空京

校長室

建国の絆 第4回(無料版)

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建国の絆 第4回(無料版)

リアクション

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 そのころ、逃げ遅れた人の避難を担当する者たちも、空京市民を助けるため、全力を出していた。

 白砂 司(しらすな・つかさ)は、ゴーレム掃討が行われたのとは別の広場に、
 避難用の区画を作り防衛する。
 「みんな、早くこっちに集まるんだ」
 司は、契約者と行動をともにしていない人を広場に集める。
 司のパートナーの獣人サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)は、
 契約者として精一杯がんばる。
 (私はそれほど戦士として手馴れではありませんけど、
  契約者としてみれば多分十分に心強い存在なんですよね)
 住人の不安を少しでも解くため、サクラコは精一杯背伸びしてニコニコして励まして回る。
 「さあ、私たちがお守りしますから、もう心配いりませんよ!」

 レイディス・アルフェイン(れいでぃす・あるふぇいん)は、
 避難しそこねた住人を気にしつつ、ゾンビを爆炎波で焼き払い、
 スケルトンは轟雷閃の衝撃で破壊する、
 「逃げ遅れちまったヤツは居ねぇかーっ!!
 絶対ぇに誰一人として死なせねぇからな!!」
 建物の中や、人が隠れそうな場所に向かって、レイディスが叫ぶ。
 レイディスのパートナーのヴァルキリーシュレイド・フリーウィンド(しゅれいど・ふりーうぃんど)は、
 レイディスの呼びかけに応じた住民を守る。
 「レイディース、あんまし突っ込むなよん☆」
 普段どおりの空気を読まない明るい調子で、シュレイドが声をかける。
 その様子に、助けられた人も元気を取り戻すのだった。

 稲場 繭(いなば・まゆ)も、
 逃げ遅れた人の避難誘導や、住宅地の家の中など、
 逃げ遅れた人を探していた。
 (少しでも被害を少なくしたいです。できるだけ大勢助けたいです!)
 「こ、こっちです! みなさん落ち着いて私についてきてください!」
 繭のパートナーの吸血鬼エミリア・レンコート(えみりあ・れんこーと)は、
 見つけた人たちの護衛をしていた。
 敵に遭遇したら、火術や雷術を使って牽制、
 被害が出ることを防ぐために本格的な戦闘は避けるようにしている。
 「本当はおもいっきりぶっぱなしたいんだけどねーっと」
 そうつぶやきつつも、避難民の中の少女を見て、エミリアは自重する。
 「ふふーん。可愛い女の子のためならがんばれるのよ」

 「愛と正義のヒロイン「ラヴピース」参上! ここは危険だから早く避難するッスよ!」
 深夜番組の通信販売で買った変身セットでヒーローに変身するサレン・シルフィーユ(されん・しるふぃーゆ)が、
 自宅にこもってる人に、大声で声をかけながら避難誘導する。
 「人命救助最優先ッス。戦闘はできるだけ避けるッスよ!」
 ラヴピースのパートナーのシャンバラ人ヨーフィア・イーリッシュ(よーふぃあ・いーりっし)が、
 救出活動優先のため、敵に向かって煙幕ファンデーションを使用する。
 「いくわよサッちゃん!」
 「ヨーさん、さすがッス!」
 その隙に、ラヴピースとヨーフィアが、住人を連れて避難する。

 愛沢 ミサ(あいざわ・みさ)が、
 驚きの歌を、レイディスやエミリアに向かって歌う。
 (俺の歌で誰かの力になれるなら……!)

 「始まりは当たり前に埋もれて
  今を待つ眠る時の音
  響いた鐘の音を受け
  飛び立つ鳥は餌求む為羽ばたく

  一つ一つが繋がる
  水 風
  炎 いつかの夢」

 ミサのパートナーの吸血鬼何れ 水海(いずれ・みずうみ)は、
 ガードラインでミサを守り、近寄って来る魔物を攻撃して排除していた。
 「手出しはさせないのだよ」
 (ありがとう、シーちゃん!)
 歌に専念するミサが、視線で水海に感謝を伝える。
 2人の心が通じあうには、それで充分である。

 ヒーローであるラヴピースの姿やミサの歌により、住人達は勇気づけられる。
 住人達は、ミサと一緒に歌を歌いながら、
 司の作った避難用区画に向かった。


 一方、ゾンビやスケルトンを掃討する者たちも奮戦していた。

 吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、D級四天王として舎弟を率い、住宅地にやってきていた。
 非契約者の舎弟に無茶をさせるつもりはない。
 「人に厳しく舎弟に優しく」が、竜司の個人的四天王心得である。
 「誰にもオレの狩りを邪魔させるな」
 そう舎弟に指示を出した竜司は、ゾンビを集中的に狙って血煙爪で引き裂いていく。
 「ぶっ潰してやるぜえええええ!!」
 竜司のパートナーの二足歩行のコーギー型ゆる族アイン・ペンブローク(あいん・ぺんぶろーく)は、
 光学迷彩を使用して、建物の影に隠れて、シャープシューターで竜司の死角のモンスターを撃つ。
 「金儲けのためにも竜司には強くなってもらわんと困りますからな」
 アインはそんなことをつぶやく。

 「おい、オレはもう30体もぶっ潰したぜ! てめえはどうなんだよ!?」
 竜司が、同じパラ実生の弐識 太郎(にしき・たろう)に、倒したモンスターの数を自慢する。
 「……25体だ。しかし、まだこれからだ」
 太郎は、言葉少なに言うと、スケルトンの群れの前に躍り出る。
 「弐識 太郎、推参。……全力でブッ飛ばす」
 太郎のパンチやキックにより、スケルトンは派手な音をたててバラバラになった。
 太郎のパートナーのシャンバラ人九条 華子(くじょう・はなこ)は、
 一緒に戦うが、太郎の討伐数勝負を応援しているので、
 自分からは攻撃せず、魔物に襲われたら太郎に誘導する。
 「がんばれー! まだまだこれからだよ。
  どんどん倒して、空京を救おうね!」
 華子が太郎に声援を送る。

 「てめぇら、ミナゴロシだ! ヒャッハー!」
 ロッテンマイヤー・ヴィヴァレンス(ろってんまいやー・う゛ぃう゛ぁれんす)が、
 大声で叫びつつ銃を乱射する。
 ゾンビやスケルトンへ向けるが細かい狙いは定めない。
 「うわあああ!?」
 一般人が、乱射される銃に悲鳴を上げる。
 「邪魔なんだよ! パンピーが!
  出てくんじゃねえ!
  こんな状況で当る方がバカなんだよ!!」
 ロッテンマイヤーが乱暴な発言をする。
 ロッテンマイヤーのパートナーの獣人チネッテ・ランブルス(ちねって・らんぶるす)も、
 石像系のモンスターであるゴーレムやガーゴイルは不利と見て、
 ゾンビやスケルトンに襲いかかる。
 戦闘中、だんだん興奮してきてチネッテの顔は、スミロドンのそれになる。
 ゾンビの肉を噛み千切り、吐き出して、チネッテはつぶやく。
 「……所詮は仮りそめの命か。スパイスにならんどころか肉そのものがマズイ」
 
 そんなパラ実生たちの様子を見て、一般人たちはモンスター以上に怯えていたが、
 白菊 珂慧(しらぎく・かけい)が優しく声をかける。
 「……大丈夫。僕もパラ実生なんだよ?」
 13歳の少年に、瞳を覗き込まれて、住人は安堵する。
 同じパラ実生たちが暴れるため、
 パニックになって、無闇に飛び出したりしないよう、説得やケアをするのが、白菊の狙いであった。
 「白菊、そちらではないぞ。こっちだ」
 白菊のパートナーの吸血鬼ラフィタ・ルーナ・リューユ(らふぃた・るーなりゅーゆ)が、
 方向音痴なパートナーが迷子にならないよう、先導する。
 ラフィタは、ゾンビには火術を使い、
 スケルトンには氷術を打ち込み、白菊の銃で一体一体確実に砕かせていく。

 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)は、僧侶として、アンデッドの相手をしていた。
 (せっかくゆっくり寝ていたのに……。またゆっくり眠らせてあげたい)
 そう考えて、佐々木はゾンビやスケルトンたちを見据える。
 数が多いのでパワーブレスとヒールを使用して一緒に戦う人を援護しながら、
 バニッシュはここぞという時に使用するという作戦である。
 佐々木のパートナーの英霊熊谷 直実(くまがや・なおざね)は、
 ゾンビは頭、スケルトンは腰骨を狙い個別撃破していく。
 熊谷は武人らしく、常に場の雰囲気に気を使う。
 ひさしぶりの戦場に興奮しつつも、熊谷はアンデッドに同情していた。
 「早く眠れ……ハードボイルドだ!」
 気合い一閃、ランスでスケルトンを貫き、熊谷が叫ぶ。

 「こいつら相手なら剣だけでも十分戦えるね」
 クライス・クリンプト(くらいす・くりんぷと)は、
 群の真ん中に突っ込み、注目を自分に変えさせバーストダッシュで退避、誘導する。
 「薔薇の学舎の守護騎士、クライス・クリンプト。力持たぬ空京の民の代わりに相手になるよ」
 クライスは、ゾンビやスケルトンの四肢を切断して行動不能にしていく。
 クライスのパートナーのヴァルキリーローレンス・ハワード(ろーれんす・はわーど)は、
 主であるクライスの左側から援護する。
 「同じく、騎士ローレンス・ハワード。醜悪なる者共よ、恐れぬならばかかってくるが良い」
 同じく狙いは四肢の切断であり、距離をとる時は爆炎破で確実に息の根を止めていく。
 「……死人には死人なりに命と言うものがあるらしいな」
 ローレンスがつぶやく。

 水渡 雫(みなと・しずく)は、幼いころから学んだ剣術を対スケルトン戦に応用していた。
 「私が幼い頃から教わってきたのは、残念ながら人間を相手にした戦い方です。
  スケルトンなら完全に人型ですから、何とか応用できるかもしれませんっ。
  肉を切らせて骨を断つですっ」
 カルスノウトで、骨を叩き壊すように、雫が戦う。
 雫のパートナーの吸血鬼ローランド・セーレーン(ろーらんど・せーれーん)は、
 魔法で援護を行う。
 雫にクロスボウで狙いをつけたスケルトンを、ローランドの雷術が粉砕する。
 「我輩は、水渡雫の行く末を見てみたいと思っているからね」
  だから、死なれても困る。
 そうつぶやきつつも、ローランドがパートナーを大切に思う気持ちは本物である。
 「ありがとうございます!」
 一般人をかばい、ボロボロになりながらも、雫が礼を言う。

 こうして、住宅地のスケルトンとゾンビは派手に掃討され、
 倒されなかったものはオフィス街に追い込まれていったのであった。