヴァーナでもイコンが使えるようになったけど、ここの環境での動作がパラミタと同様かはまだ未知数。 それにここの設備で可能な整備も考えなきゃね」 「それでせっかくイコンが使えるようになったのに、留守番を買って出たわけね? まぁ人手不足にデータ不足ってのはわかるけどさ」 ジヴァがイーリャの言葉にようやく納得がいったという様子で頷いた。 「遺跡探索って実戦テストが始まったんだから、それにあわせて整備場の方もテスト開始よ。 足りないものはないか、イコン自体に問題が発生していないか、調査しなきゃいけないことはいっぱいあるわ。 中破した機体もあるようだし……」 イーリャは装甲に傷がつき、各所がつぶれたり大きく破損したエヴァルト機とハイコド機を見やった。ジヴァが軽く頷くと、さっと立ち上がった。 「じゃ、あたしは今回も新型パワードスーツで作業に回るわよ。 実際に整備してみて問題があったり、足りないものがあれば、ガンガン回すからね。 きちんと報告して改善してよ。イーリャ!」 「そのために私たちはいるんですからね」 遺跡の内部にいた機晶ロボは、管制システムの停止により攻撃行動を停止した。ミラボーが持ち帰ったデータの詳細な分析から、この巨大遺跡はもともとかつて攻め込んで来ていたパラミタ古種族の侵攻を妨げるための巨大要塞として機能していたことが判明した。詳細な解析の結果、ミラボーのメモリーからはその使用に膨大なエネルギーを必要とするギフトに関するデータも発見された。また、この遺跡はニルヴァーナの北側と南側を結ぶための重要な機能、「回廊」を有していることも判った。だが、遺跡北端まで調査をしたメンバーによると、北へ通じる物理的な道は存在していないという。 「『回廊』の先に、北の世界が待っているわけか……」 調査結果をまとめつつ、長曽禰はひとりごちた。この遺跡の先、ニルヴァーナの北部に一体何が待っているのか、はたしてカーディナルは何を考えているのか。遺跡から引き上げてゆくメンバーを、グランツ教の最高指導者は柔和な表情を崩すことなく見つめていた。 長曽禰はしばらくカーディナルを観察していたが、その表情からは相変わらず、その内を読み取ることは出来なかった。