空京

校長室

創世の絆 第二回

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創世の絆 第二回

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第一章 校舎1階〜土台、成る(4)−1〜

 校舎周辺に建設する施設に関しての提案は随時受け付けている。この日も校長であるラクシュミの元に多くの契約者たちが意見を述べに来ていたが、この日は以前の提案会議とは異なっていた。
植物園ですか」
「はい。温泉が沸いているなら、ある程度の温度と湿度は維持できるでしょうし」
 メシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)を伴うエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)の提案にラクシュミが応える。しかしそれは敷地内の仮小屋でも青空教室でもない、実際にそうした施設が建設されるであろう校舎周辺の地での事だった。
 校舎の西に隣接するエリア、実際に見える景色と手元の地図を照らしあわせて建設計画を立ててゆく。そして以前と大きく異なる点がもう一つ、
温室を作りたいという話もありましたね。造りも似るでしょうし。校舎建設予定地の東側エリアに農業地があります、そこに隣接して植物園を建設する事を許可します!!」
 校舎の下地が概ね完成した事で、周辺都市に当てられる土地が明確になった。こうなれば一気に都市開発を進めることができる。
 「容認できる建築物等に関しては、同時に土地を割り振って、建設の許可を出します」と、今日のラクシュミは実に強気だった。
 もちろん、提案の全てを受け入れるわけではない。
「植物の工場を作るぅ言うなら、自分は再生工場を提案するで!」
「ちょっ、鋼(渡辺 鋼(わたなべ・こう))、その言い方は無いだろ」
 パートナーのセイ・ラウダ(せい・らうだ)が慌てて訂正させようとしたが、
「あぁ、せやな、言葉足らずやったな。その工場ではな、ギフトを解析して分解してパワーアップさせるんや! もちろん小型化も復元も行うでぇ! 一から物を作るよりも効率的でエコやろ?」
「あ、いや…………まぁいいか」
 植物園を工場扱いした事を訂正させようとしたのだが。話が大筋に乗っていたのでセイは止めなかった。
「工場名は「RE」! リメイク、リユース、リバースの意味があるんや! どや? 面白そうやろっ?」
「アイディアは面白いですが、ギフトの解析は出来るか分かりませんよ? 正直、今の技術では難しいのではないか、という報告も受けていますし」
「そこが面白いんやないか。ロマンやで」
「校舎からは離して頂いた方が良いかと思います。得体が知れないという事もまた事実ですし」
 セイのこのフォローが効いたのか、
「わかりました。校舎の北に隣接するエリアに建設することを許可しましょう。ただし工場は「機晶学科」の施設として活用して頂きます。それでもよろしいですね?」
 校舎の北側エリアに「機晶学科」管轄の「RE(ギフト研究工場)」の建設が許可された。
「土地を割り振っていくのは良いけどネ〜」
 入りはイヤミに聞こえたが、聞けば茅ヶ崎 清音(ちがさき・きよね)のパートナーキャンディス・ブルーバーグ(きゃんでぃす・ぶるーばーぐ)の提案は尤もな提案だった。
「大きな施設から検討するべきだと思うネ。運動場が無いでしょう? 総合運動場の建設が必要だと思うネ」
「なるほど。……でも、校庭は作る予定ですよ、校舎に隣接した形になりますが」
「それじゃあろくりんピックは開けないネ。ミーが提案するのは空京スタジアムにも引けを取らない総合運動場を建設することなのヨ」
 ろくりんピック公認マスコットとして、またニルヴァーナでの「ろくりんピック」開催を実現させるためにも総合運動場の建設は必須事項。何が何でも許可して貰う、そんな決意に満ちていた。
「最初は整地しただけの広場でも良いのヨ。でも土地だけは確保しておかないと」
「運動場……スタジアムですか……」
 学校を中心とした都市の開発を考えるなら総合運動場はあって然るべきか。しかし―――
「あの……」
 乙川 七ッ音(おとかわ・なつね)が小さく手を挙げて、
「運動場までは大きくありませんが……その……音楽ホールも決して小さくはありませんので……」
音楽ホール? 大きな講堂なら校内に建設する予定だけれど?」
「あ、はい、でも……その、講堂などはあくまでも演奏用に作られているわけではないですし、音の響きも……あまり良くはないかと……」
「表現する場が必要だ、と。そう言いたいんだよね、七ッ音
「え……あ、うん。そう」
 薄い笑みと共に碓氷 士郎(うすい・しろう)がフォローに入る。
「誰かに見てもらってこそ、芸術家は成長できるんだ。……と思うよ、きっと。演奏にせよ演劇にせよ、ちゃんとした設備を備えた劇場は限必要なんじゃないかな?」
「そうですねぇ。講堂はあくまで多目的に利用できるように、ということでしたもんね。音楽ホールは必要かもしれませんね」
「は……はいっ! よろしくお願いします!!」
「それでは……校舎の西側エリア音楽ホールを、西エリアの最西部総合運動場を建設しましょう」
 ラクシュミは声を弾ませて「総合運動場は全天候型のスタジアム形式にしたいですねぇ」と言って加えた。
ろくりんピックを考えるなら、倶楽部棟も必要ですよね?」
 少し強引な主張にも聞こえるが、レティシア・ブルーウォーター(れてぃしあ・ぶるーうぉーたー)は地図を指差して続けた。
総合運動場がこの辺りですよねぇ? でしたら、この辺りはいかがでしょう?」
 校舎の西エリア、運動場のすぐ東側。ラクシュミが応えるより前に、「設計図なら私が引きますよ。これでも製図にはちょっとした自信が有りますからね」とミスティ・シューティス(みすてぃ・しゅーてぃす)が先手を打って援護した。
「部活動の数は分かりませんが、ろくりんピックの選手控え室に使うと考えれば、おおよその見当はつきます」
倶楽部棟があれば放課後の活動も活発になるはずですよぅ。3階建てにして、1階にはラウンジと会議室が2つ、ラウンジには紙コップの自販機が有ると、なお良いと思いますぅ」
 選手控え室というイメージが沸いたからか、ラクシュミは実に楽しげにこれを許可した。地球で経験したろくりんピックがよほど楽しかったのだろう。
ろくりんは別にしてもさ、地球からも大勢やってくるんでしょ? 生徒やら教師やらがさ」
 忘れちゃいけないよ、とアーミア・アルメインス(あーみあ・あるめいんす)と共にミネッティ・パーウェイス(みねってぃ・ぱーうぇいす)が軽口で続く。
「学校だからって健全な娯楽施設ばかりだと、ここに住む人も外部から来る人も滅入っちゃうと思うんだよね。例えばキャバクr―――
「キャバクr……?」
「あぁっ!! じゃなかった、間違えた!! ほら、カラオケとかゲーセンとかやっぱ欲しいじゃん? 娯楽は必要だって」
「それは、まぁ、そうかもですけど」
 じーっと白い目が見つめている、というか離れない。
「あぁ〜まぁ、ね。無理に作ってくれとは言わないよ。校舎の中に作るのは無理だって事くらいは分かってるしさ」
「当たり前です。でも、そうですね、ニルヴァーナの遺跡にもゲーセンはあることですし。それくらいなら作りましょうか」
「おぉっ、ラクシュミちゃん太っ腹っ!!」
「作るのは最後です。西のエリアの空いたスペースに作ります」
「あらら、こりゃ厳しいね」