空京

校長室

建国の絆 第4回(無料版)

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建国の絆 第4回(無料版)

リアクション

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 六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は、小型飛空挺を使い、拡声器を使用して、
 繁華街の上空から呼びかけ、避難所に誘導していた。
 「皆さん、もう大丈夫です! 落ち着いて避難してください!」
 優希のパートナーの吸血鬼アレクセイ・ヴァングライド(あれくせい・う゛ぁんぐらいど)が、
 救助を待っている人の声が聞こえないか、建物の中にも人がいないかを注意してまわる。
 「ユーキ、声が聞こえる気がする」
 アレクセイが優希を呼び止め、路上に面したカフェに誘導する。
 カフェの店内、椅子の下では、5歳と3歳くらいの姉妹が震えていた。
 「ママあ! パパあ!」
 「うわああああん!」
 安堵して泣きじゃくる幼い姉妹を、優希が抱きとめる。
 「もう大丈夫ですよ」
 「本当にありがとうございます!」
 無事に発見された子ども達の両親は、優希とアレクセイに何度もお礼を言うのだった。

 鷹村 真一郎(たかむら・しんいちろう)は、バーストダッシュ、超感覚などを使って、
 逃げ遅れた人や怪我人を探して回り、安全地帯まで誘導していた。
 「戦うのは戦う人に任せる。役割分担……適材適所ですね」
 積極的に戦闘はせず、避難誘導を最優先しているのであった。
 真一郎のパートナーのヴァルキリー松本 可奈(まつもと・かな)は、ともに行動する。
 「もしものときは、バーストダッシュで建物の影などに隠れて立体的に逃げ回れば、
  ガーゴイルからもうまく逃げられるはずよ」
 可奈の言うとおり、上空にはたまに遠方にガーゴイルの姿が見かけられるものの、
 見つかることはなく、救助に専念できていた。
 
 七瀬 歩(ななせ・あゆむ)も、光学迷彩で戦闘を避け救助活動に専念する。
 「安心して、もう大丈夫だよ!」
 建物の中に残っていた人達を何人か率いて、歩が繁華街を先導する。
 
 グオオオオオッ!!
 
 「ええっ!?」
 歩がふりむくと、断末魔を発したゾンビが地面に倒れたところだった。
 歩のパートナーのゴージャスな縦ロールがついたハムスターのようなゆる族チュウ・蓮華院(ちゅう・れんげいん)が、
 数十メートル後方から光学迷彩をしてついてきており、ゾンビを銃で狙撃したのだ。
 「……まったくいつまで経っても、一人だと危ない子ですわね」
 「チュウちゃん、ありがとう!」
 歩や避難していた人のお礼の言葉には、チュウはそっぽを向く。
 「さあ、こんな危険な場所、とっとと避難しますわよ!」
 
 リュース・ティアーレ(りゅーす・てぃあーれ)とパートナーのヴァルキリーグロリア・リヒト(ぐろりあ・りひと)は、
 救助活動しながら、敵の撃破を行う。
 「……」
 犠牲者になるのはいつも戦う力がない人、その犠牲を減らしたい。尊い犠牲の上の建国はどうかと思う。
 そんな思いを乗せて、リュースのチェインスマイトが、敵を屠る。
 幼いころに両親をなくし、かつて親しい人が自分のせいで惨殺された経験があるため、
 別離に対しての恐怖が、リュースを駆り立てる。
 「さあ、繁華街が壊滅したら、空京の美味しい食べ物屋さんもなくなっちゃうわよ!」
 リュースのサポートをしていたグロリアは、パートナーをたきつける。
 「……許せない!」
 「あ」
 別のスイッチも入ってしまい、グロリアは後悔しかけたが、着実に敵を一体一体仕留めていくリュースを見て、
 「ま、状況が状況だし、問題ないわよね?」
 結果オーライと思うことにした。

 如月 佑也(きさらぎ・ゆうや)とパートナーの剣の花嫁アルマ・アレフ(あるま・あれふ)は、
 捜索に専念する人の護衛を買って出ていた。
 (探すので手一杯だろうから、周りまで気がいかないだろうな……俺が守ってあげないと)
 佑也は、スナイパーライフルで、優希や真一郎、歩の後方から敵を射撃する。
 見つかった親子連れの子どもには、アルマがとびっきりの笑顔を向ける。
 「もう、だーいじょーぶ! おねーさんに任せなさいっ!」
 アルマの明るさで、救助された人にも笑顔が戻る。
 「こちらで親子連れを発見した。避難所に誘導してくれ」
 佑也が、捜索班に連絡し、逃げ遅れた人を引き渡す。
 こうして、逃げ遅れた人の避難は着実に進められていった。

 一方、空京警察とともに、皆川 陽(みなかわ・よう)は、捜索活動を行っていた。
 「警察組織ならば、仮に警官さん個人個人に超能力はなくても、
 市民の避難誘導についてのノウハウはあるんじゃないかな」
 (それに仮に自分が警官の立場だとしたら、子どもが自分らだけで決めたことで全部進めて、
 しかも己には何の力もないなんてことになったら、仕事やる気超なくしそうだもんね)
 そう考えて、警察と協力し合い、警察の面子も守るという陽の作戦は、
 警察の士気を保ち、効率的に捜索活動を行うことができていた。
 「うわあああ!!」
 いきなり飛び出してきたゾンビに驚いて悲鳴を上げる陽に、
 パートナーのシャンバラ人テディ・アルタヴィスタ(てでぃ・あるたう゛ぃすた)は、
 ゾンビをぶっ飛ばして駆け寄る。
 「大丈夫か! 悪を倒すヒーローの僕がついているからもう安心だっ!
 何人たりとも僕のヨメに傷などつけさせない!」
 「あ、ありがとう、テディ……」
 ごく普通の少年であるため、いつもながら、パートナーのヨメ発言には、
 「異世界の人は変わった冗談を言うなぁ」という解釈の陽であったが、
  イチャラブを夢見て、やる気全開のテディであった。
 
 比島 真紀(ひしま・まき)は、教導団第一師団士官候補生として、
 空京警察との協力をおこなっていた。
 「地元に密着している皆さんの力が今こそ必要なのであります!」
 警察と協力によって、避難体制は迅速に整えられ、効率的に避難がすすめられていく。
 真紀のパートナーのドラゴニュートサイモン・アームストロング(さいもん・あーむすとろんぐ)は、
 上司にトラックを申請したが、数が圧倒的に足りないため、借りられなかったので、
 真紀とともに、警官と馬車に同乗していた。
 「怪我をしている人はいないか?」
 自力歩行が困難な人や女性、子どもを優先的に搬送するため、サイモンが声をかける。
 ピストン輸送でできる限り多くの人を救助したいという作戦は、
 地元の地理に明るい警察の協力もあり、うまくいっていた。