空京

校長室

【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い

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【重層世界のフェアリーテイル】重層世界、最後の戦い
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第四世界・6

「見えた、遺跡だ!」
 狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)が先を示して叫ぶ。契約者達によって制されたはずの遺跡が、ガンマンの群れの中から覗いた。
「行け行け、突っ込め!」
 ガンマン達の中に突っ込みながら、乱世が叫びを上げる。極力、銃を狙ってはいるが、もはやゴールが目前だ。勢いに任せて突っ込んでいく。
 もちろん、それだけではない。派手な乱世に注目が向いた隙に、尾瀬 皆無(おせ・かいむ)が身を隠し、素早くガンマンの中を縫うように進んでいる。
「援護を! 行きますよ! 第二世界の皆が待っているはずです!」
 エルシュ・ラグランツ(えるしゅ・らぐらんつ)の放つ雷撃がガンマン達の間を走る。炎が彼らの着る革の服を焦がす。
 銃のように決定打にはならないが、彼らの動きを封じ、銃の精度を止めるためには有効な一手だ。
「ううおおっ!」
 乱世が切り開いた中に突っ込んだディオロス・アルカウス(でぃおろす・あるかうす)が、入り口近くにがっきと自分の脚部から固定具を打ち込むみ、ガンマンたちを遠ざけるように、猛烈な制圧射撃を始める。
「遺跡の中だ、行け!」
 魔法での牽制を続けながら、エルシュ。
「へ、へへ……どうだ、ここまで来たぞ!」
 びし、と銃を構え、遺跡の入口に立つ乱世。その後を追ってくる仲間たちが、皆無と共に遺跡の中へ突入する。
「まだまだ、気は抜けないぞ」
 と、エルシュ。
「分かってるっての! ほら、ここは死守だ、いいな!」
「突入を確認次第、一気に行くぞ」
 がきがきがき、と音を立てて、ディオロスがミサイルポッドを構える。
 ほどなく、遺跡の周囲のガンマンたちを爆発が吹き飛ばすことになる。


 遺跡の通路には、何人ものガンマン。その手には、サンダラーの銃が、異様な殺気をまとわせて握られている。
「……奥に三人。右に二人、左に一人」
 が、その殺気は自分の居場所を知らしめているようなものだ。加護によってその力を感じるエイミル・アルニス(えいみる・あるにす)が、ライオルド・ディオン(らいおるど・でぃおん)にそっと告げる。
「よし……俺が撃つ。その間に、突っ込んでくれ」
 ライオルドが後ろの仲間に告げつつ、床を転がって飛び出す。両手の銃から放たれた弾丸が、ガンマンたちの持つ銃を弾く。
「突っ込め、早く!」
 同様に突き進みながら、ライオルドは遺跡の中で幽鬼のように彼らを待ち構えるガンマン達の手を撃つ。銃を撃つ。
 ぴたりと寄り添ったエイミルの鋭い感覚と加護を受けた鋭敏な察知は、この遺跡にとって最大の光明といえた。
「銃にはけして触れるな。敵を狙う時は銃を狙え、いいな」
 ジャンゴの手下と共に遺跡に進入したサルヴァトーレ・リッジョ(さるう゛ぁとーれ・りっじょ)が、彼らに告げる。パラ実生を中心に説得に当たった結果、彼らアウトローたちは契約者と共に戦い、この戦いが終わった後にも協力してくれるだろう、とサルヴァトーレは感じていた。
「ジャンゴ氏が優勝し、これからというところだったというのに……しかし、まだまだ。本当の幸運をつかむまでは、ここでは終われませんよ」
 ヴィト・ブシェッタ(う゛ぃと・ぶしぇった)が突撃銃を腰だめに構え、突っ込んでいく。武器庫の目前。どこから湧いてくるのかと思うような量のガンマンたちを相手取る。世界中が銃声で満たされているような気分だ。
「パラミタも誰かが作った物語の世界かもしれませんがね。それでも、私たちが生きていることを誰にも疑わせはしませんよ」
 銃声に紛れて、ヴィトはひとりごちた。
「敵のことを考えなくてもいい。考えるべきは後に続くもののことだ。明日に向かって撃て!」
 サルヴァトーレの一括が、アウトローたちを進ませる。その足取りは、ついに武器庫の前まで辿り着く。
「準備はいいか? よくなくても行くぜ」
 間髪おかず、皆無が扉を蹴り開ける。武器庫の中には、山と積まれた拳銃や狙撃銃。
 大きく息をついて、冬山 小夜子(ふゆやま・さよこ)が銃を構える。
「銃を全て、取り除くわよ!」
 それこそがサンダラーを生み出した元凶。『大いなるもの』の力と意思の破片なのだ。
「これだけの量、骨が折れますね!」
 エノン・アイゼン(えのん・あいぜん)が翼を広げ、武器庫の中を飛び回りながら、銃を目に付くものから破壊。が、大量の銃を前にして、その大変さに思いを馳せてしまう。
「一気にやりゃあいいんですよ、少し下がってください」
 皆無がしかけた爆薬が、どん、っと小さな爆発を起こす。熱が銃の火薬を誘爆。勝手に飛び出した弾丸が別の銃を打ちぬき、連鎖的に銃の山の一部を崩壊させていく。
「ひとつも逃さないわよ。……皆を守るため。そして、『大いなるもの』を倒すために!」
 小夜子の掛け声に答えて、契約者達がさらに、武器庫の銃を一掃する。猛烈な悪意が、押し返されるように突き崩されていく……。