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リアクション
6-06 グレタナシァ2
さて、宇都宮がグレタナシァで黒羊軍に決着をつけた翌日の夕刻、五月蝿 ひろし(さつきばえ・ひろし)率いる王羊隊が戻ってきた。
宇都宮は万全の体制を整えてこれを迎撃するつもりでいたが、五月蝿はグレタナシァがすでに教導団の手に落ちたと知ると、意外にもすぐ降伏を申し出てきた。
五月蝿ひろし。
ひろしは城下に入る前、撤退中の折に兵らにこう説明していたのである。
「黒羊軍も劣勢であるから、諸君の食い扶持を維持するため、グレタナシア王の軍門に下ることとした。
以後は国軍となる予定なので、禄や食よりも自由を好む者は今この場より脱盟したまえ」
軍使としてティトー・リヴィオ(ちとー・りう゛ぃお)を派遣。
「王羊隊は偉大なるグレタナシア国王陛下の旗の下に戦いたく、ついては国軍への編入と糧秣の供給をお認めいただければ……」と懇願し、グレタナシァ王の意向を窺し話を進めるなかで真相を知った次第。互いに交渉が決裂の場合は攻城戦を覚悟したが、相手は降伏を受け入れると言ってきた。無論、これは宇都宮の意志であったが。
ひろし以下、甘利 砲煙(あまり・ほうえん)、フランシスコ・ザビエル(ふらんしすこ・ざびえる)らは常住坐臥マスクを付けたまま、王のもとへ接見した。
「手傷を負って王の御前に出せるような顔ではなくなってしまい……」
熾烈な砂漠での戦いであったようだ。
「……」
王の傍には、宇都宮が侍っており、じーっとひろしを見てくる。
「……」
「……」
ひろしは、切り出した。
「え、ええ。それで……以降、我々もグレタナシァ国軍の一翼として作戦に従事致す。……」
「わかったわ。王羊隊の兵はグレタナシァに編入するわ。
ひろし殿は、そうね……」
「我らも、戦う。一兵卒としてでも。うむ。うむ」
「……。そう、わかったわ」
*
それから、さきの宇都宮の報告を受けた
孔 牙澪(こう・やりん)が手勢を率いて北上しグレタナシァに合流してきた。
「先輩! とうとうやりましたでありますねっ。おめでとうございます」
「ありがとう……正式な任務ではなかったから、なかなか苦労したわ」
「さすがでありますね。
いよいよ大詰め……でありますね! では、合同して黒羊郷との戦いに望みましょうっ」
「今から、ここから黒羊郷に攻め上がる……?」
「エッ。あ、ご、ごめんなさいであります。祥子先輩の方針の示唆があれば勿論、そちらを優先です!」
「え、ええ。ありがとう。
(それは嬉しいのだけどもう最終回だし……アクション欄が……。孔中尉さんひとりに攻め上がってもらうというのも酷よね? うーん……)」
「え、どうされたであります?」
しかし……敵は、訪れていた。
黒羊郷の脅威が去ったあと砂漠に残った最後の恐るべき敵・魔物国である。