空京

校長室

【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い

リアクション公開中!

【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い
【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い 【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い 【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い

リアクション

 花妖精村防衛戦

――村を襲っている魔物達は、村外れ――ゲートのあった遺跡から次々と生み出されていた。
 魔物達はそれぞれ、遺跡のゲートに続いていた世界に対応した姿をしていた。
 第一世界からは幻獣のような魔物。第二世界からはローブを纏った魔法使いのような格好。第三世界は機械の体。第四世界はガンマン風。
 人の形をしている者もいるが、似ているのは形だけ。一目見ただけで生きている人間とは違うことがわかる。
 そんな魔物達は、時間と共に遺跡から速度を上げて排出されていった。

――遺跡の前ではそんな生み出された魔物達が群れを作っていた。
 九十九 昴(つくも・すばる)が、その魔物の群れに飛び込む。魔物は獲物でも見つけたかのように昴を取り囲んだ――瞬間、昴の刃が魔物達を切り裂いた。
「九十九の剣術、その身を持って知りなさい!」
 魔物を屠った昴が刀を構えると、再度群れへと飛び込む。複数の魔物を一気に殲滅させる為の行為だ。
 しかし魔物もただ黙ってやられるわけではない。自身の武器を、昴に向けて振り下ろす。
 だがその攻撃を昴が避けると、九十九 天地(つくも・あまつち)が間髪入れず【チェインスマイト】で援護を入れる。
「このまま一気に倒す! 天地! 援護を頼む!」
「ええ……共に切り抜けましょう!」
 昴と天地が武器を構え、群れへと挑んでいく。
「おーおー派手にやっとるのぉ……んじゃこっちも派手にやらせてもらおうかッ!」
 助走をつけ、綿貫 聡美(わたぬき・さとみ)が飛び上がると、身を縮めるように両足を曲げる。そして人型の魔物の顔の高さまで飛び上がると、両足を思い切り伸ばし蹴りぬく。
 聡美のドロップキックを受けた魔物は首を後ろに曲げると、そのまま倒れて動かなくなる。
 体を捻り、着地した聡美は既に次の魔物に向けて駆けだす。側転するように身体を回転させると、相手の頭を両足で挟んだ。
「せぃやぁッ!」
 振り子のように反動をつけ、その勢いで挟んだ頭を放るように振ると、相手は一回転して投げ出され背中から地面にたたきつけられた。コルバタという特殊な投げ技の一つだ。
「ふっ!」
 その直後、岡田 以蔵(おかだ・いぞう)が魔物の身体に刀を突き刺した。呻き声を上げると、魔物は動きを止め、塵と化した。
「よっしゃ! お見事!」
「いえ、綿貫先生に比べたらまだまだぜよ……しかし、次から次へと……」
 そう言うと以蔵が再度、刀を構えなおす。魔物は続々と現れ、数を増やしていた。
「ああ、こりゃ暴れがいがありそうやなぁ」
 聡美がにやりと笑みを浮かべる。
「関節技もやりたいけど、こんな数相手にするにゃ向かんわな……よっしゃ! 次はツープラトン技狙うで!」
 そう言うと、聡美が群れに向かって飛び込んでいく。
 その後ろを、刀を構えた以蔵が駆けて行った。

――別の遺跡でも、戦闘が始まっていた。
 機械の体を持った魔物が、高々と腕を掲げる。その腕は歪でありながら巨大で、まるでハンマーのようであった。
「おっと!」
 葛葉 翔(くずのは・しょう)が、【グレートソード】の面で腕を受け止める。強い衝撃が腕を走る。
「アリア!」
「うん! 翔クン!」
 腕を受け止めたまま翔がアリア・フォンブラウン(ありあ・ふぉんぶらうん)を呼ぶと、彼女は【風術】を唱える。巻き起こった風は、魔物の体を大きく揺らした。
「いまだよ翔クン!」
「ああ! てぇいやぁッ!」
 翔は腕をそのまま押し返し、がら空きになった頭を狙い剣を振り下ろす。剣に頭部を潰された魔物は、少しの間立っていたが、そのまま前のめりに倒れた。
「!? 翔クン避けて!」
 アリアが翔を狙う魔物を目にし、叫ぶ。ガンマン風の魔物、数体が構える銃口が、翔を捕らえていた。
「おっと!」
 トリガーが引かれた瞬間、翔の前を無限 大吾(むげん・だいご)が盾を構えて飛び出した。
 弾丸は全て、大吾の盾で防がれる。しかし魔物の銃撃は止まず、弾丸が次々と打ち込まれる。
「千結!」
「はいはーい! こっちだよぉー!」
 大吾の言葉と同時に、【空飛ぶ箒スパロウ】に乗った廿日 千結(はつか・ちゆ)が飛び出す。
 千結が周りを飛ぶと、魔物は目標を変え千結に銃口を向ける。
「おっと、よそ見していいのかな!?」
 銃撃が止んだ瞬間、大吾が【インフィニットヴァリスタ】の銃口を向け、トリガーを引く。
 大口径の銃口から飛び出した弾丸が真っ直ぐに放たれ、魔物の頭部を吹き飛ばす。
 続けざまに大吾は狙いを定めトリガーを引く。その度に弾丸が魔物の頭を吹き飛ばした。
「悪い、助かった!」
「おっと、礼を言うにはまだ早いぞ?」
 そう言う大吾の視線の先を、翔が追う。
 彼らの前には、まだ幾多もの魔物が待ち構えていた。
「どうやらそのようだな……来い! ここから先へは通さないぜ!」
「ああ! この防衛ライン、通さないぞ!」
 翔と大吾が、武器を構えなおした。

「……待ちなさいッ!」
 プリムラ・モデスタ(ぷりむら・もですた)が、取り逃した魔物の後を追う。
 魔物が向かう方向は花妖精の村だった。
(このままだとこいつはドロシー達の所へ……そんなこと、絶対させない!)
 プリムラは【サンダークロスボウ】を構えると、【我は示す冥府の理】を使用し、矢を放つ。
 放たれた四本の矢は、魔物へと降り注ぎ急所を貫いていく。
「……ふぅ」
 塵と化した魔物を目にし、ほっと息を吐いた――直後、悪寒を感じた。
 振り向くと、自分に牙を剥く獣型の魔物の姿があった。
「……!」
 攻撃も回避も間に合わない。思わずプリムラは目を閉じる――
「プリムラ!」
 同時に、四発の銃声。
 恐る恐るプリムラが目を開けると、そこには塵と化してく魔物と、銃を構える矢野 佑一(やの・ゆういち)の姿があった。
「怪我は無いかい?」
「ええ……気が利くじゃない、佑一」
 そりゃどうも、と佑一が苦笑を浮かべる。
「村を守りたいのはわかるけど、あまり無茶しないでくれよ。プリムラに何かあったらドロシーだって悲しむだろ?」
「……わかってるわよ」 
 少しばつが悪そうにプリムラが目を逸らす。
「一人で突っ走らないでくれ。僕も手伝うからさ」
「……足引っ張らないでよ」
 そう言ってプリムラはぷい、とそっぽを向く。その姿に、佑一は再度苦笑を浮かべた。
「……ありがと」
 佑一に聞こえるかどうか、という大きさで、プリムラがぽつりと呟いた。