空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

リアクション


エメネア救出

そのころ、理子たちと別行動になってしまっていた
御人 良雄(おひと・よしお)は。

「さあ、ララ、やるのだよ」
「ウィ、マドモアゼル」
リリ・スノーウォーカー(りり・すのーうぉーかー)が、
パートナーのララ・サーズデイ(らら・さーずでい)に命じて、
聖騎士槍グランツで、良雄の身体を突き刺そうとしていた。

「ぎゃあああああああ、や、やめるッス!」
「何を言うのだ、これは、エメネアを探すためなのだよ。
良雄が瀕死になることで、『パートナーロスト前駆反応』を起こさせ、
エメネアの居所を突きとめるのだよ」
「そのためには必要な犠牲を払わねばなるまい。
大人しくその身をささげたまえ」
「ぜ、絶対嫌ッスよ!!」
「あ、こら、待つのだよ!
エメネアの場所さえ突き止めれば、
『空京デパート株主限定全品5割引きの優待券』の力で、
目覚めるのに違いないのだ!」」
「待ちたまえ!」
「うわあああああああああああああああああ!!」

「た、助けてくださいッス!」
「あれ、どうしたんですか、良雄さん。
そんなことより、今はエメネアさんを助けることが先決です。
早く行きましょう!」
【エメネア・ゴアドーの荷物持ち】こと、笹野 朔夜(ささの・さくや)は、
良雄と一緒に宮殿の奥に向かい、
エメネアをアールキングから救出しようと考えていた。

「宮殿をアールキングの根が覆ってからそう時間は経っていないはず、
今ならまだ人の力で宮殿内に入り込んだ根を排除する事が出来るはずだ。
早ければ早い方がいい」
妖刀【時雨】を振るい、笹野 冬月(ささの・ふゆつき)が、
アールキングの根を斬り、道を作る。
「根が邪魔だな」

「どうしたんだよ、良雄。
浮かない顔しやがって。
これからてめえのパートナーを助けに行くんだろ?
女一人助けられなくてどうするんだ」
【C級四天王】吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、
舎弟を引き連れて、
エメネア救出に協力しようとしていた。
「てめえはオレの舎弟だ。
舎弟を助けるのがイケメンの仕事だろ?」
「そうだよ、良雄はパラ実の仲間だからね。
ほら、男ならシャキッとしなよ!」
上永吉 蓮子(かみながよし・れんこ)も、良雄を励ます。
「あ、ありがとうッス。
そしたら、まずは、あの二人から守ってくださいッス!」
良雄は、朔夜と竜司の陰に隠れて、
リリとララの追撃をまぬがれる。

「良雄さんが死んでしまったら、エメネアさんが危険です。
ここは、穏便にお願いできませんか」
「良雄をカツアゲしてもしかたないだろ。
やっつけるならアールキングにしようぜ。
オレも血煙爪でぶった切ってやるからよ」
「むう、しかたないのだ」
朔夜と竜司の説得に、リリがしぶしぶ了承する。
「た、助かったッス……」

そんな風に、一行が騒ぎつつも、
宮殿内を進んでいくと。

「あ、良雄くん!」
「なななななー!」
立川 るる(たちかわ・るる)と、
立川 ミケ(たちかわ・みけ)が現れた。
「るるさん! 来てくれたんスか!」
良雄が、顔を輝かせる。
「えーと、ちょっと待ってね」
しかし、るるはスマートフォンを取り出し、メールを読みはじめる。
夜露死苦荘のオーナーの指示により、
良雄にエメネアが女王になることのメリットを伝えるよう命じられているのだ。
るるは、棒読みでメールを読んだ。
「エメネアが女王になればパートナーの良雄も空京で暮らす事になるね」
「え、そうなんスか? 別に一緒に暮らさなくても……」
「るるも空大に通ってるから、そしたら会う機会も増えるかも」
「俺も空京で暮らすッス!」
「これで良雄も空大に通えるようになるし、るるはあと2年で卒業だけど……」
そこまで読んで、るるは動揺した。
「……2年!?」
「なななな、ななななななー」
「え、ちょっとまって、るるが入学したのがあの年だから、
空大は4年制のはずで、
単位の計算とか間違えてないよね?
だとしたらあと1年で卒業のはず……いやいやいや」
「どうしたんスか、るるさん?
でも、あと2年も一緒にいられるなら、うれしいッスよ!」
舞い上がった良雄は、挙動不審になったるるをいぶかしむも、
あまり気にしてないようだった。
「ななな、なななななー!」
ミケは、ブツブツ言っている、るるの横で、
子分のネコの身体にくくりつけて運ばせていたスマートフォンのメールを、
肉球で操作して表示させた。

『エメネアが女王になれば影武者も必要となりうる。
その適任は立川るる。
つまり、影武者のるると良雄も共に過ごす時間と距離は
これまでと比較にならないほどお主の都合の良いものとなるであろう byのぶのぶ』

「こ、これは、マジッスか!?」
「ななな、ななななー」
「えーとちょっと待って、じゃあ、るるの就活計画は……」
軽く混乱している、るるが、メールを見ることはなく、
そのせいで、良雄のテンションが上がった理由にも気づかれなかった。

「こうなったら、早くエメネアさんを助け出すッス!
こっちッスよ!」
俄然やる気を出した良雄が走り始める。
豪運により、なぜか道がわかって一行を誘導することができた。

こうして、一行は、ひとまず早く、
玉座の間へと辿り着いた。
「エメネアさん!
エメネアさん!
エメネアさーん!」
坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)が、
アールキングに取り込まれ、半ば融合しているエメネアを発見して叫ぶ。
「エメネアさん……!」
朔夜も、実力行使で、エメネアをアールキングの根から救い出そうとする。

「エメネアさん!
聞こえていらっしゃいますか?
今こそ、貴女が女王になるべきですわ!」
姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)が、
姉妹であるエメネアを説得しようと呼びかける。
「元女王陛下の妹君は過去の所業で信用が足りない問題があります。
そこで貴女です。
敵への不意打ちにもなりますし更に大活躍できてしまう寸法です。
父上は役立たずですしここで私達で一発逆転ですわ」
そんな風に説得する雪だったが。

【S級四天王】国頭 武尊(くにがみ・たける)も、
エメネアを女王に据えることで、
ネフェルティティとアルティメットクイーンの戦いが激化しても、
戴冠式が行えるようにしようとしていたのだ。
(エメネア達、十二星華は女王のスペア扱いのクローンみたいな存在だから、
一時的に女王の力を受け継がせる資格は有るだろ)
そして、その後に、真の女王を決めればいい。
瞑須暴瑠とか美衣弛馬鈴とか罵助人暴瑠で。
そう、武尊は考えていた。

「踊るぞ! てめーらァ!」
【C級四天王】猫井 又吉(ねこい・またきち)が、
怪獣化で口から火を吐き、
自分とパートナーの武尊の舎弟とともに、
アールキングを攻撃する。
「力を送ってやるから、目を覚ませ、エメネア!」
マレフィキウムで、アールキングの力を奪い、
又吉がエメネアに呼びかける。

そんな中、アールキングは、良雄に呼びかけていた。

『これから、この娘を我の中に取り込ませてもらう。
しかし、貴様にパートナーロストの心配はない。
安心するがいい』
「え、ほんとッスか?」
良雄は、「じゃあ、あげるッス」と言いかけて、るるの視線を感じ、
慌てて言い直す。
「エメネアさんはシャンバラの女王になってもらうッスよ!
返してもらうッス!」
『愚か者めが』

こうして、一行の激しい戦いが繰り広げられる。

「約束でござろう?
二人でプールに行くと。
そしてどの様な時でも助けに現れると」
鹿次郎が、必死で呼びかける。
「エメネアさん、あの水着姿、また見たいでござるよ!」

「俺は気づいたんです。
好きな人に笑ってもらえない事より、この世界から失う事の方が、もっと辛いんだって……。
エメネアさん、戻ってきてください!
エメネアさん!」
朔夜も、また、アールキングの根から、エメネアを救出しようとする。

「……う」
アールキングの根と一体化していたエメネアの顔が、一瞬、ぴくりと動く。
瞳は閉じられたままだが、
少しだけ、反応したように見えた。
「エメネアさん!」
「エメネアさん!」
鹿次郎と朔夜が、エメネアを救おうとして、同時に、アールキングの根に弾き飛ばされる。
しかし、2人とも、めげずに、アールキングに立ち向かう。

こうして、戦っていることが、アールキングの注意を逸らし、
ネフェルティティたちの進行を結果的に助けることになったのだった。