空京

校長室

創世の絆 第三回

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創世の絆 第三回
創世の絆 第三回 創世の絆 第三回

リアクション


超宝珠で爆破せよ!

「小暮少尉の安全を確保するためにも、イレイザーの無力化は急務……」
 パチパチとそろばんを弾きながら、ロレンツォ・バルトーリ(ろれんつぉ・ばるとーり)は呟いた。
「そのためなら、少尉が残したこれを使うのもやむなし、ですね」
 ぱちん。計算を追えたロレンツォの手の中には、小暮が保ってきた超宝珠だ。あのイレイザーの巨体にダメージを与えられるとすれば、これしかない……という計算だ。
「それじゃあ、行くわよ。イレイザーにとどめを刺す!」
 アリアンナ・コッソット(ありあんな・こっそっと)が背後に告げる。
「任せてもらおう。……この、超勇ニャーにな!」
 集中線を浴びて飛び出す如月 正悟(きさらぎ・しょうご)。その全身は白猫のキグルミらしきものに覆われている。
「……それは、作戦のために必要なものなのですか?」
「たぶん、気分の問題じゃないかと思うわ」
 思わず聞き返すロレンツォに、エミリア・パージカル(えみりあ・ぱーじかる)は頭を押さえながら答えた。
「とにかく行くぞ! にゃああああああああ!」
 ばし! と超宝珠をその手に取って、全力で突進!
「って、ちょっと! 待ちなさいよ!」
 エミリアが引き留めようとした手はぎりぎりで届かない。目前には触手を振り回して暴れるイレイザーだ。さすがに、追いかける気にはなれない。
「こうなったら、やってくれることを祈りましょう……」
 超宝珠は強い衝撃に反応する。誰かが、イレイザーにダメージを与えられる距離まで運ばなければならないのだ。
 その使命は今、超勇ニャーに託されたのだった!
 超勇ニャーは剣を手に取り、胸に一つの珠を抱く……正確には、キグルミの中に宝珠を格納しながら、襲いかかるサメを切り払い、突っ込んでいくのだ。
 イレイザー同様、砂ザメも混乱を起こしている。危険な雰囲気ともこもこの外見を併せ持つ正悟に襲いかかるのも、ふしぎではない!
「ここまでか……仕方ない」
「ちょっと、何諦めてるのよ!?」
 安全な場所から突っ込むエミリアに、ちっちっち、とキグルミは指を振った。
「俺の役目がここまでと言っただけだ! 狩生さん!」
 超宝珠を胸から取り出し、上空へと投げつける!
「気軽に人の名前を呼ぶな! そんな格好したやつの仲間だと思われるだろ!」
 飛空挺で急行した狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)が超宝珠を受け取った。
「とにかく行くぞ、突っ込め皆無!」
 ぼぼぼぼぼっ!
 飛空挺に搭載した火器をフルオープンで放ち、触手をけん制しながら、乱世もまた、超宝珠を投げる。その先には、パートナーである尾瀬 皆無(おせ・かいむ)。サイコキネシスで優しく超宝珠を受け止めて、イレイザーの背中を滑るように飛行していく。
「空飛ぶ不死身のイケメン悪魔! この俺様に任せな!」
 やけくそ気味の笑顔で叫ぶ皆無に殺到する触手、触手、また触手。
「……って、多いよ!」
 四方から触手に襲われ、従者とフラワシで身を守るが、それでも手数が足りない!
「とどめは任せた! ぶっきー!」
 思い切り振りかぶって、超宝珠を投げる。前後左右から飛来する触手が飛空挺を押しつぶすが、間一髪、乱世の召喚で皆無は呼び寄せられていた。
「ぶっきーって……もしかして、自分のことでありますか?」
 葛城 吹雪(かつらぎ・ふぶき)は、砂の中にじっと伏せていた。龍雷連隊がイレイザーを釘付けにしていたときから、身を隠して、じっと。
「……疑う余地はないのではないか」
 鋼鉄 二十二号(くろがね・にじゅうにごう)が静かに答える。現に、こちらに向かって超宝珠は投げられていた。
「……では、援護をお願いします!」
 飛空挺に飛び乗って、砂を吹き散らしながら跳び上がる。落下すれば爆発する危険な超宝珠を受け止め、さらに上昇。
「了解」
 二十二号はイレイザーの真正面に浮上。まっすぐに構えたライフルで、イレイザーの頭部を狙う。
 グオオオオッ!
 怒り心頭のイレイザーが炎を吐く。それは二十二号に直撃し、その重い体を砂にたたき落とした……が、それでよかった。
「我モトヨリ生還ヲ期サズ……」
 イレイザーの死角に回り込んでいた吹雪は、ぐっと超宝珠を握りしめて呟いた。
「って、わけにはいかないよね。ちゃんと、生還しないと!」
 そして開かれたイレイザーの口の中に、超宝珠をたたき込む。後は背を向けて、全力離脱。使い慣れた手榴弾よりもずっと早く、背後で大爆発が起こった。
「ううううっ……!?」
 吹き散らされて、飛空挺のコントロールが聞かない。空高く放り出されながら、吹雪は内心ガッツポーズを決めていた。
「……やったか!?」
 イレイザー頭部での大爆発を見て、ロレンツォが叫ぶ。
「……いえ、まだよ!」
 アリアンナが指さす先。爆煙の中から現れるイレイザーは下あごを吹っ飛ばされ、のどを半ばまで焼かれながらも、その動きを止めていなかった。