空京

校長室

創世の絆 第四回

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創世の絆 第四回

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儀式初日(術者たちと儀式の始まり)

「じゃあ、行ってくるよ」
 涼介・フォレスト(りょうすけ・ふぉれすと)その場所を前にして言った。
 奥義『メテオスウォーム』を放つべく、その儀式を行う校庭中央には術を扱えるシーアルジスト(召喚師)たちが集められていた。
 涼介もその一人であり、今回は術の制御を担当する事になっている。
「頑張ってね、涼介兄ぃ。応援してるからね」
 パートナーのヴァルキリーの集落 アリアクルスイド(う゛ぁるきりーのしゅうらく・ありあくるすいど)がギュッと強く涼介の手を握る。握るのは片手、右手だけ。左半身は『ホエールアヴァターラバズーカ』を担いでいるため塞がっている。
アリア(アリアクルスイド)の方が「いざ行かん!」って感じだな」
「エヘヘ。儀式の護衛はお任せあれ。イレイザーが来たって平気なんだから」
「そいつは頼もしいな」
 エッヘン! とアリアクルスイドは『ホエールアヴァターラアーマー』で覆った胸を張って…………頑張って強引に張っていた。
「術の発動は「儀式の成功した時からどれほど」で行えばよいのだろうか」
 リア・レオニス(りあ・れおにす)が三賢者の一人に問いた。彼は術の発動を担当するという。
「時間が経つほどに術の威力が弱まるようなら、儀式の開始時刻を合わせる必要があるだろう?」
「それは問題ありません。もちろん合わせられるならそれに越したことはありませんが、一度儀式が成功してしまえば術を保つことはさほど難しくはないでしょう。むしろ儀式を成功させる事の方がよっぽど難しいはずです」
 ……微妙に論点をズラされたか? いやそもそも三賢者とはそんなものだったか。とりあえずのつまりは、儀式の三日が経過した直後からインテグラル・ナイトに術を放つまでの間は「涼介頑張れ」というわけだ。……まぁそこはもちろん自分も協力するとして。
 リアは気を取り直して次の問いへ移る。
「それから、儀式では「皆で輪をつくる」という事だが、これは『メテオスウォーム』を使える者とそうでない者が一緒になって輪を作るという意味か?」
「どういうことです?」
 ……なぜ理解できない。
「いや、だから、自分たちはもちろん構わないが、術者でもない者たちまで同じに拘束する必要があるのか、という事だ」
「なるほど。答えは「NO」です。術者とそれ以外の者は別の輪で構いません。最低二人が輪を成していれば儀式は継続されますので、休憩も交代で取れば良いと思います。こんな簡単な事が聞きたかったのですよね?」
 一言多い……。
「術者でない方は「この場に居ること」が大事なのです。同じ空気、雰囲気、時を過ごして感じる事で魔力が満ちてゆくのです」
 それを聞いて安心したのはリアのパートナーであるレムテネル・オービス(れむてねる・おーびす)だ。術を使えない彼は今回、食事や灯りを用意する事に徹しようと考えていたのだが、それらの行為でさえ儀式の一部として役立つという。これはますます気合いが入るというものだ。
「そういうことなら、早速始めましょう」
 フレデリカ・レヴィ(ふれでりか・れう゛ぃ)が凛とした声で言った。「この場に居ることが大事なら、儀式の準備をしていても良いという事でしょう? だったら始めてしまって構わないのよね?」
 既に術者は揃っている。フレデリカのパートナーであるルイーザ・レイシュタイン(るいーざ・れいしゅたいん)はもちろん、他にも『メテオスウォーム』を修得している術者たちは校庭に集結済みだ。
「誰かきっと『パワーをメテオに』とか言うんですよ」
 !!!
 待ちくたびれたのか。術者の一人、牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)がメタな事を言っていた。
 パートナーのナコト・オールドワン(なこと・おーるどわん)がいまいちピンと来ていない事がせめてもの救いか。気付かなくてもいいですとも、むしろ気付いてくれなくていいですともっ。
 千載一遇のチャンスを逃したナコトだったが、彼女がそれに気付かなかったのには理由がある。彼女は見とれていたのだ、神代 明日香(かみしろ・あすか)ノルニル 『運命の書』(のるにる・うんめいのしょ)姿に、二人の手元に。儀式は始まっていないというのに二人は既に手を繋いでいたのだ。
 何とも幸せそうな、嬉しそうな。そんな二人から目が離せなくなっていたようで―――
「私も……至高のマイロードの手を……」
 一直線に強引にナコトアルコリアの手を取った。『パワーをメテオに』に対する応えが「手を握る」だった事にアルコリアは目を丸くしていたが、ナコトは、
「ぎ……儀式が始まりますから、そ、その為にです」なんて慌てて言って流そうとした。
「あ、そう。でもそれだと書きにくくない? 魔法陣、書くんでしょ?」
「かっ、書きますよ、これから書くんです。こう見えてもわたくし、左手で魔法陣が書けるんですよっ」
 動揺が丸見えだ、何も隠せていない。結局不格好な魔法陣が書かれることになったが、それでも僅かな足しにはなるという。
 術者たちが向かい合い、そして手を取り合って輪をつくる。奥義『メテオスウォーム』の儀式がここに始まった。