校長室
ニルヴァーナの夏休み
リアクション公開中!
さて、注目の一組目はマリー・ランチェスター(まりー・らんちぇすたー)とローリー・スポルティーフ(ろーりー・すぽるてぃーふ)のペアのようだが――― 「はいどーもー、ローリーでーす、マリーでーす。二人合わせてローズマリーでーす」 まさかの芸人調の登場だった! 「ロリちゃんは思ったのですよ」 「どうしたの突然」 「今現在ビーチバレーに参加している夏來香奈ちゃんは別人なのです! まったくもって別の人、同じ人ではないのです!」 「な、なんですって〜」 「本物の香奈ちゃんは三賢者の計に従い、密かに次の布石を打つために行動されているに違いないのです!」 「そ、そんな〜、……って、そんなことあるわけありませんわ!」 マリーが平手でツッコミを入れた途端に二人の足下の床が「パカッ」と開いた。もちろん二人はプールへ真っ逆さま。 「えぇと……今のはどうして」 マルティナが鳥人型ギフトに問う、なぜに落下ボタンを押したのか、と。確かに最強感は感じられない内容であったが――― 「芸人のくせにテンポが悪い!」 まさかのダメ出し?!! しかも芸人風に登場したばっかりに……なんたる不幸か。 しかしこれで判明した。「登場の仕方が判定に影響を及ぼすこともある」のだ。二人の犠牲が教訓として、続く発表者たちの参考になると……思われたのだが――― 「フハハハ! 我が名は世界征服を企む悪の組織―――」 言い終える前にドクター・ハデス(どくたー・はです)、高天原 咲耶(たかまがはら・さくや)ペアは落とされた。 「我輩、「フハハハ!」嫌い」 続くセリス・ファーランド(せりす・ふぁーらんど)、マネキ・ング(まねき・んぐ)ペアも、 「計画もなにも、インテグラルなどという下等生物は我が軍門に下るのが至極当然の流れだ―――」 こちらも言い終える前に落下させられた。理由は、 「「フハハハ!」っぽい」 これは理不尽っ!! 更に渋井 誠治(しぶい・せいじ)とヒルデガルト・シュナーベル(ひるでがると・しゅなーべる)ペアに至っては、 「へい! お待ちっ!!」 と言った瞬間に落とされていた。 第一声次第では即座に落とされる事もあるということが判明したわけだ。後続の者たちよ、今度こそこれらの教訓を生かしてくれ。 「………………」 おぉ! 坂上 来栖(さかがみ・くるす)、ジノ・クランテ(じの・くらんて)組は無言での登場だ。なるほどこれならば第一声で落とされることは無いだろう。 「………………」 しかも来栖は未だ無言、ジノに関しては審査員に背を向け、遂にはステージから下りるという余裕っぷり。いやこれは信頼の証か。 「………………」 タメている。会場の注目を自分に集めている。これはさぞかし素晴らしい案が―――っと、来栖が口を開くぞっ! 「…………インテグラルって誰?」 パカッと見事に床が抜けた。とっさにジノが浮き輪を投げ、空中で来栖がキャッチ! 変なところで歓声が上がったが、魅せて欲しかったのはそこじゃあない。 「次は私たちです」 スウェル・アルト(すうぇる・あると)とアンドロマリウス・グラスハープ(あんどろまりうす・ぐらすはーぷ)ペアの番だそうだが、「私たち」と言った割にはステージには一人しか立っていない。そこにスウェルの姿はなく、一人ステージの中央に向かうアンドロマリウスもヨロヨロヨタヨタと変な歩き方をしていた。 「それでは、私たちの計略を発表します。大事なのは、友情と、一握りのユーモア…………って、あっ違いますスウェル! 「つねる」じゃなくて「握る」です! アンちゃんの顔をつねらないで下さい痛いです!」 ん? 顔を、手でつねる? アンドロマリウスがバタバタと動いたおかげで種が分かった。彼女の後ろ、それも服の中にスウェルが隠れているのだ。 「もう一度いきますよ。大事なのは、友情と、一握りの……一握りの……スウェル? スウェル?!! それじゃあ一握りに見えない―――あっ!!」 二身一体となったまま仲良く落ちていく。 二人羽織作戦、失敗。 「ブライトオブシリーズによるギフトの強化案を提案する!」 おぉ! リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)とララ・サーズデイ(らら・さーずでい)のペアは「月の回廊を閉じて、鍵であるブライトオブシリーズを取り出す事から始まる」と説いた。 「ブライトオブシリーズは月の港の壁を壊しかけたほどのパワーを持つ。これをギフトの体内に挿入し、保つことが出来ればきっと融合するい違いないのだよ」 まともだ! 間違いなく今までで一番まともな計略だ! 「図解すると、こうなる」 そう言って堂々とフリップを掲げた! 「…………」 フリップに描かれていたのは「鳥人型ギフトをパイプで貫いた図」だった。 無の境地に達したような、そんな無表情のまま――鳥人型ギフトは落下ボタンを押していた。 響く二つの水音。 「ギフトの力に注目したのは彼女たちだけではない!」 高らかに宣言したのはアルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)、シルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)ペアだ。そしてここから「発表ラッシュ」が始まった! 「ギフトにはまだまだ隠された力があるに違いない! 大宴会を開き、親交を深める事でそれらを開放へと導く! というのが私たちの案だ」 「俺たちの案はインテグラルに愛を注いでメロメロにするというものだ!」 間髪入れずにロイ・グリーン(ろい・ぐりーん)とエドワード・ゲネス(えどわーど・げねす)のペアがステージに上がった。言葉を切らずに主張を続ける。 「インテグラルが荒れているのは、愛が不足していたからだと思う。ヤマタノオロチが好物の酒で酔って退治されたように、愛に飢えたインテグラルにも愛を注いでメロメロにしてしまえば退治するのは簡単だろう」 「大きくて凶暴なのを倒すにはやっぱり、美少女や美女とお酒を生贄に差し出すフリをして油断させるっていう、古代からの作戦があるでしょう?」 ラッシュはまだ続く。今度の発表者は美常 雪乃(みじょう・ゆきの)と神翠 清明(しんすい・きよあき)ペアだ。 なんと! 二人は生贄役にプリンセスカルテットを推薦した! 「彼女たちの美貌なら問題ない、というか彼女たちこそ適任だよ!」 おや? 鳥人型ギフトの頭が小刻み揺れている。目が回ったか? 矢継ぎ早に言われた事で、個々の案件に対する判断も下せていない。これは……チャンスだ! これならイケる!! 「プリンセスカルテットを駆り出すなら、契約者たちのテンションを上げるのにも一役買って貰いましょ」 レオーナ・ニムラヴス(れおーな・にむらゔす)、クレア・ラントレット(くれあ・らんとれっと)ペアが追い討ちをかける。 「戦いに向かう契約者一人一人が「お気に入りを」決めるの。対インテグラルで戦果をあげると応援してるプリンセスにポイントが入る。そうして一番多くポイントを集めたプリンセスと応援者たちが集団デートするっていう企画よ。これで戦意高揚は間違いないわ!」 正直これはかなり色物っぽいが……。 結果、ボタンは押されなかった! というか鳥人型ギフトは明らかにパニック状態だ! 落下ボタンの位置はもちろん、すでに形さえ識別できていないかもしれない。 もはや団体戦の様相だが、それでもようやく、ようやくクリアできる者たちが現れたのだ! 誰もが喜びを確信した次の瞬間――― パカッ! 押されるはずのない落下ボタンが押されていた。押したのは鳥人型ギフト……ではなく、隣に座る亜璃珠だった。 「全体的に、下品だったわ」 まさかの「亜璃珠NG」?!! かくして四組連合軍の夢は儚く散った、そして力なくプールへ落下していった。彼女は「ごめんなさい。手が滑ったわ」なんて釈明していたが、本音を語った後の釈明には何の意味もない。 ちなみに、 「インテグラルに対抗して、こちらも強力な武器の量産が急務です、そこで!」 直後に発表したコンクリート モモ(こんくりーと・もも)、ハロー ギルティ(はろー・ぎるてぃ)ペアも「亜璃珠NG」を喰らうのだが、 「鳥人型ギフトさんに武器を量産していただきましょう。こちらですっ!!」 階下、プール脇に置かれた不審な箱、それを覆う布が剥ぎ取られると、そこに巨大な鳥籠が現れた。中には多数のメス鳥が入れられている。 「あたし、知ってます……赤ちゃん運んでくるの、鳥じゃないって」 ポッと頬を赤らめた所で床が抜けた。 仕方がない、これは満場一致でNGだ。「あのメス鳥たちを自慢の槍で突きまくれ!」などと誰が言えようか、誰が撮り収めようか、誰が見るのだコスるのだ。 モモが落下、鳥籠は撤去。それで解決、次に進むはずだった、のだが――― 「ポッポー! ポゥッポー!!」 鳥人型ギフトが元気ギンギンで、立ち上がり叫んで口をパクパクさせていた。