空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

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玉座の間への道を切り開け! 2

「グランツ教にシャンバラを渡すわけにはいかねぇ!」
【東シャンバラ・ロイヤルガード】の姫宮 和希(ひめみや・かずき)は、
ロイヤルガードとして、理子たちの用心棒を買って出ていた。

和希は、アイシャやジークリンデ、ネフェルティティたちの
背負った責務の重さを感じ、それを少しでも助けられればと考えていた。
しかし、そのようなことは口には出さず、
明るい態度で、勇気づける。
「行くぜ、みんな!
玉座の間は近いぜ!」
ドラゴンアーツの怪力で、アールキングの根を殴り飛ばし、蹴り飛ばし、
和希は道を切り開いていく。

他方、パートナーのガイウス・バーンハート(がいうす・ばーんはーと)は、
土木建築の知識などで、
建物の構造を分析する。
また、戴冠を成功させるために、
別働隊が動いていることを、理子たちに知らせる。
「エメネア?」
「そうだ。あくまでネフェルティティの戴冠の保険というところだが、
アルティメットクイーンに女王の座を渡すわけにはいかないからな」
無用な衝突を避けるため、ガイウスは根回しをする。

エメネア・ゴアドー(えめねあ・ごあどー)に、
女王戴冠をさせようとしている者たちの存在を聞き、
理子たちは驚いたようだった。

要人警護とサバイバルで、護衛を行っていた
泉 椿(いずみ・つばき)が、
その話を聞いて言う。
「エメネアを女王に?
まあいいんじゃねえか?
ネフェルがダークヴァルキリーだったからって悪いとは思わねえが。
一人じゃ大変な役目なんだから、みんなで支えあえばいいだろ?
パラ実の校長と違って、二人制ってわけにもいかねえのかな……」

ネフェルティティがかつて、
呪いによってダークヴァルキリーにされたということも、
ひとまずエメネアに女王の座をという意見の前提にはあるということだった。

緋月・西園(ひづき・にしぞの)は、
サンダーブラストなどの魔法で、椿たちを守っていたが、
今は、バーバ・ヤーガの小屋を、ネフェルティティや理子たちに提供して休憩所にしている。

(女王にはそれなりの格が必要よ。
誰がなってもいいというものじゃないわ。
椿には権力争いに巻き込まれてほしくないけど。
知らん顔をしてるのも、椿らしくないものね……)
椿の発言に対し、
思うところのある緋月だったが、
パートナーの裏表のない言葉に、複雑な気持ちとなる。

一方、
【六本木通信社・ニルヴァーナ支局長】でもある、六本木 優希(ろっぽんぎ・ゆうき)は。
戴冠式に同行して、
映像を含めた内容を報道機関に提供するつもりだった。
その中で、
ネフェルティティに、戴冠式の覚悟のほどを聞く。
「過去の経緯から、反発はあり得ると思うのですが、
どう対応し、覚悟されていますか?」

優希のパートナーの麗華・リンクス(れいか・りんくす)は、
護衛として、襲撃されないよう目を光らせつつ、思う。
(アムリアナ元女王陛下が推すネフェルティティ嬢ならば、変わらぬ忠誠を誓える。
エネメア嬢は……世話が焼けそうだが守り甲斐もありそうだ)

一方、酒杜 陽一(さかもり・よういち)は、
エメネアへの女王の力の一時的な譲渡へと賛成をする。
「発案者達は、大荒野の人々の為に、復興に取り組み続けている人物です。
信じていいと思います。
それに、万一の場合に備えて、
シャンバラや大勢の人々を守る可能性を少しでも高める為にも、
保険を掛けておいた方が良いと思います」
パラ実生を中心としたグループの行動に対し、陽一は、信頼を持っていいと主張する。
(個人的にも、理子さんの為にもそうすべきだと思う)
そして、あるいは、その方が、恋人の理子の負担や危険を減らすことにつながるかもしれない。
そうも考えていた。

「うーん……」
理子は、話を聞いて、複雑な顔になった。
「エメネアを女王にするのは
いろんな意味でちょっと難しい気がするけど、
皆が、シャンバラのことを考えてくれているからってことはわかったわ。
私たちは、ネフェルティティを戴冠させられるよう、頑張りましょう!」

一方、ネフェルティティは、優希の覚悟を問う言葉に対して、
しっかりとした言葉で返した。
「私がかつて、果たすことのできなかった責任を、
今、果たしたいのです。
ずっと一人でがんばってくれていたアイシャ女王のためにも。
呪いを受けていたとはいえ、
シャンバラの大地を私自身の手で傷つけてしまったのは事実です。
だからこそ、今、シャンバラを救うことが、
私が果たすべき責任だと思います」

そして、ネフェルティティは、エメネアのことを案じる。
「……あの時、エメネアさんは、私のことをかばって、
代わりにアールキングに飲み込まれてしまったのです。
無事だといいのですが」
「大丈夫、きっと、無事でいますよ。
良雄さんが無事なのがその証拠です」
「そうです、ネフェルティティ様。
エメネアさんを助けるためにも、
俺たちが無事に玉座の間にお連れします」
優希と、陽一が励まし、ネフェルティティはうなずく。
「そうですね。そのためにも頑張らなくては」

「お嬢、来たぞ!」
そうしていると、麗華が、アールキングの根の襲撃を伝える。

「おしゃべりは終わりってわけね!
うおーっ!
私の超絶パワーを見せてやるわよー!」
正確には、「私のアイテムの」だったが、
酒杜 美由子(さかもり・みゆこ)が、
機晶戦車と機晶戦車用大砲で、アールキングの根を吹っ飛ばす。

一行は、再び、アールキングの根と対峙した。

「グランツ教にシャンバラを渡すわけにはいかない。
護衛をするのも、バウンティハンターの仕事のうちさ」
十文字 宵一(じゅうもんじ・よいいち)は、
お下がりくださいませ旦那様で、ネフェルティティたちを守る。

「待ってくださいでふ、
攻撃をやめてほしいでふ!」
花妖精のリイム・クローバー(りいむ・くろーばー)が、
アールキングの根に向かって、人の心、草の心で呼びかける。
しかし、返事は帰ってこず、
その代わりに、根が激しく振り下ろされた。
「大丈夫か、リイム?」
宵一は、宮殿の床をころころと転がったパートナーを気づかう。
「こ、こうなったら、やるしかないでふ!」
フェニックスアヴァターラ・ブレイドを10メートルの大きさに巨大化させると、
リイムは爆炎波を放つ。
攻撃を受け、アールキングの根が、怒り狂ったように激しく暴れる。

その様子を見ていた、
蔵部 食人(くらべ・はみと)は、
魔鎧の魔装侵攻 シャインヴェイダー(まそうしんこう・しゃいんう゛ぇいだー)を身にまとい、
主に、ランスバレストで攻撃を行っていたが。

「なあ、代王さんたち。
ここの宮殿の壁に穴を開けてしまうかもしれないが、
思いっきり突撃してもいいか?」
「いいわよ、どんどんやっちゃって!」
「かまわない、私が許そう!」
理子とセレスティアーナがうなずく。
「そうか。なら行くぞ!」
魔装飛槍ヴェイエル・キホーテの力で、
アンダーグラウンドドラゴンを加速させると、
食人は、アールキングの根が密集しているところに突っ込んでいく。
「限界突破! くらえー!」
アールキングの根がはじけ飛ぶ。

「俺達の想い・絆を貴女に託す。
この世界を我が物にしようとする輩に見せ付けてやろう。
俺達の想いや絆の力が明日を、未来を切り開くんだと!」
神崎 優(かんざき・ゆう)が、ネフェルティティに宣言する。
そして、アールキングに向き直る。
「この世界をお前達の好きにはさせない。
この世界の未来は俺達が切り開く!!」
優は、仲間たちと協力しながら、燕返しや疾風突きを繰り出す。

「たとえアルティメットクイーンに女王の力を授ける事が正しいのだとしても、
この世界を脅かす輩に好きにさせる訳にはいきません!!」
陰陽の書 刹那(いんようのしょ・せつな)も、
続けて、ホワイトアウトを放つ。
「私達の想い・絆の力で未来を切り開いて見せます!!」

こうして、アールキングの根は退けられた。

宮殿の廊下の先を見て、
優が、蒼空学園 大学部 考古学科としての、考古学の知識で、
玉座への道の見当をつける。
「おそらく、この時代の建物なら、
あちらの方角に重要な施設をつくるはずだが……」
「ええ、たしかにそのとおりです」
「そうか、貴女は、この宮殿の住人だったな」
優に、ネフェルティティがうなずいた。

一行は、迫りくるアールキングの根をかいくぐり、
激しく戦いながら、玉座の間へと急いだのだった。