空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

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戴冠式 2

(以前、未来のグランツ教が
どんなヤバいことをしたか2度も見て来たあたいにしてみりゃ、
あのエルキナとかいうクソ女のいいなりなんてありえねえ!)
狩生 乱世(かりゅう・らんぜ)は、
そう考えたからこそ、
アルティメットクイーンへの支配には真っ向から対立する気だった。
しかし、表だってそれを行っては、
天御柱学院に迷惑がかかると考えて、
自ら、パラ実生となり、自由に動けるようにしたのだった。

「テメェらの相手をしてるヒマなんかねえんだ!」
乱世は、アールキングの根を攻撃し、
少しでも早く、玉座の間へと迫ろうとする。

(エルキナは「地球」を機晶エネルギーテロの標的にしてきた。
もし学院が下手に奴に反抗したとみなされれば、
地球側にも手を回して圧力をかけてくるだろう。乱世にしては、冷静な判断だ)
パートナーのグレアム・ギャラガー(ぐれあむ・ぎゃらがー)は、
パイロキネシスで、アールキングの根を焼き尽くす。

源 鉄心(みなもと・てっしん)は、
パートナーのティー・ティー(てぃー・てぃー)の望みをかなえるためにも、
ネフェルティティを守ろうと思っていた。

「ユグドラシルでは世話になったな」
アブソリュート・ゼロで、ティーを守りながら、
鉄心がアールキングを攻撃する。
中枢のような場所がわかれば、一気に攻撃したいと思っていたが、
ここにいるアールキングの根は、末端のようだった。

(かつて、女王として命を投げ打って尽くした彼女のためにも、
アイシャを救うためにも、
必ず、玉座の間へと送り届けよう)
鉄心の決意と同様、
ティーもまた、戴冠式の成功を願っていた。

「届いてください!」
クリエイト・ザ・ワールドで、龍を具現化し、
ティーは、アールキングの根を喰らわせる。
薄明の空色をした、闇龍にも少し似た龍の姿だった。

(例え、それが人目を忍んで行われるものであっても
それを拒むもの達が強く、決して祝福された道ではなくても。
信じて支えてくれる人は居るから
「彼女」はそれを為すべきだと思うし
それが……犠牲になった者達への、せめてもの償いになると信じます)

ティーが創り出した龍は、
アールキングの根を喰らい、美しい花を咲かせた。
それは、憎しみが浄化されて、無憂の華となったかのようであった。

「ティーさん……」
ネフェルティティは、その様子を見て、つぶやいた。
「ありがとう」

土方 伊織(ひじかた・いおり)も、
理子とセレスティアーナの代王と、ジークリンデの決断を支持し、
ネフェルティティたちを送り届けようとしていた。
「はわわ、本来なら、女王様の力を継ぐ人を決めるのは、
アイシャさんが決めるべきことだと思うのですけど、
現状お答えできない状況なのですし、
それでも後継が必要なら、
先代女王様のジークリンデさんや代王様のお二人の意見で決めるべきだと思うのです。
絶対に、脅迫されて決めちゃって良い事じゃないと思うのですよ」
「うむ、脅されて国を奪われるなぞ末代までの汚点になるであろう。
何より、封印の神子の一人として先代の女王の復活に関わった手前、
この様な形で決められるのは不本意」
パートナーのサティナ・ウインドリィ(さてぃな・ういんどりぃ)も、うなずく。
「だから、僕たちが、必ず無事に戴冠式をお守りするのです。
神子の波動で、少しはお手伝いができるといいのですけど」
「玉座の間は、もうすぐのようじゃし、
後顧の憂いなく、戴冠式を行ってもらえればと思うぞ」
「ありがとうございます。
皆さん。
今度もまた力を貸していただけること、とても心強いです」
ジークリンデは、過去の記憶を失ってはいるものの、
再び、契約者たちが助けてくれることを、深く感謝していた。

「うむ、私からも礼を言うぞ……うわっ!」
「セレスティアーナ!?」
突然、魔物が飛び出して、セレスティアーナを襲ったのを見て、
理子が悲鳴を上げる。

「散れ。根こそぎ砕く」
イーオン・アルカヌム(いーおん・あるかぬむ)が、
セレスティアーナの前に立ちふさがって、魔物を撃退した。
「イーオン!」
「俺が俺に誓ったのだ。キミは護る」
イーオンが、セレスティアーナの髪をくしゃりとなでる。
「だから、安心してくれ」
「イーオン……」
セレスティアーナは、魔物の攻撃をかばったことで、
イーオンが怪我をしているのを見て、
一瞬、涙目になっていたが、
すぐに、元気を取り戻した。
「ああ、絶対だぞ!
そのかわり、イーオン、おまえも絶対無事でいろ!
絶対だからな!」
「ああ、約束しよう」
イーオンは、セレスティアーナに微笑で返し、
再び、敵へと向き直った。

「玉座の間への道、必ず無事に送り届ける」
「イエス・マイロード」
セルウィー・フォルトゥム(せるうぃー・ふぉるとぅむ)が、
パートナーのイーオンにうなずく。
セレスティアーナとネフェルティティを必ず守り通す。
その気迫によって、魔物の残党は、多少なりとひるんだかに見えた。

「ネフェルティティ様は聖冠クイーンパルサーを戴く、
正当なシャンバラの後継者。
ここで、奪われたシャンバラの歴史を正しい流れに戻させて頂きます……!」
【西シャンバラ・ロイヤルガード】度会 鈴鹿(わたらい・すずか)も、
アールキングの根を斬り、
ネフェルティティたちを守って、玉座の間へと進む。
「グランツ教の祖と光条世界の手の者に、屈するわけにはいきません。
私は、守るためにあります。
戴冠式の成功まで、ともに参ります」
鈴鹿は、ロイヤルガードとしての役目を果たそうとしていた。

「裏から行くというに、そうそうたる顔ぶれよ。
それだけでも、我らの意気も高まるというものじゃ」
織部 イル(おりべ・いる)が、つぶやく。
理子とセレスティアーナの代王二人、
ジークリンデとネフェルティティ。
その身を守るという役目は、光栄だと、イルは考えた。

(しかし呼雪殿、エメネア殿すら気付かずに探しに行かれた
ネフェルティティ様を、よくぞお救いしようと思うて下さったの。
そこに気付くのは
いつも、シャンバラと民の事を想っておられる故なのか……)
アトラスの傷跡で、ネフェルティティの存在にいち早く気づき、
救出に向かったのは、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)と、
パートナーのヘル・ラージャ(へる・らーじゃ)である。
イルは、そんな友人に感嘆していた。

実際に、あの時、呼雪が救出に行ったことで、
アールキングの根から、ネフェルティティが守られたということがある。

「あなたの為に、シャンバラの為にこれだけの人が集まりました。
それに姉君も代王のお二人も。心強いですね」
「はい、とても、心強いです。
そのためにも、私は責務を果たしたいと思います」
呼雪が、ネフェルティティに真摯に告げると、
ネフェルティティも同様に返した。
「シャンバラの事、5000年前のように
あなたおひとりに背負わせるような事はしたくありません。
皆で支え合える国を目指しましょう」
「そうだよ、僕も、一応、ネフェルティティちゃんを奉じる神官なんだよ。
少しでも、戴冠式が無事に進められるよう、場を整えるつもりだよ」
呼雪の言葉に、ヘルも同意した。
「僕もそうだったけど、
今のネフェルティティちゃんには、
大切に思ってくれる人たちがいるんだ。
だから、大丈夫!」
ヘルが笑顔を浮かべると、
ネフェルティティはうなずいた。

「ええ、こうして、皆さんが、
力を尽くしてくださっているのです。
必ず、うまくいくと。
皆、笑顔になれると。そう、信じています」

「よーし、一気に畳み掛けるわよ!」
理子の掛け声とともに、
契約者たちは、玉座の間までの道を、一気に駆け抜けた。

すると、そこには、
エメネアを助けるために、戦う者たちの姿があった。