校長室
創世の絆 第三回
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水晶を奪え! 2 山のようなイレイザーの巨体へ向けて、突撃。アリアクルスイドの狙撃を受けて意識を弱らせている様子のイレイザーを、下から見上げるような角度でキルラス・ケイ(きるらす・けい)が弾幕をばらまく。 「砂ザメがまだいますわ! お気をつけて!」 「分かってるさぁ!」 ソフィリア・ローレル(そふぃりあ・ろーれる)が叫びを上げて、周囲を見回す。先陣を切ったキルラスは、片手に銃を保持したまま、砂中のサメを狙って次々に撃ち抜いていく。狙いはまばらだが、サメを驚かせるには十分だ。 イレイザーが両足を振り回す。が、自分のアゴの下の角度を狙うのは難しいようで、キルラスにとってかわすのは難しいことではない。 「ゆくぞ! 仲間を助ける!」 強化型光条兵器を両手に構え、機械の竜に乗った朝霧 垂(あさぎり・しづり)が猛烈な勢いでイレイザーの胸へと突っ込んでいく。 「で、でかいねー」 思わず呟くライゼ・エンブ(らいぜ・えんぶ)。イレイザーの胸の水晶は、並みのトラックでは乗せられずつぶれてしまうだろうというようなサイズである。 「それでもやる! 援護しろっ!」 「了解……!」 返事を返したのは大熊 丈二(おおぐま・じょうじ)。水晶周辺の表皮を少しでも弱らせようと、レーザーを浴びせる。 「飛ばないと、取り外すのは難しそうだな……!」 「それなら、任せて!」 ヒルダ・ノーライフ(ひるだ・のーらいふ)が跳び上がる。飛空挺に乗ったシャウラがその体を受け止め、水晶の元まで一気に運び上げる。 「俺が支える! きっちりやってくれ!」 全身を使えるようにするためのフォローだ。 「分かった!」 腰を押さえられながら、ヒルダは水晶を押さえる表皮に向けて剣を突き立てる。単に剣を通すだけでも難しい状況だ。 「ご奉仕してやるぜー!」 と、切り取り線をなぞるように斬りつけている垂の腕力に舌を巻きながら、それでもヒルダは剣を突きつける。 「行きますよ」 上空に飛空挺を浮かばせているのは、レイチェル・ロートランド(れいちぇる・ろーとらんと)。 「おう、ばーんとやってくれ」 大久保 泰輔(おおくぼ・たいすけ)が答える。二人の乗った飛空挺は、イレイザーの死角を縫うようにして急接近。激突の直前で、レイチェルは急制動をかけた。 「はあっ……!」 慣性の法則を利用して、レイチェルの腕が泰輔を放り投げる。 「うおおおっ!?」 自分で提案したことではあるが、さすがに巨体に思い切り打ち付けられそうになれば悲鳴も上がろうというものだ。 激突の勢いで、がッ! と剣を表皮に突き立てる。垂が刻んだ傷に刺さった剣がてこの要領で水晶を削り出そうとする。 「援護しますよ」 パートナーのシャウラと同様、ユーシスがその背を支えた。 「このまま掘り出すで!」 「シャウラ、こっちに!」 暴れるイレイザーの胸にしがみつくようにしながら、泰輔とヒルダの二人の体が、ほぼ水晶の真上に運ばれた。 「体重かけて、行くぞ!」 「こっちも行くぞ!」 真下部分に剣を突き立てた垂が叫び返し、剣先から激しい衝撃を噴き出す。水晶を傷つけず、継ぎ目を狙う真空波だ。 ぼぐ、っとその胸の水晶が浮き上がる。 「下がれ、降ってくるぞ!」 キルラスが周囲に声をかける。水晶は巨大だ。このままイレイザーに攻撃を続けていたら、落下の衝撃でまくれ上がった砂に埋もれることは不可避だろう。 「頼みます!」 敬礼を送る丈二とともに素早く撤退する。 「おりゃあっ……!」 全体重と筋力をかけて、泰輔がだめ押しの一撃を加える。最後はえぐり出す、きわめて原始的な攻撃だ。 上下から力をかけられて、ずるりとイレイザーの胸部から水晶がえぐられ、砂の上に落下していく。 激痛を伴うらしく、イレイザーがむちゃくちゃに暴れ始める。 「大人しくしなさい!」 一同が撤退を進める中、ライゼは翼を広げ、イレイザーの目前で閃光をひらめかせる。痛みに加えて目くらましを受けて、イレイザーの触手の動きはむちゃくちゃなものだ。その中をかいくぐって、部隊が下がる。 「すこし、邪魔するよ!」 「気をつけてな」 撤退する垂に手を振って、ライゼはイレイザーの背の遺跡に向かう。小暮の探索もあるが、イレイザーが逃げ出したとき、そのポイントを伝えられるように潜伏するつもりなのだ。 「イレイザーの気を引いて、ポイントを移動させるぞ。水晶回収部隊、急げ!」 イレイザーの足下の砂地に、どさりと水晶が落ちている。このままでは戦いに巻き込まれてせっかくの水晶がダメージを受けてしまうかも知れない。 イレイザーの気を引きながらの撤退。その背後では、また別の作戦が進んでいるのであった。