空京

校長室

創世の絆 第二回

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創世の絆 第二回

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ミッション2 スポーンを迎撃せよ! その3

 小型のドラゴンや恐竜のような爬虫類ベースの漆黒の体、背には触手や長い異様な形状の刺、ぬめりを思わせるメタリックな部分が所々散在し、さらに体表を時折走るパルス。蠢くスポーンの群れを見て七篠 類(ななしの・たぐい)は身震いしながらつぶやいた。
「スポーン……なんだこれ気色悪い。そしてこいつらが学校狙ってるのか……。
 ……まぁ、俺もちょっとあいつらは倒さないといけないと思ってたところだったしな」
類は気色悪くて彼らを見たくない。そんな理由で参戦したのである。尾長 黒羽(おなが・くろは)が背後から同じく嫌そうに身震いして言う。
「露払いに、蹴散らす程度でしたらご助力してあげてもよろしくってよ?
 ……わたくしは空飛ぶ箒に乗って上から一体ずつ狙撃させて頂きますわ。
 だって、近づいて、触れたくないんですもの……」
紅坂 栄斗(こうさか・えいと)も二人と同意見のようだった。
「ああも大量に群がってこられると気持ち悪くて近寄りたくないなぁ。
 まあ、そんなこと言ってる場合じゃないけどな……」
類がこくこくと頷く。
「なんていうか……あの触手がな……」
「俺はあのぬめっているような黒地に流れる粘液っぽい光が嫌いだ……」
栄斗が心底嫌そうに言い、二人はそろってため息をついた。
ユーラ・ツェイス(ゆーら・つぇいす)がバンと栄斗の背中を叩き、夕陽のような光の刃を持つ、剣型の光条兵器を手渡した。
「ほれ、ヘマをするでないぞ。あんな雑魚共なぞに後れを取ってはわしまで恥を晒すことになるのじゃからな。
 とりあえず、わしは負傷者の回復や毒の治療などの援護に回っておく。
 無論必要とあらば攻撃する所存じゃがな」
そう言って彼らの背後にスタンバイするユーラ。
「類さん、せいぜい頑張って下さいな」
華やかな笑みを浮かべ、黒羽が箒で舞い上がる。類が殺気看破で突っ込んでくるスポーンをかわす。
「数が多いのは厄介だな。
 ……石化させる敵には石化を、っと、くそ、寄るなっ!」
さざれ石の短刀でスポーンに石化を見舞う。黒羽は地上のスポーンが届かない低空に漂いつつ、セルフモニタリングで魔力調整をしながらライトニングブラストを放っていた。雷撃が放たれるたびオゾンの匂いが漂う。
「さて、行くよ、ユラユラ。ケガしないように気をつけて援護して」
栄斗が言うと、ユーラが眉間にしわを寄せて返す。
「人前でユラユラと呼ぶなと言っておるだろうが痴れ者め」
とかく言いつつ、きちんとサポートは勤めているのだが。
{SFM0022385#無限 大吾}が類、栄斗らにオートガードとオートバリアを発動させる。
「おお、ありがたい」
「助かるぜ」
類と栄斗、ユーラが敵を見据えたまま礼を言う。
「学校は、ラクシュミちゃんの希望なんだ!それを壊さないために俺も協力させてもらう!
 俺が、俺達が、防衛ラインだからな!」
大吾のパートナー、{SFL0022386#セイル・ウィルテンバーグ}も、叫ぶや機晶斬竜刀・神薙を抜剣し、輝く刃を生成して構える。
「皆さん、なんとしてもここで食い止めましょう!
 学校の方に敵を向かわせてはなりません!」
上から黒羽が声をかける。
「毒と石化にもお気をつけあそばせ」
「……炎には猛毒、触手には石化の効果か。近距離戦にはキツいな。
 ならば……これならどうだ!」
弾幕援護で一気に群れなすスポーンが近寄れないようけん制する。伸ばされる触手をスナイプで狙い撃ち、弾き飛ばす。
セイルは戦闘モードに切り替わった。攻撃をスウェーで避け、ブレイドガードで受け流しつつ群れの中心へと突っ込んでいく。そして鬼神のごとく煉獄斬で周りの敵を片っ端から焼き切始めた。
「ウジャウジャと目障りな虫ケラ共だ……。
 くたばれ!煉獄の炎に焼かれ消え失せろ! クククッ、アハハハハッ!アーハッハッハッハッ!!」
ユーラがボソッと言った。
「おぬしも……かなり怖いぞ……」

 曖浜 瑠樹(あいはま・りゅうき)は守護隊に守られつつ、前衛のサポートにがんばるラクシュミを遠目から眺めた。
「おおお、たいむ……ラクシュミちゃんだー。和むなぁ。
 ……って、ゆっくり和むのは後だねぇ。
 新しい学校の為にも、ここはひとつ協力してスポーンを阻止しなきゃねぇ!」
瑠樹のパートナーで白猫着ぐるみのゆる族マティエ・エニュール(まてぃえ・えにゅーる)が瑠樹ののんきな口調と正反対のきびきびした口調で言う。そこでいったん言葉を切り、配下の20名の部下たちに指示を与えた。
「ここが正念場。何としても新学校に通さないように。
 他の人たちとも協力して、戦っていこうなぁ」
部下たちも瑠樹の気性は飲み込んでいる。のんびりした口調だからといって舐めてはいない。
「私は回復メインで協力していきます。
 歴戦の回復術、幻槍モノケロス、石化解除薬と準備の方はばっちりです。
 皆さん安心して存分に戦ってください!」
朝霧 垂(あさぎり・しづり)が言った。
「まずはやはり人の命を守る事が一番大切だしね。
 それに、1人の豪傑より10人の凡人の方が時によって脅威になる場合だってある。
 探索で頑張るメンバーのためにも、帰ってくる場所はキッチリと守らなきゃな!」
ライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)がうなずく。
「そうそう! 壊すのは簡単だけど、作るのは時間がかかるんだから。
 僕もイナンナの加護が使えるから、協力してみんなに行き届くようにしようね」
そう言ってマティエににっこり笑いかけた。マティエが生真面目にうなずいた。
「みんなの学校を潰されてたまるかってんだ!
 それに戦闘に不慣れなラクシュミちゃんも戦うんだし、がんばらなきゃ」
ヤジロ アイリ(やじろ・あいり)が熱をこめて言う。セス・テヴァン(せす・てう゛ぁん)がマティエとライゼに手を差し出した。
「イナンナの加護は私も使えます。皆さんよろしくお願いします。
 治療が必要でしたら手持ちのスキルで対応もできますが……。
 敵の数は多いですが、私とアイリは一体ずつ確実に仕留めるとしましょう。
 漏れを防ぐためにも、ね」
ヴァイス・アイトラー(う゛ぁいす・あいとらー)が彼らに声をかける。
「イレイザー・スポーンと戦える人たちは戦闘に専念してくれ。
 一人でも戦える人が多い方がいい。
 こういうときのために医学勉強してんだ。しっかり皆を助けるぜ!」
「治療の手伝いをしながらでも周囲の警戒は怠れない。
 敵襲や流れ弾からのヴァイスの保護は俺がする。
 ヴァイスには決して怪我をさせん。
 ヴァイスが怪我人を守り通すなら、ヴァイスを守り通すのが俺の役目だ!」
セリカ・エストレア(せりか・えすとれあ)が力強く請合う。
マティエが祈りを口にする。
「皆さんが変なものにかかりませんよーにっ」
同時にライゼ、セスも漏れがないか見つつ、イナンナの加護を使用した。
「おーし、んじゃ行きますかぁ」
瑠樹がのんびりした口調と裏腹に、すばやい動きで部下の兵とともに迫り来るスポーンの群れに突っ込んでゆく。主に関節を狙っての歴戦の武術での攻撃だ。動きの鈍ったスポーンに、マティエと部下たちが火器で集中攻撃を浴びせかける。一気に十数体が黒い霧と化した。我は射す光の閃刃でけん制しつつライゼが叫んだ。
「前方2時の方角から一群れ接近中!」
呼応した垂がすぐさまその群れに突っ込み、対神刀での多数一揆殲滅を図る。
「悪いが、こっから先にお前達の進むべき道は無い!」
垂の周囲に蠢くスポーンが放たれた魔力によって文字通り雲散霧消する。
「ばらばら来るやつは任せてくれ」
「たのみましたよぉ」
「おう!」
瑠樹と垂が、アイリの呼びかけに応える。単体で襲ってくる、あるいは最前線を越えてきたスポーンに、セスが次々と雷轟閃とコクマーの矢で雷撃を伴う遠距離攻撃を行った。合間に我は射す光の閃刃でのけん制を行い、近接戦闘メンバーのサポートもさりげなく行っている。セスの攻撃で致命傷を負ったスポーン数体がその場で黒煙と化し溶け崩れた。その合間を縫うようにしてアイリがヒットアンドアウェイでスポーンたちに奇襲攻撃を行う。時折飛んでくる触手や、爪による攻撃を則天去私でなぎ払い、ビーストオーラガントレットにすべての力を注ぎ込み、岩をも砕かんばかりの痛烈な一撃を加える。
「食らいやがれ! 俺はてめえらが倒れるまで殴るのをやめないッ!!!」
ヴァイスはその後方で、運悪く石化や毒を負ったり、怪我をしたメンバーの治療に忙しく動いていた。ナノ治療装置も大活躍だ。超人猿の超さんも、必要な薬品を取り出したり、けが人のチェックに余念がない。
「痛むか? もう少しで楽になる、がんばってくれ!」
ナーシングやヒールを総動員し、三面六臂で治療に当たるヴァイスの額には汗が浮かんでいる。応急手当で戦線に復帰できれば戦力の維持になる。凄まじい集中力と体力を要する激務だ。スポーンと戦う前衛たちとヴァイスの間にセリカが仁王立ちして、一歩も敵を通さない気構えだ。一体のスポーンが空中から急降下してきた。
「おっと、邪魔はさせねえ」
ディフェンスシフトと女王のバックラーで触手攻撃をはじき返すと、炎を吹こうとがっと開いたスポーンの口に向かい、すかさずブリザードを見舞う。
「とぉおおっ!」
きりもみで落下するスポーンに、マティエの疾風突きが決まった。セリカの頭上でスポーンは弾け飛び、溶け崩れた。
「ありがとよっ!」
「どういたしまして」