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【第五話】森の中の防衛戦

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【第五話】森の中の防衛戦

リアクション

 同時刻 フラフナグズ コクピット
 
「クソッ! やっぱし弾道が曲がっちまう!」
 一射目を終え、着弾状況をカメラで確認した直後。
 昌毅は操縦桿を握ったまま毒づいた。
 
 着弾地点は“シュピンネ”より僅かに横。
 誤差にすればほんの数メートルといったところだろう。
 外因の影響をもろに受ける荷電粒子砲ながら、オールマニュアルでこれだけ近くに当てたのだ。
 十分に上出来と言える狙撃だろう。
 
 だが、“シュピンネ”が無傷である以上、昌毅は喜んでもいられなかった。
 すぐに次弾のチャージを開始する昌毅。
 しかし、チャージ率は思うように上がらない。
 
「……ッ! いったいどうしたってんだ!」
 声を上げる昌毅に向け、機体状況の確認に努めていたマイアが告げる。
 
「今日、ずっとフラフナグズに無理させてきたからです……」
 その一言で昌毅は理解した。
 
 迅竜に乗艦してきた機体とは違い、フラフナグズは自力で海京からここまで駆けつけた。
 しかも、フルスピードでだ。
 更にその上、ずっと動き続けていたのだ。
 
 戦場に到着し、敵と遭遇するまでエネルギーを温存できていた艦載機とは違う。
 既にフラフナグズはエネルギーを使っていたのだ。
 そうした状態で大量のエネルギーを消費する荷電粒子砲を放った。
 であれば、連続発射が難しい状況となるのも、まったくあり得ないというわけではない。
 
「マイア、荷電粒子砲の稼働率を上げてくれ」
 理解した上で、昌毅はそう告げる。
「で、でも……そんなことしたら……」
「コンデンサーの一つや二つバカになっても構わねぇ。今、ここで奴等を逃がすことの方が被害としちゃ大きい」

 言い切る昌毅。
 もう何も言わず、マイアは稼働率を上げる。
 程なくしてチャージ率は急上昇。
 再発射可能となった荷電粒子砲のトリガーに昌毅は指をかける。
 
「次こそ当てる……吹っ飛びな!」

 トリガーを引く昌毅。
 放たれた凄まじいエネルギーの奔流は、カメラの向こうで漆黒の二機へと肉迫する。
 そして、着弾の威力が凄まじい量の土砂と土埃を巻き上げた。
 
 土砂が落ち、土埃が晴れた後。
 着弾地点にはイコンの一機として見えない。
 
「やった……のか……?」
 いまだ半信半疑の様子ながらも、昌毅はひとまず息を吐く。
 同時にモニターに警告メッセージが表示される。
 
 どうやら荷電粒子砲のコンデンサーがいくつかオーバーヒートしたらしい。
 きっと、外から見れば煙を吹いていることだろう。

 その様子を想像しながら、昌毅はもう一度息を吐いてコクピットのシートに体重を預けたのだった。