空京

校長室

選択の絆 第二回

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選択の絆 第二回

リアクション


アルティメットクイーン

一方、表向き、アルティメットクイーンの護衛についている契約者たちは。

(時間稼ぎのためにも、一緒に行動できるっていう、
このチャンスを有効活用させてもらおう)
匿名 某(とくな・なにがし)は、その心をうかがい知れぬアルティメットクイーンの表情を見て、
そう考えていた。
パートナーの結崎 綾耶(ゆうざき・あや)が、
眠りについたままのアイシャ・シュヴァーラ(あいしゃ・しゅう゛ぁーら)を気づかいつつ、
アルティメットクイーンに話しかける。
「せっかくですので一つ質問をしていいですか?」
「許しましょう」
アルティメットクイーンは、冷たい微笑を浮かべ答えた。
「アルティメットクイーン様は女王になったら
シャンバラをどのような国にしていくつもりですか?」
アルティメットクイーンの目が細められた。
「パラミタをあるべき道へと導く。
それがわたくしの役目です」
「それって、どういうことですか?」
「このような状況に甘んじている、あなた方には理解の及ばぬことかもしれませんが」
アルティメットクイーンが、傲然と言い放った。
「そもそも、パラミタ大陸に複数の国が存在している事自体が不自然なのです。
シャンバラ、エリュシオン、などと、細かく分割しているのは、異常なこと。
わたくしはパラミタが持つ本来の守護を取り戻しましょう」
「え、それって……」
「そして、わたくしは道を違えた世界を、元の理に戻す。
それは、あなた方が常としてきた理とは違い、不安に思うかもしれません。
しかし、正しいものというのは、時にそう見えてしまうものです」
そう答えて、アルティメットクイーンは、酷薄な笑みを浮かべた。
「下がれ。寛大なるアルティメットクイーン様のお慈悲にこれ以上すがるでない。
不敬であるぞ」
エレクトロンボルトが、綾耶を引き放した。
それ以上、アルティメットクイーンの言葉を聞き出すことはできなかったが、
事態は、シャンバラだけの問題ではないということは確かなようだった。

一方、アルクラント・ジェニアス(あるくらんと・じぇにあす)は、
エレクトロンボルトの様子を伺いつつ、
グランツ教の他の幹部のことを考えていた。
(トップが出てくるのなら
奴らの存在も気をつけねばなるまい。
カスパールメルキオール。現れるかもしれない)

かつて、幾度も戦った相手である、カスパールのことは、
とりわけ、アルクラントにとって、気がかりだった。
(あの日撃てなかった……撃たなかったこの弾は今もこの手にある)
今、この場に姿のない相手のことを、アルクラントは考える。
(だが奴に会った所で私は今更何を話そうって言うんだろうな。
ただ、私は奴の質問には答えたが……。
まだカスパールからは何も聞いていない気がする。
そもそも、クイーンに従う理由というのはなんだったのだろうか。
未来からこの時代に来た理由。この先、何がある?)

パートナーのシルフィア・レーン(しるふぃあ・れーん)も、
カスパールのことを考えていた。
(アル君の方は一勝一敗一分だ、なんて笑ってたけど。
私は言い負かされてばかりだったものなぁ。
今なら……なんとなく、だけど勝てる気がするかも)
そう思えることは、おそらくは、アルクラントの存在があるからだと思う。
(負けっぱなしも悔しいし、今度こそ勝ちたいな)

しかし、今現在、どうしているのか、
そのことは、わからないままだった。

そうしているうちに、
アールキングの根が、一行に襲い掛かってくる。
「これは……!?」
しかし、某はその異様さに気づく。

たしかに、アールキングの根は、襲い掛かってくる。
だが、本気で攻撃してくるのは、
シャンバラ側の契約者たちに対してだけであり、
アルティメットクイーンや、グランツ教の部下たちに対しては、
形式的な敵対の態度しかとっていないようだった。

一行は、アルティメットクイーンへの不信を、さらに深めたのだった。

【シャンバラ教導団少尉】の董 蓮華(ただす・れんげ)は、
名目上、理子たちに協力していることを知らせないよう、
アールキングの根と激しく戦う。
(ネフェルティティさんの戴冠式を成功させるには、
理子代王が万一見つかっても、知らんぷりするしかないわよね!)
そのため、あえて、グランツ教関係者たちの前方を遮るように、
派手に戦ってみせ、視界をふさぐ。
「アールキング伐採は軍の命令に反しない。遠慮なく伐採しまくってくれ」
スティンガー・ホーク(すてぃんがー・ほーく)は、
蓮華の、少尉としての部下と、信頼の空賊を率いて、
アールキングの根を掃討する。
近づいてくる魔物が、邪魔をしないよう、
スティンガー自身は、機関銃で対応を行う。

(やっぱり、
アルティメットクイーンはアールキングの根の影響は受けないんだよね?
だから、根を排除する事は、ネフェルティティ様の通り道を作る事でもあるんだ)
レキ・フォートアウフ(れき・ふぉーとあうふ)も、
サイドワインダーや、真空波での攻撃を駆使して、
アールキングの根を集中攻撃して撃破していく。
もちろん、表向きは、任務に忠実なふりを保ったままである。

レキのパートナーのミア・マハ(みあ・まは)は、
戦いの中、仲間の傷を命のうねりで回復していたが、
その対象には、
アルティメットクイーンと同行する者だけではなく、
他の契約者たちも含まれている。
(同じく根と戦ってるんじゃ、
任務についてる者と侵入者の区別などつかんよ)
にやりと笑って、ミアが、通路の先を潜り抜けていく契約者の様子を見る。

「なんて手ごわいんだ、アールキング!」
「ここは、派手に戦って、じっくりと道を切り開かねば、安全には進めんのう!」
レキとミアが、わざとらしく演技して、
味方らしき人物にはそれとなくわかるようにする。

そのまま、アルティメットクイーンたちは、
内心で敵対する契約者たちを同行させたまま、
ゆっくりと、玉座の間へと近づいていった。