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イコン最終改造計画

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イコン最終改造計画

リアクション

「お待たせ! アイスティーしか無かったけどいいかな?」
「はい?」
 フィーア・四条(ふぃーあ・しじょう)から突然そんなことを言われて戸惑わない人間はいない。それは要も同様であり、突き出されたアイスティーを前にどういうリアクションを返していいのか迷っていた。
「えっと……、いや、今は喉渇いてないけど?」
「そう? じゃあこれどうしようかな……」
 フィーアがアイスティーの処理に困っていると、そこに姫宮和希が反応した――いまだにタライの水に浸かった状態で。
「お〜、そんじゃ俺にくれよ。暑くてしょうがなくってさ……」
「お安い御用で」
 品評会が終わってまたしても暑さで溶けてきた和希に用意したアイスティーを手渡すと、フィーアは要に向き直る。
「えっと、それで一体何の用?」
「何の用だって? 当然魔改造しに来たに決まってるじゃないか。離偉漸屠の大きさと強さに不満があるんだろう? ならば僕の出番だ!」
「はぁ……」
 非常に自信満々といった風に、フィーアは拳を握り締める。
「で、何を持ってきてくれたの?」
「アイスティーしか無かったけど――」
「いやそれはもういいから」
「まあそうだよね、うん。だからアイアンホーンを持ってきたよ。エレノア、そっちの様子はどうだい?」
 フィーアは携帯電話を取り出し、琴音ロボの【DX・コトネカイザー】に乗り込んで作業を行うエレノア・ファーレンハイト(えれのあ・ふぁーれんはいと)を呼び出した――イコンの通信は、実は携帯で行われているのだ。
「一応、取り付けようとするところですけど……、本当にこれでいいんですか?」
 携帯越しにパートナーの獣人の声が聞こえてくる。その話しぶりに不信感を覚えた要は、今しがた改造されようとしている離偉漸屠を見やった。
 確かにアイアンホーンが取り付けられようとしていた。離偉漸屠の「股間部分」に。
「って、何してくれちゃってんの!?」
「何って、大きいことはいいことなんだろう?」
 慌てる要にニヤニヤと笑みを浮かべながらフィーアは答える。完全なセクハラであった。
「言ってる意味が違うよ! 誰があんなところにつけろって言ったの!」
「おや、大きさこそパワーなんだから、あそこにつけるのは当然のことじゃないかね」
「そんなわけないでしょ!」
 その叫びは要のものではなく、小鳥遊美羽のものだった。
「要は女の子なんだよ!? それなのにあんなのつけるなんてセクハラもいいとこじゃない!」
「さすがにあればかりは認めるわけにはいきません!」
「せっかくのネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲が穢れます!」
「ただのロボ改造をセクハラ現場にしないでよね!」
「ふざけてるんですかあなたは!」
 美羽の他にベアトリーチェ・アイブリンガー、騎沙良詩穂、伏見明子、クレア・シルフィアミッドといった魔改造に関わるメンバーも怒り心頭である――アイスティーを渡された和希も女性であったが、中身は漢であるため苦笑するにとどまった。
「ふざけてなどいないさ。何、気にすることは無い。アレだけ大きなものが備わったんだから最強と言っても過言じゃ――」
「アレックス〜」
「あいよー」
 怒る女性陣を代表して、要がパートナーから得物――刃渡り3メートル以上ある超巨大剣を取り出し、構えた。
「え、ち、ちょっと要君? そんな大きなモノ取り出して何をするのかな……?」
「こんな時にくだらないセクハラはやめてよね、この宇宙海賊もどき!」
「こぶらッ!?」
 何のためらいも無く要はそれをフィーアの脳天に振り下ろした。剣の直撃を受けたフィーアは直立した状態のまま地面に頭まで埋まった。
「あ〜あ、やっちまったなぁ。要はこんなんでも女だっつーのに……」
「ホント失礼しちゃうよ!」
 その後、取り付けるかどうか迷っていたエレノアを制し、アイアンホーンはひとまずその場に放り出されることとなった。

「がはははは! パラ実連中がイコン魔改造をやると聞いて俺様参上!」
 威勢のいい声と共に現れたのは、イーグリットをベースにカスタマイズしたイコン【宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢】に乗ったピンクモヒカンの男、ゲブー・オブイン(げぶー・おぶいん)だった。
「聞いた話だと、武器をつけてほしいとかいう話じゃねえか!」
「正確には『色んなものをくっつけて大きくしてほしい』んだけどね」
「そうか! よし任せとけ!」
 言いながらゲブーは自身のイコンに装備させていた武装を提供していく。
「まずは喪悲漢ブーメラン! まあ頭につけてモヒカンにすることだな!」
「上に琴音ロボがあるから、そこにくっつけちゃおうかな」
「お、いいなそれ! で、次にビームサーベル! 喪悲漢ブーメランにつければ、さらに高くなるぞ!」
 ゲブーが持っていたビームサーベルは、出力機構に異常があるのかなぜかモヒカン型を形成していた。
「さらにソニックブラスター! 後で接続しなきゃならねえが、ボタン1つで『ゲブー様サイキョー!』の叫びが敵をぶっ飛ばすぜ!」
「え、セリフはそれ固定?」
「まあ俺様の宇留賭羅・ゲブー・喪悲漢に積んでたものだからな。そしてさらにエッチな巨大同人誌!」
「……え、それもつけるの……?」
「おうよ! こいつを胸部につければ『ブレスト・エッチ本!』の掛け声でサイキョーページが敵に丸出しだぜぇ! こいつから目をそらせられる漢はいねぇ! あとは指先1つでダウンなんだぜー!」
「……何かあんまりつけたくないなぁ……」
「まあこれでもれっきとしたイコン用装備なんだけどな。そして最後にマジックカノン! 股間強調装備だぜ! ボタンを押せばドビューっと魔法の弾丸が飛び出すぜ!」
「……今、何とおっしゃいましたか?」
 その声は要からではなく、クレアからのものだった。
「え、だから股間強調装備――」
「さっきのに続いてあなたもですか!」
「だからそういうことはするなって言ってんでしょーが!」
「また詩穂のネオアームストロングサイクロンジェットアームストロング砲を穢すつもりですか!」
「まさか連続でそういう方が出てくるとは思いませんでした!」
「だから要は女の子なんだからそういう装備はダメって言ったでしょ!」
 再び改造メンバーの女性陣が怒りをあらわにする。
「な、何言ってんだよ! この場合はむしろ褒められるべきであって怒られる道理なんか無えだろ!? 後は礼としておっぱい揉ませてくれればそれでいいんだけど――」
「……要、さっき渡した分はまだ持ってるよな?」
「当然!」
 またしても要が巨大剣型光条兵器を振り下ろした。
「誰が乙女の胸なんか揉ませるかー!」
「あべしっ!」
 フィーアに続いて、ゲブーもまた大地の抱擁を受けることとなった。
「さすがにもうこういうのは出てこないよね!?」
「……また出てこないとも限らないし、一応、光条兵器は持つだけ持っておいた方がいいんじゃね?」
 この状況に、アレックスはこめかみを押さえる以外にすることが無かった。