空京

校長室

創世の絆 第三回

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創世の絆 第三回
創世の絆 第三回 創世の絆 第三回

リアクション


クジラを守れ2

「クジラ型ギフトは外で見るとやっぱり大きいですね!
 私はクジラ大好きですよ。……クジラをいじめるとは良くないです。
 ええ、良くないです!」
断固とした調子でアンドロマリウス・グラスハープ(あんどろまりうす・ぐらすはーぷ)スウェル・アルト(すうぇる・あると)に向かって言った。
「背中に乗ると、遠くまで見えそうで、とても、好き。
 アンちゃんの言うように、クジラをいじめるのは、ダメ」
「そうです、ダメですっ!」
スウェルはそっと心の中でクジラ船長に呼びかけた。
(船長、頑張れ。私も、頑張る)
何の応答もない。空白だけが返事だった。
「お返事、ナイ……」
「マインドシールドを張ってみましょう。影響しているものを遮断できるかも?」
アンドロマリウスが呼応した。
「どうですか?」
「……ダメ」
「そこでぼーっとしてると危ないぞ」
杠 桐悟(ゆずりは・とうご)が2人に声をかけてきた。
「大丈夫。殺気看破で、警戒、してる」
スウェルはそう言って戒魂刀を抜き放ち、にこっと笑った。杠の後ろでタブレット型端末KANNAを使ってネット環境が構築されているか確認していた朝霞 奏(あさか・かなで)が、顔を上げた。
「ああ、それなら……ああ、奏、どうだ?」
「全てのネット回線も、検索サイトも、正常……といっていいのでしょうか……変わりなく使えます」
「そんなところまで再現されてるのか……。
 しかし……こんな所で勝手知ったる街とそっくりな場所に遭遇するとは夢にも思わなかったな……」
「ですが……何か妙なんです」
「うん?」
そのとき、スウェルがすっと立ち上がり刀を構えた。すぐにアンドロマリウスがフォースフィールドを展開し、すぐそばにいたエグゼリカ・メレティ(えぐぜりか・めれてぃ)が六連ミサイルポッドで狙いをつける。
「相対距離、角度良し、迎撃します」
音もなく忍び寄ってきていたスポーン十数体に向かってミサイルが舞う。ガーゴイルを引き連れた柊 恭也(ひいらぎ・きょうや)がミサイルの直撃を逃れたスポーンに、ホエールアヴァターラ・バズーカを打ち込んだ。杠もすかさず轟雷閃で迎撃し、スウェルが桜花手裏剣を投げる。
「やったか?」
恭也が首を伸ばす。
「今の群れは片付いたようです」
エグゼリカが請合った。
「みんな無事? 怪我はない?」
心配そうな表情のオデット・オディール(おでっと・おでぃーる)が駆けつけてくる。
「ああ、大丈夫、サンキュー!」
知り合いに気付いて、フランソワ・ショパン(ふらんそわ・しょぱん)が言った。
「あら、恭也さん」
なぜかオネエ言葉でフランソワが恭也に呼びかけた。
「よお」
「知り合いか?」
杠の言葉にオデットが頷く。
「お友達です」
「……ところで妙なこととは?」
「掲示板の発言などが、どこがとはっきり指摘できないのですが、現実感がないといいましょうか……」
エグゼリカの問いに奏が言葉を濁す。
「おっと……次の群れが来たぞ」
砲撃の水しぶきが上がる中、スポーンの群れが押し寄せてくる。
「あのね、フラン。ちょっと考えがあるの」
オデットがそのさまを見ながら、背後のフランソワに呼びかけた。
「あそこ、水しぶきが上がっているでしょ?
 皆に当たらないように注意しながら雷術を放てば……海水は電気を通しやすかったよね?」
フランソワは目を見開いた。この娘は戦闘支援だけでに精一杯かと思っていたが、状況を生かすような戦い方も考えていたのだ。
「……いいわ、援護する。あなたのタイミングでやりなさい」
「残党は任せろ」
恭也が言い、スウェル、杠らも武器を構え、オデットに頷きかけた。水しぶきにスポーンが包まれた瞬間、オデットは雷術を放った。耳を聾する爆音とともに凄まじい火花が散る。多少残ったスポーンも、他の面々が切り伏せ、砲撃を浴びせるとあっという間に霧散した。
「やったわね」
フランソワがそういって、片目をパチンとつぶって見せた。

「ルシアちゃん怖くない?大丈夫?」
北月 智緒(きげつ・ちお)がルシアに問いかける。
「うん、大丈夫!」
ルシアが元気よく答える。桐生 理知(きりゅう・りち)がギフトに侵攻してこようとするスポーンの触手にアシッドミストを放ち、それを溶かした。
「ルシアちゃんもクジラ型ギフトも守るんだから!」
ついで毒炎を吹こうと口をあけたスポーンの前に、氷術で氷の壁を出現させ、炎をくいとめる。理知がふわりとジャンプしてスポーンに向かって爆炎波を放った。
「ナカナカやるナ」
どこか壊れたような声がして、ルシアたちは振り返った。そこにはレイカ・スオウ(れいか・すおう)がうろたえながら立っていた。
「あ、え、今の発言は私の魔鎧で……」
「ようヤく主がワタシをマトうか……ククッ、ギィヒヒヒヒッ!
 じツに、ジつにタのしミだよ!ヒャグフフ、クィヒ!」
レイカの魔鎧、ユノウ・ティンバー(ゆのう・てぃんばー)が不気味な笑い声を上げる。レイカがかぶせるように叫んだ。
「あの! 私達もクジラを護りますからっ!」
そう言って、前線で戦うリファニーの元へと駆け出してゆく。
(うう……見た目がいつもと全く違いますし、リファニーさんに誰だか分からないと言われたらどうしましょう……)
レイカの思いをよそに、ユノウは戦闘に参加できることを喜んでいるようだった。襲ってくるスポーンにミラージュで回避行動を行い、、フォースフィールドを展開して炎を防ぐ。極端に射程を短くし、その代わりに威力を強化したシャホル・セラフ『ドラグーン・マスケット』の諸刃の剣の力を借りて、スポーンに強烈な攻撃を見舞う。
「友達とクジラさんは傷つけさせないんだからー!」
智緒が叫び、ルシアのそばに迫ったスポーンを智緒の爆炎波と、理知の火術が同時に襲った。熱耐性のないスポーンが消し炭と化した。
「こっちは任せて!」
「ギヒヒヒヒヒ!」
レイカがユノウの笑い声に怯みつつ、残ったスポーンに雷術を炸裂させた。
「ばっちりねっ!」
ルシアが叫んだ。
「みんなで協力すれば大丈夫!」
理知がにっこりと笑った。

 リファニーは周囲を見渡した。激しかったギフトへの攻撃が、だいぶ散発的なものになってきている。どうやら勝機が見えてきたようだ。
「がんばりましょう……」
呟くと彼女は、熾天使の力の維持に意識を集中した。