空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

リアクション公開中!

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
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リアクション


繋げる想い 2


 アルティメットクイーンは現在、ラズィーヤの兄であるフィローズ・ヴァイシャリーの手によって全面的なバックアップが成され、保護観察下に置かれている。
 しかし、いくらパラミタの味方をしてくれるようになったとは言え、これまでの彼女の過去がなくなるわけではなかった。
 いまだアルティメットクイーンという存在を信用し切れていない者達もいるし、中には彼女の暗殺まで考える者も少なくない始末だ。
 その為、常に誰かが一緒にいて、彼女を監視しておかなければならなくなった。
 その一人として名乗りをあげたのが、裏椿 理王(うらつばき・りおう)だった。
 彼は自分がクイーンを守らなくてはならないと感じていた。彼女にはまだ敵が多い。それを守るためには、彼女にとってもまだ信頼という面においてマシな人物であることが大切だと思ったのだ。もちろん、彼がクイーンの傍にいることを疑問視する者も少なくなかった。なぜなら彼は、アルティメットクイーンがまだ敵として存在していた時にも既に、彼女の味方として動いていたからだ。
 しかし、だからこそ――。
 理王はクイーンのために傍にいようと決めたのである。
 それを許してくれたのはフィローズだ。彼には、感謝しなくてはならない。
 アルティメットクイーンは他人を信じきれないでいる。それは自分の味方であろうと敵であろうと構わずだ。彼女はそもそも、世界そのものを信用し切れていなかった。その為、自分の事ですら、危ういところにいることに気づいていない。
 その事に誰よりも気づいていたのは、理王だった。
 彼はアルティメットクイーンが少しでも自分と向き合う時間が必要だと思った。だから、彼女の傍を離れなかったのだ。誰かが傍にいること。それだけで、人は少しでも拠り所を見つけることが出来る。たとえそれがその人自身のものだろうと、自分自身のものだろうと。理王はそうした時間を大切にすべきだと考えていた。
「――なぜですか?」
 アルティメットクイーンは光条世界を目の前にして理王に尋ねた。
 これから戦いは始まる。その為に、アルティメットクイーンは立っている。パラミタの味方として、契約者達の味方として。だがそれは、彼女が本当にすべきことかどうか、まだ分からないでいた。フィローズの提案だったから? 過去の自分を精算したいから? それとも……。
「…………」
 黙りこむアルティメットクイーン。
 遅れて、理王は答えた。
「別にオレは、どっちだってよかったのさ」
「どちらでも?」
「ああ」
 理王は頷いた。
「大事なのは、オレがあんたを信じたいってことさ……。オレが大好きであるあんたの選ぶ道なら、例えどっちだって一緒に行く。オレは最初から、そのつもりさ」
 クイーンは驚いた顔をした。信じられないという表情だった。
 しかし、理王の顔は変わらない。彼はずっとそのつもりで、その思いを貫いてきた。
「でもまあ、きっとあんたがパラミタを守ってくれるってことは、信じてたけどね」
 そう言って笑う理王の笑顔は、クイーンには眩しく見えた。
 ああ、この人はきっと、自分とは違うものを見ているのだ。それは他の契約者達にも感じたものと同じだった。けれど、もっとより近い、より隣り合わせにあるもののようにクイーンには思えた。
 理王は傍にいる。いつでも。いつだって。
「…………」
 クイーンは表情を変えなかった。が、その手に携えた剣を構えた。
「そうですね……。たまには、あなた方と共に戦うのも悪くないでしょうね」
 その目にはもう、迷いはない。今は自分の見据える道をひたすらに進むだけだった。
 そしてそんなクイーンの目を見た理王は、嬉しそうに笑う。
 彼の後ろでその様子を見ていた桜塚 屍鬼乃(さくらづか・しきの)が、やれやれといったように肩をすくめた。
「まったく、理王にしてみればシリアスなもんだと思ってたけど、結局はそういうことなんだね」
「どういうことだよ?」
 むすっとして言い返す理王。
 屍鬼乃はニヤニヤと笑いながら言った。
「要するに、お姫さまだっこがしたいってことさ」
「ばっ……! べ、別にそんなんじゃねえっての! からかうな!」
 とは言いながらも、理王も心の中でそんな妄想がなかったわけじゃない。
 珍しく顔を赤くしている彼に、屍鬼乃は考えていた。
(正子さんに教えるべきですかねぇ……)
 理王にお姫さま抱っこされた馬場 正子(ばんば・しょうこ)の事を思うと、なんだか複雑な屍鬼乃だった。

◆   ◆   ◆


「おーい、ダイソウトウー!!」
 創造主のもとへ向かおうとするダイソウ トウ(だいそう・とう)の後ろから声をかけたのは、秘密結社ダークサイズの一員である五月葉 終夏(さつきば・おりが)だった。
 彼女はパートナーのニコラ・フラメル(にこら・ふらめる)と共にダイソウトウのもとに飛んできて、キキッと止まる。
 箒から飛び降りた彼女を、ダイソウトウは怪訝な目で見つめた。
「終夏……フラメル……。二人とも、いったい何の用だ? ここは危険だと言っておいたはずだが……」
「水くさいこと言わないでよ! 私だってダークサイズの一員だよ!」
 終夏はぷうっと膨れた顔で言った。
「リーダーのダイソウトウが行くって言うんなら、私も行くしかないでしょ! ね? フラメル」
「うむ、そうだな。私達もダークサイズと共に歩んできた者。ダイソウトウだけを行かせるわけにはいかんというわけだ」
 二人は真摯な目でダイソウトウを見つめる。
 これまでダークサイズで二人と一緒に連れ立ってきたダイソウトウには、それが決してお遊びでないことは分かっていた。二人は本気で、そして真剣にダイソウトウについて行こうとしているのだ。その事が、今の彼にはとても眩しく映った。
「……すまない、二人とも。恩に着る」
「もう、やめてよ、ダイソウトウ! 言ったでしょ? 私達はダークサイズの一員なんだから!」
「そういうことだ。仲間を……いや、われらが秘密結社のリーダーを助けるのに、理由などいらないさ」
 二人はそう言って笑う。終夏はダイソウトウの目を見つめ、これまでの事を思い出していた。
「不思議とね……ダークサイズにいると、何でも出来るって気がするんだ。この世の中には怖い物なんて何にもなくて、自分達がやりたいと思えば、何だって出来る。そんな気にね……。それってきっと、とても素晴らしいことなんだと思うよ、ダイソウトウ」
「私も同じだ。ダイソウトウ……君がいたから、私達は信念の強さを知った。終夏ではないが……何でも出来る……その気持ちは大事ななんだと思うぞ」
「何でも出来る……か」
 ダイソウトウは呟き、光条世界の光の空を見上げた。
 世界はこんなにも眩しく、遠い。けど、手を伸ばせばすぐ近くにある。大切なものも。かけがえのない者も。
 そんな世界で生きていることが、ダイソウトウにとっては奇跡で、終夏や、フラメルとの出会いも、奇跡に近いものだった。
 けど、そんな奇跡も、だからこそ大切にしたい。生きていれば何でも出来ると、信じたい。
 ダイソウトウはその事を、終夏達に教えられた気がした。
「……頼んでもよいか? 我らがダークサイズの仲間よ」
 ダイソウトウは尋ねる。終夏達は同時に頷いた。
「うん!」
「もちろんだとも!」
 そうして、戦闘態勢に移る二人。
 ダイソウトウが真っ先に駆け出し、光り輝く人型の敵へと突入する。
 その後を追って、二人もそれぞれの武器を手に駆け出した。
「よーし! それじゃ、いつも通り行くよ! フラメル!」
「うむ。思う存分暴れようではないか!」
 二人は戦場を駆け抜けた。
 終夏が放つグランドストライクの大岩が敵を吹き飛ばし、フラメルがアルテミスの弓で敵の中心を射貫く。傷ついた仲間には救済の聖域による回復術がかけられ、癒やしの光が仲間達を包みこんだ。
 二人が敵の気を引きつけているうちに、ダイソウトウの剣が相手を斬り裂く。
 人型が消滅したのを見て、彼は剣を鞘に戻した。
「まだ先は長い。決して、ひるむでないぞ!」
 ダイソウトウの声が響き渡る。それは終夏とフラメルに勇気を与え、活力を与えてくれるものだった。
 まだまだ、世界は長い。どこまでも続いていく。新しい世界がきっとやって来る。
(それって……きっと明日が来るって事と、同じなんだ……)
 終夏は戦いながらそう思った。
 今日が終わっても、新しい明日がまたやって来る。
 その時はまた、笑顔で迎えられるように頑張ろう。
 生きているっていうのはきっと、そういうことなんだから。
「終夏! フラメル! 我に続け!」
「はい!」
 二人はダイソウトウの後に続いていく。
 創造主のもとへと急いでいった。

◆   ◆   ◆


 佐々木 弥十郎(ささき・やじゅうろう)佐々木 八雲(ささき・やくも)の二人は、光り輝く人型と戦っていた。
 その内の一体、八雲の前に現れたのは、八雲そっくりの姿をした人型だ。彼は自分と瓜二つのそれを見て、不思議な気持ちに駆られた。まるで鏡を見ているようでもあって、そうでないとも言える。赤の他人を見ているのとは、確かに違うのだが。まったくもって、おかしな感慨だった。
「……いざ、自分の顔をまじまじと見るというのは、照れるものだな」
 八雲は呟いた。
 もちろん、それは人型を見てのことである。人型が、自分の鏡映しでないことはよく分かっていた。
 が、それでも、やはり自分のドッペルゲンガーのようなもの。正面から向かい合うのは、いい気分ではなかった。
(さて、どう出るかね?)
 八雲は考える。相手が自分であれば、同じような行動を取るはずだ。
 それは契約者でありながら八雲の弟に当たる弥十郎も同じ意見だった。
「兄さん、相手が同じだってことは、兄さん同士で戦うと膠着状態になるかもしれない。ここはまず、他の人型を攻撃するのが先決だと思うけど……」
「ああ、そうだな。お前の言う通りだ」
 八雲は弟の言うことに素直に従って、ひとまずは自分の人型から逃げることにした。
 無論、相手も追ってはくるが、そこは他の仲間達が引きつけてくれる。戦いから逃れた八雲達は、その後まず、他の人型の相手をすることに努めた。
 戦いの最中、八雲は創造主の事について考えていた。
 神なのか、神でないのか。いや、そもそもこの世界で神は、いかなる試練を与えようというのか。
 八雲には、創造主が初めて意地になっているように思えた。だからこその、人型達なのだ。
 新しい世界もいずれは滅びるかもしれない。けれど、そこで精一杯生きるのも悪くはないはずだ。
 弥十郎は言っていた。兄に、戦いの前の茫漠の最中。

『精一杯あがかせてよ。それも生きる者の権利だからさぁ……』

 その言葉が八雲の心に響く。
 そう。あがいて、あがいて、あがき続ける。
 そうして光を取りもどし、出会ったのがこの世界であり、弥十郎だったのだ。
 八雲は戦い続けるつもりだった。弥十郎を守るため、この世界で生きるため。
「兄さん! そろそろっ……!」
「ああ!」
 弥十郎に呼びかけられて、八雲は振り返った。
 そこには八雲と同じ姿形をした人型がいた。光り輝くその目と口は不気味に笑い、八雲達を嘲笑っている。
(笑いたければ笑え……! 僕はここにいる……! お前達の目の前に……!)
 弥十郎と左右から挟み撃ちにし、人型へと迫った。
 その動きは八雲そっくりで、素早い身のこなしで彼を狙ってくる。
 が、弥十郎がそこに銃弾を叩きこんだ。ひるみ、動く。いや、動きが止まる。
「はあああぁぁぁぁ!!」
 八雲はそこに渾身の一撃を叩きこんだ。
 そうして、人型は悲鳴ともつかない声を発して、消滅していく。
 残された八雲と弥十郎は、互いに顔を見合わせて微笑み合った。
(世界が滅んでも……また光を取りもどすよ、弥十郎……)
 八雲のその声が届いたかは分からない。
 だが確かにそのとき弥十郎は、兄に向けて笑みを見せたのだった。