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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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ヒラニプラ南部戦記(最終回)

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6-03 魔物来る
  
 砂漠にあった小国郡は、魔物国の脅威に対するため糾合が起こり、しかし前述のようにグニジァは攻め滅ぼされた。
 残るクトレア国。
 この国は、砂漠の入り口にあたるグレタナシァが教導団らと戦闘にあるのに乗じて攻めようとしたが、それに派遣された黒羊側の王羊隊(ひろし率いる)に敗れてしまった。龍雷連隊のナイン・カロッサ(ないん・かろっさ)ロザリオ・パーシー(ろざりお・ぱーしー)は砂漠の国々と交渉のため赴いた折に捕虜と一緒にされてしまったが、無事、抜け出し、今はクトレア本国にある。クトレアは王羊隊にそそのかされた獣人の攻撃を受けたがこれを何とか退けた。
 ナインは、共に逃れた捕虜に話すと王に謁見することが叶った。
 王は、ナインに大いに礼を述べ、残る捕虜についても隊を編成し救出に向かわせる心積もりを話した。
 ナインは相手である黒羊軍の威を説いたが、もう一つ、魔物国の恐怖についても語る。
 今はこれに対さなくてはならない。
 ナインはお付のロザリオと顔を見合わせた。ロザリオは、む。と頷く。
「交渉は成立するでしょう。にゃ。
 こいつら話の分かる連中みたいだしな〜」
 ナインも、頷く。
 ロザリオは何だか急に甲賀が恋しくなった。
 三郎だってきっとこう考えるだろうにゃぁ。――生き残りを賭けて戦うにしろ守るにしろひとつひとつじゃ駄目だ。なるべく多くの部族、国に呼びかけて団結を図るべき!! 北の砂漠に統一した意思の防衛機能を作ろう! 将来に向けて。「NorthDesert連邦共和国構想を提唱する! 三郎〜〜」
「ロ、ロザリオ……」
「そのねこはよだれをたらしながら何を言っておるのだね?」
「え、ええ。つまり、こういうことです。
 現状を打破する為には砂漠の民が一致団結しなくてはなりません」
 ナインは、砂漠諸国による連邦樹立を進言した。
「ほう」
 しかし……
「王! 大変です」
 グニジァ滅ぶの報が入った。敵はやはり、魔物国である。
 グニジァも魔物国に対抗するために三小国がまとまった国だ。もう近辺の砂漠に残る国はない。北西にはドストーワ。南にはグレタナシァと黒羊郷の同盟大国があるばかり。
「まさか魔物国と手を結ぶわけにもいくまい。いよいよ黒羊の傘下に入るか」
「グレタナシァより南には龍雷連隊の守る岩城があるわ」
「何。龍雷連隊?
 ……聞かんな」
「龍雷連隊は……」
「お、王! 魔物が、魔物が砂漠にあふれ出しておりますぅぅ」
「ぬぬ、ここまでか。さきの戦闘で、もう兵も残り少ないのだ」
「王。お任せ頂けますか? ワタシが龍雷連隊のナイン」
「ロザリオ・パーシーにゃ」
 ナインは、魔物軍に勝てる策がある、として早速それを述べた。
 ナインもすでに砂漠において魔物国が最大の脅威となったと推察した。こちらは知恵をもってそれに立ち向かう。
「弓隊や、矢がなければ投げ槍投擲なんでもいいわ。遠距離攻撃を中心の部隊を迎撃に出してもらえる?」
「な、何? 籠城ではないのか」
「もうおそらくそれでは勝てない。隊はあくまで囮。あとは……」
 ナインは王に耳打ちする。
「なるほど! ……しかし問題がある」
「何が?」
「"その場所"は砂漠の民しか知らぬ」
「あんたたちじゃないの? だって砂漠の民って……」
「いや、国を持たず砂漠で昔から移住生活をする民がおる。彼らならその位置を熟知しておるのだ」
「な、なんてことなの。それじゃあ……」
 ナインは押し黙る。ロザリオからもはぁ……という中の人のため息がもれるばかりであった。
 また兵が来た。
「お、おう、王……!」
「ぬう。終わりか……」
「バルバロイと申す集団が、一時避難させてもらえないかと来ております。
 魔物にやられたのでしょうか。怪我人もいます」
「バルバロイ? 人か? 野蛮人などは国に入れんぞ」
 王はリーダーの男と会った。
 男は、バルバロイとだけ名乗った。しかし、ナインらは「……? 見たことある気するけれど」
「今、避難民を受けているどころではないのだ。
 それに残念じゃが、ここも間もなく戦場になる。おそらく我らは滅ぶぞ。おぬしらはどこへ行くつもりじゃった? 早々と出かけた方がよい」
「難民を連れ砂漠を抜けるところだった。……砂漠の民に安全なルートを案内してもらってな。
 だが予想外に魔物が増えだし抗しきれなくなった」
「な、何」「砂漠の民って言ったわね」「言ったにゃぁ」
 王、ナイン、ロザリオらが一斉に男に詰め寄った。
「ああ」
 ナインはアサルトカービンを抜いた。「ある場所まで案内してもらいたいの」
「ま、待て。何だ脅すつもりか」
「そうじゃない。戦うのよ。知恵をもってね。砂漠の民に会わしてもらえる?
 あんた、教導団の男子でしょ?」
「……バルバロイだ。
 ……。いや、わかった。俺は、霧島だ。何とかここを切り抜けねばならん」