空京

校長室

【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆

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【蒼空のフロンティア最終回】創空の絆
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リアクション


ラズィーヤの袂にて 1


 ラズィーヤ・ヴァイシャリー(らずぃーや・う゛ぁいしゃりー)を取りもどすべく、契約者達は彼女のもとへ急いだ。
 が、その道を阻むのは、創造主から生まれ落ちた光の怪物達である。
 その為、怪物達と戦い、ラズィーヤへの道を切り開こうとする者が必要となる。その役目を買ってでたのが、関谷 未憂(せきや・みゆう)だった。
「ここは私達に任せて! みんな、早く先に行って!」
 と、叫びながら、未憂が魔法による氷の壁を作って、仲間達を誘導する。
 光の人型が放つエネルギー波が壁とぶつかり、激しい閃光が轟いた。
「きゃああぁぁっ!!」
「未憂っ、大丈夫!? あたしもいま行くよ!」
 そう言って、未憂のパートナーのリン・リーファ(りん・りーふぁ)が駆けつける。
 彼女は未憂達の力を魔力で底上げし、防御陣を作っている魔術に加勢した。すると、氷の壁は少しずつ強度を増したようである。人型の放つ攻撃を何とか受け止め、仲間達が通る道を作った。
「ありがとう、リン」
 礼を言う未憂。
「へへ、どうってことないよ」
 リンは笑顔でそれに答えた。
「水仙のあの子や、静香ちゃんもラズィーヤさんとこ行くらしいもんね。ここで止まっちゃいられないよ」
 そのリンの言葉に、未憂は頷いた。
「ええ、そうね……。絶望したって、何にも始まらない。やるべき事があるなら、最後まであがき続けるのよ!」
「そうだー! その意気だー! さすが未憂!」
 気合いを入れる未憂を、やんややんやと持ちあげるリン。
 二人の思いは同じだった。一人じゃなければ、きっとどうにか出来るはずだ。そう信じている。
 その時二人の援護に入り、バトルハイヒールを履いた足で人型を蹴り飛ばしたのは、桜月 舞香(さくらづき・まいか)だった。彼女は桜月 綾乃(さくらづき・あやの)と一緒に、未憂達と同じくラズィーヤのもとへ向かう者達の援護に入る。ファイアストームの炎が辺りを包み、舞香の放つ蹴りの技が近づく人型達を一掃した。
「まったく、ラズィーヤさん……。学校関係者が敵に操られて不祥事なんて、百合園の恥ですよ!」
 舞香が憤慨しながら言う。綾乃はまあまあとそれをなだめた。
「まいちゃん、ほら、たまにはそういうこともあるから……」
「まあ、そりゃあ、そうだけどね……」
 はぁっとため息をつく舞香。けど、その目はラズィーヤへと続く道から逸らされてはいなかった。
「さっさと連れ戻さないとね。そして、帰ったらちゃんと責任を取ってもらう! うん、それがいいわ!」
 彼女なりの気合いの入れ方というか、気持ちの作り方なのだろう。
 自分で頷いて納得する舞香に、綾乃はあははと困ったような笑みになる。
 けれど、彼女もまた、舞香と同じようにラズィーヤには帰ってきてもらいたいと思っていた。
「まいちゃんも、学校のみんなも、ラズィーヤさんも……私にはとても大切な存在ですから」
「そういうことね。さ、未憂もリンも、ここが正念場よ! 頑張りましょう!」
「ええ、もちろん。言われなくても」
「総長さんやぜすたんを悲しませたくないもんねー! あたしも頑張るー!」
 未憂とリンは防御網を生み、舞香と綾乃が前に出て戦闘へ打って出る。
 彼女達が作った道を、ラズィーヤのもとへ向かう仲間達が通っていった。

                        ◆   ◆   ◆

「ラズィーヤちゃんを助けるの! 私だってみんなと一緒に頑張るの!」
 そう言って、ラズィーヤを守ろうとする光の人型達と戦っていたのは、エセル・ヘイリー(えせる・へいりー)という少女だった。
 さらにパートナーのレナン・アロワード(れなん・あろわーど)が、彼女の護衛に動く。
 二人はエリザベート・ワルプルギス(えりざべーと・わるぷるぎす)の指揮に従い、ラズィーヤの説得に動く仲間達の援護に回っていた。
(ラズィーヤちゃんを取りもどすの……! 絶対……絶対に……!)
 エセルは魔法を使って戦いながら、どうにかラズィーヤの前までたどり着こうとしていた。
 彼女にとって、ラズィーヤは大切な友だ。そして、無事に帰ってきて欲しい一人である。
 それはラズィーヤの事を思う静香の為にも、そして仲間達のためにも。
「ラズィーヤちゃんだって、こんな事、望んでないと思うの! きっと、帰ってきたいはずなの!」
「そうだな、エセル……。けど、そいつはちょいと一筋縄じゃいかなさそうだぜ?」
 レナンはラズィーヤを守ろうと動く人型達を眺めながら言った。
「あいつらはラズィーヤを守ろうとしてやがる。どうにか、こっちに引きつけねえと……」
「任せて、レナンちゃん! それは私の役目なの!」
 そう言うとエセルは、人型の前に飛びこみ、派手に暴れまわった。
 雷術や氷術の光が辺りを包み、光の世界に稲光を起こす。それを見た人型達は、一気にエセルへと突っ込んできた。
「わわわわっ!?」
「どいてろ、エセル!」
 飛びこんだレナンが、その攻撃を受け止める。
「ぐおっ……!?」
「レナンちゃんっ!?」
 吹き飛んだレナンを追って、エセルが彼のもとに向かった。
「だ、大丈夫なのっ……!?」
「ああ、なんとかな……」
 多少の傷は負ったが、動けないほどではない。
 レナンは身体をほぐしながら立ち上がった。
 と、それをエセルは心配そうな目で見ている。レナンはそんな彼女を見て微笑んだ。
「だーいじょうぶだって、エセル。オレはこの通り、ピンピンしてるさ」
「ラズィーヤちゃんだけじゃなく……この上、レナンちゃんまでいなくなったら嫌なの……。そんなの、絶対に耐えられないの……」
 涙ぐむエセル。その肩を、レナンはぐっと引き寄せて抱いた。
「大丈夫だ。オレは絶対にいなくならない」
「ほんとなの?」
「ああ。それより……ラズィーヤのほうが心配だ……」
 二人は頭上を見上げる。
 人型に守られるラズィーヤは創造主のしもべとなったかのように、契約者達に攻撃を放っている。
 そんな彼女を見ていると、エセル達の胸は傷んだ。
「生きて、出会って、色んな事をして経験して……そんなみんなの物語が、こんなところで終わっちゃうのは嫌なの」
「ああ……。けど、オレ達は一緒に戦う仲間だ。無事に、ラズィーヤだって取りもどしてみせるさ」
 レナンは笑う。その目に、引き込まれるような強い輝きを感じて、エセルは勇気が湧いてきた。
「うん!」
 頷いたエセルは、再び戦いの中に戻ってゆく。
(そう、絶対に取りもどすんだ……)
 レナンは胸の中で固く誓い、仲間達のもとへ向かっていった。

                        ◆   ◆   ◆

「さあ、マリザ、早く! いまのうちに急ぐんだ!」
 瓜生 コウ(うりゅう・こう)マリザ・システルース(まりざ・しすてるーす)に叫ぶ。
 マリザは素早く動き出し、コウの前を通り抜けていった。
「ありがとう、コウ! 恩に着ます!」
 そう言って、マリザはコウの前から遠ざかる。
 彼女が目指すはラズィーヤのもとで、コウはその為の道を切り開いたのだった。
 そして残されるは、彼女一人。
 道を切り開く為に力を貸してくれた傭兵部隊の面々は、マリザの後についてラズィーヤのもとに向かったし、コウはその場で、他の光の人型を相手にせねばならなくなった。
 そのコウが見たのは、一体の人型である。
「…………」
 それは溢れる光を抑えつけるかのように、淡く光っている。
 そして、その姿形は、コウの見知った者のそれであった。
「ねるほどね…………マリザってわけか」
 彼女は自嘲気味に笑みを浮かべた。
 それは他ならぬ、マリザ・システルースの人型に間違いなかったのである。
 マリザの姿をそっくりそのままに写し取った人型は、マリザと同じ動きで剣を向けた。
 狙いはコウ。無論、その切っ先は彼女を貫くつもりであった。
「やれやれ……マリザとやりあうのは初めてだったっけな……」
 コウはそう言って、ライフルの銃口を人型に向けた。
(このプレッシャー……さすがはヴァイシャリーの騎士ってわけか……)
 初めて相対するパートナーの威圧感に、コウは冷や汗を感じ得なかった。
 なぜなら、相手はシャンバラ古王国時代からの生粋の騎士である。普段はパートナーとして一緒にいるだけの存在だが、その気迫を目の前にすると、さすがのコウも気圧されてしまう。
 だがこちらも、魔法使いとして鍛錬を積んできた身。
 そう簡単にはやられるつもりはなかった。
「いくぜ、マリザ!!」
 コウは叫び、マリザの人型と戦い合った。
 向こうが剣を振るえば、それを避けてコウが魔法を放つ。魔術はコウの身体を加速させ、銃口から放つ弾丸にもパワーを与えた。
 が、向こうも騎士の人型。すさまじいスピードで、弾丸を真っ二つに叩き斬った。
(やりやがるな……)
 コウは距離を離しながら、銃弾をさらに畳みかけて浴びせる。
 だが、マリザの人型のほうが一枚上手だ。スピードに乗った相手は、弾丸を叩き斬り、さらにそこから跳躍して、コウの後ろに回り込んだ。万事休す。あとは剣の一振りで、コウは終わりを迎える。
 ――かに見えた。
「……かかったな!」
 コウは相手を誘っていたのだ。
 その懐から飛び出てきたのは、本物のマリザにすら教えていなかった隠し銃。
 銃口はマリザの人型を捉え、彼女は不敵に笑った。
「コイツが、オレの『奥の手』だ!」
 そう言って放った弾丸は、マリザの人型を撃ち抜いて、その姿を消滅させた。
 消え去る光の朧。残されたコウはようやく一息ついて、隠し銃を懐に戻した。
「はぁ……やれやれ……」
 パートナーと戦うのも楽ではない。そう痛感するコウである。
 しかし、ともかく決着はついたのだ。コウは人型のマリザではなく、本物のマリザが向かっていった先に目を凝らした。
 そして、呟いた。
「…………頼んだぜ……」
 その声は、共に未来を歩もうとするパートナーへ向けたものだった。

                        ◆   ◆   ◆

「紡がれたみんなとの絆を終わらせない。私はこの世界に来てよかったって、そう思っている。
 それを……この思いを……! ラズィーヤさん、あなたに伝えるわ!」
 桜庭 愛(さくらば・まな)はそう言って、ラズィーヤへと近づこうと人型を排除してゆく。
 その技は彼女お得意のプロレス技だ。破壊のサブミッションをかけて、人型は次々と消滅していった。
「愛!」
 彼女を追ってきた西澤 アカネ(にしざわ・あかね)が追いついた。
 アカネは愛にとって、愛すべき人であると同時にパートナーだ。
 彼女は銃撃で愛を援護し、それを受け、愛はさらなる大技を繰り出した。
「食らえっ! これが……私の必殺『ロメロスペシャル』だーっ!」
 人型を羽交い締めにした愛は、そこからさらに回転。膝を蹴りあげ、腕をとって仰向けに担ぎあげてから、相手を開脚させた。一見すればマヌケにも見えるこの技だが、実はとんでもない威力を秘めている。
 人型は幽鬼のような絶叫をあげ、そして消滅した。
「いきましょう、愛。これは私たちにとってまだ通過点。こんな場所で立ち止まってなんかいられないわ」
 アカネが言った。愛も、それに力強く頷いた。
「うん、もちろん」
「新しい世界に今を運ぶ……。その為に、行こう!」
 人型と戦い、突き進む。二人は連携し合い、敵を叩き潰していった。