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リアクション
第二章 校舎1階〜外形、成る(2)−2〜
「どうぞ」
「ありがとうカトリーンさん」
お茶と一緒にお菓子を添えた。ラクシュミはと言えば先ほどからずっと難しい顔をして書類を睨みつけていた。
「何のリスト?」
「あ、うん。もうすぐ皆さんがいらっしゃる頃なんですけど……」
彼女を悩ませているのは「教員推薦者リスト」。「教師に向いているのでは? ぜひお願いしたい」と推薦の声が上がった人たちには電話にて打診を済ませてある。打診する所までは良かったのだが……。
「待たせたな! リファニーよ!! 私が秘密結社オリュンポスの天才科学者ドクター・ハデス(どくたー・はです)である!!」
高笑いと共に入りて来た。声の主、ハデスは室内を見回してすぐにそれに気付いたようで、
「おや? リファニーの姿が無いようだが?」
「リファニーちゃんはギフト探索隊に加わっているはずです。ですからここには居ませんよ」
「なるほど。まぁいい。それで、本題の方は?」
「彼女は了承してくれました。ただし熾天使研究科の研究科長ではなく、一教員としてなら、という条件付きでしたけど」
「フッ。まぁ良いだろう、想定の範囲内だ。我が計画に狂いはない!!」
ハデスが再びに高笑う一方でラクシュミは小さく溜息をついた。
リファニーの件はまだ良いのだ。問題は他の候補者の方だった。
「それで、どうでした?」
リネン・エルフト(りねん・えるふと)を先頭に、2名の契約者が入ってくる。考古学科の教員に空京大学の「メジャー・ジョーンズ」教授を推薦した酒杜 陽一(さかもり・よういち)、そして食料生産科に「キャプテン・ヨサーク(きゃぷてん・よさーく)」と「アグリ・ハーヴェスター(あぐり・はーう゛ぇすたー)」を推薦した風祭 隼人(かざまつり・はやと)である。3名共に背後にパートナーが同伴している。
「フリューネさんからは返事を頂けました。探索学部の臨時講師の件、引き受けてくれるそうです」
「そう。良かった」
安堵と喜び。リネンの顔に柔らかい笑みが浮かんでいた。
「残念ながらジョーンズさん、ヨサークさん、ハーヴェスターに関しては返事を頂けていません。お話はさせて頂きましたが、もう少し時間が欲しいとの事でした」
「そう、か……」
「ま、ヨサークの旦那がホイホイこっちに来るなんざ思っちゃいなかったよ。妥当な結果だ」
「申し訳ありません。出来れば直接お話して頂こうとしたのですが、それも叶わなくて」
「話は伝わってるんだろ? だったら待てばいい。その間に俺らで出来ることをやっておきゃあ良いってもんよ」
そう言って貰えると助かるのだが、皆に期待させてしまった分、余計に申し訳なくも思ってしまう。自分の力の無さをラクシュミは恨んだ。
返答を待つしかない。確かにその通りだが、もう一度……いや、良い返事を貰えるまで何度でも掛け合ってみよう。推薦してくれた人の為にも、この学校を、学部学科を充実したものにするためにも。
「た〜い〜むちゃんっ!!」
「ひゃっ!!」
いつの間に回り込んだのか。ラクシュミの背後から土器土器 はにわ茸(どきどき・はにわたけ)がグワシッと胸を鷲掴みにした。
「ぉおぉおぉおぉお! これはなかなか」
「きゃああああああああ!!!!」
「どっちだ?! 本物か?」
「おう! 間違いないじゃ―――へぶぉっ!!」
「はにわぁ―――ぶべぇっ!!」
はにわ茸と南 鮪(みなみ・まぐろ)、共にクラッシュ! ラクシュミの拳が二人を殴り飛ばした。
「ハァ……ハァ……ハァ…………いきなり何するんですかっ!!」
我を忘れたとはいえ何たる威力か。額の宝石が光ったように見えたのは……きっと気のせいだろう。
ちなみに二人は壁にめり込んだ後も、この場に居合わせた女子たちに殴られ蹴られの袋叩きに遭った。何故って? 女の敵だからでしょう?
「難しそうな……顔……してたから……」
気を失う間際にはにわ茸はそう弁明したものの、それを誰が信じようか。乙女の胸を揉みしだいた輩に発言権など有りはしない。
「お怪我はありませんか?」
カトリーン・ファン・ダイク(かとりーん・ふぁんだいく)のパートナー明智 珠(あけち・たま)が駆け寄る。変態に、ではなく当然ラクシュミにである。
「ありがとう。大丈夫」
「それはなによりです。さぁ、こちらへ」
女性陣で集まって改めて各々椅子に腰掛けた。変態たちは男性陣によって部屋の外へと放られる。
「ただいまお茶をお入れ致します」
「あっ、そんな、気を遣ってくれなくて―――」
「ちょうどお出ししようと思っていた所です。時には休憩することも大事にございますよ」
時の長さを変えたように。ゆっくりと。茶を入れる珠の手つきと無駄のない所作に、皆の視線は自然と集められてゆく。
「焦りは禁物です。わたくし、学校は生まれ変わってからしか通った事がございませんが、学校とは一朝一夕では出来ぬものだと存じております。じっくりと作るのが、これ宜しいかと思います」
男性陣(除変態)も加えてもらい、共にティータイムを楽しんだ。
現状は決して余裕があるとは言えない、むしろ時間はきっと無い。それでも焦りは禁物、ゆっくりじっくり、練ることが大事、信じて待つこともまた大事なのだと。
茶を啜りながらに、思ったそうな。
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