校長室
創世の絆 第三回
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水晶を奪え! 1 「メルメル大尉の復活まであと一歩……」 銃を手に、シャウラ・エピゼシー(しゃうら・えぴぜしー)は感慨深げに呟いた。 目線の先には、イレイザーの胸部に取り付けられた大きな水晶である。話によれば、あの水晶を手に入れることができれば、メルヴィア復活は目前らしい。 「傷つけずに取るっていうなら、一番確実な方法は光条兵器、かな」 「水晶を取り外すためには、それがいいでしょう」 ユーシス・サダルスウド(ゆーしす・さだるすうど)が、静かに答えた。 「よし、だったら水晶引っぺがし部隊が近づけるように援護射撃! いくぞ!」 今までの波状攻撃で、イレイザーの動きは鈍っている。一気に押し込むチャンスだ。 「てぇーっ!」 指揮の声を上げたのは、教導団大尉ルース・マキャフリー(るーす・まきゃふりー)。ソフィア・クロケット(そふぃあ・くろけっと)を待機に残し、部下を投入。一斉に砲撃を加える。イレイザーの水晶を傷つけないよう、側面からの攻撃である。 「イレイザーの知識はそう高くない。反応はきわめて動物的だ」 あの巨体ながら、イヤなものからは逃げようとする。一方で…… 「安らぎそうなら、向かってくると言うわけですか」 レオン・ラーセレナ(れおん・らーせれな)が憮然と呟いた。 「そういうこと。はじめるよ」 胡弓を構えた城 紅月(じょう・こうげつ)が、ルースとは逆方向に悠然とたたずむ。その手が弓を動かし、静かな音を鳴らし始めた。 音はすなわち振動だ。振動で外界を感じるイレイザーには、これがてきめんに効いた。ルースの砲撃から逃げるためもあって、砂をはうようにして近づいてくる。 「……なんで紅月がこんな危険な役を……」 ぶつくさと呟くレオン。 「だったら、守れよ!」 叫びながら魔力を放ったのは、涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)。氷の魔法が、イレイザーの触手を一本ずつ狙い、その動作をにぶらせる。 「分かっていますよ! これが終われば夜のご褒美がもらえることになっているんですから!」 ご褒美の内容については伏せるとして、今のレオンは光を放ち、イレイザーの目をくらませる。心安らかにいられる場所を探して、イレイザーは混乱状態である。 「今だ、行くぜ!」 砂の中から、ぼこっと姿を現したのはフロッ ギーさん(ふろっ・ぎーさん)。水かきつきの手で、楽器をかき鳴らす。一転して、激しい曲調だ。 「オーケー……みんな、合わせて!」 紅月のボーカルも激しさを増していく。今度は、イレイザーの混乱をさらに加速させ、前後不覚に陥らせるのが目的だ。 「メルヴィアを助けるぞッ!」 鋭い狙撃音。ルースの巨獣狩りライフルが、イレイザーの背後を狙う。 「任せて! せーの!」 咆吼にも似た砲撃音。ヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)のホエールアヴァターラ・バズーカが狙い違わず、イレイザーの額を打ち付ける。 「逃がさないのです!」 さらに別のポイントから姿を現したナナ・マキャフリー(なな・まきゃふりー)が狙うのは、イレイザーの手足の付け根だ。輝く魔法が、側面を次々に狙う。 紅月とギーさんがかき鳴らす戦場のリズムに合わせて、四方からの砲撃。イレイザーに蓄積したダメージは、その体の自由は、確実に奪っていった。