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リアクション
第四世界・3
「もっと街に近づかせられないのですか!?」
シャレン・ヴィッツメッサー(しゃれん・う゛ぃっつめっさー)が叫びを上げる。彼らがいるのは、第四世界に乗り込んできた大型飛空挺だ。
「この飛空挺は重層世界の移動にも使うのです。必要以上に燃料を消耗したり、ガンマンの銃弾を浴びる危険は犯せません」
悔しげに言うヘルムート・マーゼンシュタット(へるむーと・まーぜんしゅたっと)。
「それでも、ゲートまでの中継点として使えてるんです。感謝しなければ……」
飛空挺に積まれた施設を使って医務に当たっている九条 ジェライザ・ローズ(くじょう・じぇらいざろーず)。ブラゼル・レンジャーズによって運ばれてきたけが人の治療を終えたばかりで、顔にはすでに疲労の色が浮かんでいる。
「働き過ぎじゃあねえか? ったく、ちょっとは休めよな」
言葉とは裏腹に繊細な手つきで休憩のための茶を淹れながら、シン・クーリッジ(しん・くーりっじ)が告げる。
「いや……もうすぐ、次が運ばれてくるはずだ。この一杯で十分だよ」
「九条さんがいてくれるおかげで、だいぶ助かっていますわ」
医療に当たっているものがいるおかげで、シャレンは栄養食の調理や、看護に当たることができている。
すなわち彼女は、この飛空挺をゲートまでの中継地点として、特に体力のない市民やケガを負った者の対処に当てているのだ。
「次の馬車が来ます……あっ!」
町の方を確かめていたヘルムートが、叫びを上げる。
「馬に追われています……まずい!」
馬車に乗せて運ばれてくるけが人たちの後から、馬にまたがったガンマンたちが追っている。威嚇するように銃を撃ち、追い立てている。
「止めます! 任せてください!」
叫ぶと同時、飛び出してきたのはロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)。この世界にはまったく似つかわしくない重装備で馬にまたがり、馬車の背後から迫るガンマンたちに突撃していく。
迫る弾丸を盾で防ぎながら、スピードを緩めない。
「やあー!」
叫びと共に槍を振り回す。馬上のガンマンたちを突き落とす狙いだ。
馬の軌道を大きく膨らませてかわそうとするガンマンたち。自然、馬の速度が落ちる。
「もらった!」
ロザリンドの背中に隠れるようについていたテレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)が、ポンチョを跳ね上げて銃を抜く。二丁拳銃が火を噴いて、馬上のガンマンたちを次々に撃ち落としていく。
「よっしゃー、狙いどおり!」
「早く、飛空挺に向かってください!」
ガッツポーズを決めるテレサ。ロザリンドが後から迫るガンマンの前に立ちはだかり、馬車に告げる。
「運び込むわ。急がないと!」
走り出すシャレン。ヘルムートが、ロザリンドたちの援護に向かう。
「患者さんを助けないと……早く!」
立ち上がったジェライザが、わずかな医療施設を備えた医務室へ。がりがりとシンは頭をかく。
「ったく、仕方ないな……倒れても良いから、最後の一人まで面倒見ろよ」