リアクション
○ ○ ○ 「私はここに残り退路の確保と、情報の送受信に務めます」 第二突入班突入口で、揃った仲間達にロザリンド・セリナ(ろざりんど・せりな)はそう言った。 「うーし、退路確保というか、格納庫にある皆の乗り物は守っておくから」 テレサ・エーメンス(てれさ・えーめんす)は、そう言いながら皆の乗り物を預かり、適切な場所へと並べていく。 「そうですね、私もここに残ります。皆さんお気をつけて……かならず隊長達を助け出して要塞を止めてください」 イリス・クェイン(いりす・くぇいん)は、突入口に散らばっている瓦礫を持ち上げて運び始める。 「皆さんが帰ってきたときのためにここで待っています。もし、危険になったらここに戻ってきてくださいね」 そして、努めて柔らかい表情を見せる。 「気を付けてね」 クラウン・フェイス(くらうん・ふぇいす)も、皆が安心して作戦を頑張れるように、ここで待っていようと思いながら、イリスと共に整備を担っていく。 「ありがとう。ここは任せる。皆は何処に向う?」 共に突入した仲間達にそう問いかけたのは鬼院 尋人(きいん・ひろと)だ。 「第一突入班の方が制御室に向かう方針でした。成功を信じていますが……最悪の事態の際はブライドオブドラグーンだけは確保しなければ」 度会 鈴鹿(わたらい・すずか)は、機関室を目指そうとする。 「ボ、ボクも動力炉に向うよ……」 皆川 陽(みなかわ・よう)の声は少し震えていた。 「焦る気持ちはあるけれど、落ち着かなきゃ……。とにかく進路を変えないとマズいのよね。私は操縦室への道を切り開くわ」 切り開く方法と操縦室までのルートを志方 綾乃(しかた・あやの)は、考えていく。 「オレは優子のところにいくぜェ。優子はイケメンのオレが助けに来るのを待ちわびているはずだ」 吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)は、捕らえられたという神楽崎 優子(かぐらざき・ゆうこ)、そして共に突入の決意をした仲間達を案じた。 「てめぇらも、捕まった奴らも、オレと優子が選んだ精鋭だ。作戦は成功するに決まってる。全員生きて帰るぞ」 そう言い切る。 それぞれが出来ることを行えば、必ず成功するはずだ。 従者の種モミマン、キノコマンを連れて、彼が向かう先はエネルギー室だ。 「迷う暇はない」 そう声を発したヴァル・ゴライオン(う゛ぁる・ごらいおん)は、既に機関室に向かい走り始めていた。 既に事が起きた時点で、首謀者の目的は達せられ、こちらの行動はどう足掻いても想定範囲内だろう。 想定されていようと、それ以上の速度で罠を食い破る。 「正しい選択なんて無い。選んだ後で、それを最善のものにするだけだ」 走りながら、ヴァルは声を上げる。 「強化光翼で突っ切ります」 キリカ・キリルク(きりか・きりるく)は、リフトの前でヴァルを抱え、急降下。 「誰一人失敗は許されない奇跡のような連携だが、俺たちならば出来る!」 「ああ、俺も成功の為に自分が出来る最善の行動をさせてもらう」 パワードスーツを纏った三船 敬一(みふね・けいいち)もパートナーの白河 淋(しらかわ・りん)と共に、リフトの方へと急ぐ。 「わかった。オレは制御室に向かう。足止めされている皆も、すぐに来るはずだ。……行ってくる」 彼らも通ると思われるリフトから通路までの道を、作っておくこと。 それが自分の役目だと、尋人は判断した。残るメンバーと頷き合った後、走り始める。 「みんな行ってらしゃーい!」 メリッサ・マルシアーノ(めりっさ・まるしあーの)は、手をぶんぶん振って皆を見送った。 無事に帰ってくることを願いながら。 ○ ○ ○ 「しっかりなさい、アレナ!」 ユニコルノ・ディセッテ(ゆにこるの・でぃせって)は、早川 呼雪(はやかわ・こゆき)が持つ携帯電話に向かい、叱咤していた。 電話の先の相手は、呼雪のパートナータリア・シュゼット(たりあ・しゅぜっと)。 タリアはアレナの傍にいる。アレナに呼雪やユニコルノの声を聞かせているはずだ。 「……今だけは私の言葉を信じて下さい。今、貴女に出来る一番の事は、信じる事です」 切々と、ユニコルノは泣いているアレナの顔を思い浮かべながら、続けていく。 「離れていても、想いは力になるから……貴女は貴女を大切に思う方々にとって、帰る場所。優子様も皆様も無事に戻ると、信じて下さい」 『何もまともに考えられない状態みたいだけれど、大丈夫。想いは伝わるわ』 タリアから、そんな言葉が返ってくる。 『雲行きが怪しくなってきたけれど……そちらも、気を付けて。彼女達と一緒に、帰りを待っているわ』 「頼んだ」 そう言って、呼雪は携帯電話をポケットに入れた。 携帯電話はハンズフリー、通話状態のままにしておく。 こちらにはその余裕はないが、必要に応じて、タリアが録音をしてくれることになっている。 「なんだこの壁は!」 高機動型シパーヒーの中で目を覚ました変熊 仮面(へんくま・かめん)は、一人寂しく……いや、にゃんくま 仮面(にゃんくま・かめん)と共に、受信した情報と状況を確認する。 突入班のメンバーは、厚い壁に阻まれて先には進めないようだった。 「くそ! この怪我じゃ皆の足をひっぱる……」 変熊もにゃんくまも要塞への突撃の衝撃で、負傷をしていた。 イコンを下りて、突入班に加わったとしても役に立てなそうだった。 だが、この場にはイコンを移動させるほどのスペースがないため、イコンに乗ったまま探索を行うことは無理だった。 「そうだ、手柄を立てた人を救出すれば、俺様の手柄になるじゃん!」 思いついてからの行動は早かった。 「剣の花嫁君達が心配だ。鉄板は俺様が何とかする。みんな早く先に行ってくれ!」 そう声を上げると、鉄板を貫通すべくビームアイを発射。 「待て! いやそれはまずい。ゼスタ達が蒸し焼きになる」 ラルク・アントゥルース(らるく・あんとぅるーす)が声を上げる。 「え? ならばこれなら……!」 変熊は落ちているちくわサーベルを拾い上げ、分厚い鉄壁に突き刺して貫通させる。 「さぁ、みんな。輪切にしてホカホカチクワの穴の中を通っていくんだ!」 「穴が小さくて無理だ」 武神 牙竜(たけがみ・がりゅう)が首を左右に振りながら、もどかしげに言う。 「むむ、注文の多い奴らめ! ぶつぶつ」 変熊はぶつぶつ言いながら、ボロボロになったちくわサーベルを抜いた。 辺りに焼きちくわの匂いが充満する。 「サンキュ! うりゃーっ!」 ラルクが中に残っていた鉄塊を殴り落し、空いた直径数十センチほどの狭い穴に身体を捻じ込んで、鉄壁の先へと降り立つ。ラルクに続いて、皆も同じように穴を通り抜ける。 そして閉じ込められていたメンバーと合流すると、壊れた鉄柵の間を通って先へと走り出る。 スタートは遅れたが、魔法や物資を用いての治療、情報送受信は可能な限り終えての出発だった。 「……みんな俺様の事置いて行きやがって……チクワの匂いをプンプンさせて先に進むがいい!」 そう見送る変熊が一番長く、ちくわの匂いの中に晒されている……。 「はっ、ここに残ってたら、俺様手柄あげられないじゃん……」 すぐにその事実に気づいた変熊は無光剣を床にザクザクぶっさす。 「……エネルギー室はこの下よね。マリカ、先に行って」 「わかりました」 変熊が床に開けた穴に駆け寄ったのは、崩城 亜璃珠(くずしろ・ありす)だった。 召喚したマリカ・メリュジーヌ(まりか・めりゅじーぬ)を先に行かせる。 「エネルギー室はこっちから行った方が近いか!」 「マスター、灯様、掴まってください」 「ああ」 魔鎧の龍ヶ崎 灯(りゅうがさき・あかり)を纏った牙竜も、重攻機 リュウライザー(じゅうこうき・りゅうらいざー)に掴まって、エネルギー室へと下りていく。 「こら、貴様ら……」 先を越された変熊はちょっと焦りながら、モニターで下の階を映し出す。 「あ、んーでも、今の俺達じゃここ行くの無理だね。イコンで下りたら嵌りそうだし。おとなしく待ってようか……」 諦めて、変熊はとりあえずこの場で待つことにした。 「わかったにゃ……。誰も回復してくれなかったにゃ……」 にゃんくまは悲しげな声を上げた。でも、ちくわの匂いに囲まれて幸せな気分だった。 |
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