空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

リアクション


戴冠式 5

しかし。
騒ぎの隙をついて、
理子たちはアイシャを奪還していた。

折良くして、ラズィーヤから“機晶エネルギーダウンの件は心配ない”という連絡が
もたらされた時だった。

騎沙良 詩穂(きさら・しほ)が、
アイシャの魂に直接呼びかけるかのように訴える。
「アイシャちゃん、しっかり!
女王の力を、ネフェルティティちゃんに伝えて。
もう、これ以上、一人でがんばらなくていいんだよ」
パートナーのセルフィーナ・クロスフィールド(せるふぃーな・くろすふぃーるど)が、
救済の聖域で、アイシャの身体を癒す。

「傍に居てあげられなくて御免な……」
リア・レオニス(りあ・れおにす)も、
アイシャに、自分の想いが少しでも伝わるよう、
ヒールやレストアをかける。
「目を覚ましてくれ。戻ってこい、アイシャ!」
リアのパートナーのザイン・ミネラウバ(ざいん・みねらうば)も、
一緒にヒールをかけ続ける。
(女王の力が抜けた時に、
アイシャの命も尽きてしまうかもしれない。
それだけは避けなくては)

一方、アイシャの元に近づき、
その力を譲り受けようとするネフェルティティに、
橘 柚子(たちばな・ゆず)
木花 開耶(このはな・さくや)が語りかける。
「深空ちゃん、どんな時でも、
妹を守るのは、姉である私の役目やからね。
ずっとついてるから、安心してな」
「皆でピクニックに行こう。ドーナツやお菓子、いっぱい持ってきてね」
開耶は、封印の眠りにつく前の、
ネフェルティティと交わした言葉を覚えており、
今度こそ実現したいと考えていた。
「ありがとうございます。
とても、うれしいです」
ネフェルティティが、微笑を浮かべ、
柚子と開耶にうなずく。

(いざという時は、私が身代わりになる!
深空ちゃんは、必ず、生きて、幸せにならなあかんのや!)
(今度こそ、私の命に代えても、大切な妹を……!)
ネフェルティティを妹のように思っている、
柚子と開耶は、必ず、ネフェルティティを助けたいと願っていた。

ネフェルティティは、
横たわるアイシャの前にまっすぐに立ち、
ひざまずくと、目を閉じた。
ジークリンデが、ともに、ひざまずき、
ネフェルティティの手を取る。
「アイシャ・シュヴァーラ女王。
私に、そのお力をゆだねてください」
ネフェルティティとアイシャ、そしてジークリンデを、白い光が包み込む。

一瞬、目がくらむほどのはげしい光が、
玉座の間を包み込んだ。
戴冠式を警護していた契約者たちも、息をのんだ。

その時間は、一瞬のようでもあり、永遠のようでもあった。

光が晴れた時、
しっかりと立ち、玉座の前に立つ、ネフェルティティの姿があった。

玉座の間を取り囲んでいた、
アールキングの根が、ひるんだように後退する。

「私は、ネフェルティティ・シュヴァーラ!
シャンバラ女王です!」
その宣言で、ネフェルティティの戴冠式が成功したことを、
皆、はっきりと理解した。

「玉座の間を返していただきます!」
ネフェルティティの言葉は、
ただの言葉ではなくなっていた。
その宣言は、力を持ち、アールキングの根を退かせた。

アールキングの根が、ざわざわと不快な音を立てながら、
シャンバラ宮殿から引いていく。

『おのれ……。
だが、このままでは――』

アールキングが、良雄を捕まえようと、
根を伸ばすが。

「うわあああ!」
良雄は、逃げようとして、もんどりうって転び、
結果的に、ネフェルティティの近くへと転がって行った。

そして、アールキングと半ば融合していたエメネアも、
ネフェルティティが手を伸ばすと、
ゆっくりとはがれ落ちた。

「エメネアさん!」
「エメネアさん!」
坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)と、
笹野 朔夜(ささの・さくや)が、
エメネアの身体を受け止める。

一方、アイシャは。
「国家神の力を返還してもアイシャちゃんはまだ素晴らしい力が残っているよ……
貴女の笑顔は私を幸せにしてくれる」
詩穂が、アイシャの魂に向かって呼びかける。
「俺の魂も命も君のためにある。戻って来い、アイシャ!」
リアも、アイシャにすべてを捧げんと呼びかける。

「アイシャちゃん!」
「アイシャ!」
詩穂やリアの必死の呼びかけで、
アイシャは、一瞬だけ、目を開く。
「ありがとう、皆さん……」
それだけつぶやくと、アイシャは、再び、意識を失った。

「おかえり、おつかれさま、アイシャちゃん。
……がんばったね。
今は、ゆっくり、休んで」
詩穂が、穏やかに、アイシャに微笑んだ。

「おかえり、アイシャ。
よかった、帰って来てくれて。
本当に、よかった」
リアが、暖かな笑みを、アイシャに向けた。



シャンバラ王宮は、ネフェルティティの女王の力で、
急速に、アールキングが力を失い、根が逃げるように引いていく。

それと同時に、いつのまにか、アルティメットクイーンの姿も消えていた。
エレクトロンボルトを始め、グランツ教の部下たちの姿も無い。

「過ちを許しましょう。
過ちは、やがてあなた達に悔いを与えることになるのだから」

どこからか、アルティメットクイーンの声がこだました。
瞬間転移で、味方ごと全員、テレポートしたようだった。



「やったわね、ジークリンデ、ネフェルティティ!」
「私は絶対にこうなるって信じていたぞ!」
「ありがとう、リコ。
それに、皆さん」
理子やセレスティアーナ、ジークリンデ、そして契約者たちは、
手を取り合い、戴冠式の成功を喜ぶ、

「本当に、皆さんのおかげです。
どうもありがとうございます。
……ですが、これから、まだしなくてはならないことがたくさんあります。
これからも、力を貸していただけますか」
ネフェルティティが、一同を見回し、言った。

「もちろんです。
そのために、私にできることがあれば何でも言ってください」
「ありがとう、姉さん」
ジークリンデの言葉に、ネフェルティティは笑顔を浮かべる。
ジークリンデは、ネフェルティティの手を取り、言った。
「記憶は失われていますが、
私にはわかるんです。
かつて、皆さんが、私のことを、今回のように、助けてくれたこと。
そして、アイシャさんのことも、皆さんがずっと支えてくれていた……。
同じように、ネフェルティティ、
あなたのことも、皆さんが助けてくれる。
だから、安心してください」
「ジークリンデの言う通りよ!
あたしたちは、いつだって、みんなに助けられて、
お互い助け合ってやってきたわ!」
「うむ、私も、みんなのことを信じているぞ!」
理子とセレスティアーナも、同意した。

「ありがとう、皆さん」
ネフェルティティは、柔らかな笑みを浮かべた。

こうして、契約者たちに祝福され、
ネフェルティティは女王となったのだった。



「私が女王ですぅなのだー」

また、「幻の女王エメネアポムクルさん」が、
契約者たちの活躍によって生まれていたのが、
後に確認されたのだった。