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リアクション
★3章
一重二重どころではない爆発の連鎖が起こると、壁や天井が風化したようにボロボロと崩れ落ち始めた。
電気系統もそれなりに強固だったはずが一瞬にして遮断され、辺りはバッテリーのみで保つ薄暗い空間となった。
階下で喚き叫ぶ声が耳を劈き、誰もが『蜘蛛の糸』を探し、逃げ惑う中――。
ついにポップコーンは弾け、それは銀色の銃弾となってカジノと飛び交う。
阿鼻叫喚のゴチャマンの出来上がりだ――!
「シェリー、貴様の差し金か――」
「ハハハハ――ッ! さあ、どうでしょう、オールド・ボス・ロッソォッ! オールドの頭目である貴方ならいつ、何処でも狙われるでしょう!? 貴女も、貴方もォッ!」
シェリーは狂ったように笑い、ベレッタとマルコに向けて手を広げて見せた。
この人の変わりよう――。
後に引けないと知った瞬間に湧き上がってきた感情が一気にシェリーを狂わせたのだ。
初めて実感した。
初めて経験した。
感情をコントロールできない人間はかくも脆く弱い。
「そうだな。その通り。成る程、マフィアごっこも板についているじゃないか」
「いいや、貴女の仕業かもしれませんよォッ!」
*
「ロンドのベレッタか――!? それともニューフェイスのシェリー――! 否、コウモリ野郎――カーズのマルコかッ!」
階下から声が飛ぶ。
「状況から敵襲も想像されます! 不特定多数! 爆弾も使用するやり口から――ロンドです!?」
オールドの一員としてカジノ内部で警備していた相沢 洋(あいざわ・ひろし)は爆破が起こると煽る様に怒鳴り、それに乃木坂 みと(のぎさか・みと)も続くと、すぐさま鼓舞するように叫んだ。
「誰であれ爆弾を使って我々のカジノを攻撃してきたのだ、構うことはないッ! これは宣戦布告であるッ! オールドに牙を向けた事――後悔させてやろうッ!」
鬨の声が上がる間もなく、一帯は銃声に包まれた。
「混乱に乗じて首を狩りたがる奴は絶対いるッ! 撃て! GO――GO――GO! ボスのところに近寄らせるな」
「ブリザード――ッ! 止まりなさい――! 的になりたくなければ静まりなさいっ」
みとがブリザードでマフィア達の動きを封じ、それでも反撃を試みようとするものは洋の光条兵器による2丁の銃で撃ち抜かれた。
「洋孝、エリス――防衛線を張れよッ!?」
洋は視線を通路側へ向けると、
「あーあ、どうなってんのこれ?」
「どう考えてもやりすぎですね。建物の崩壊すらありますし、よっぽど皆さん爆破したかったのでしょう」
エリス・フレイムハート(えりす・ふれいむはーと)は光条兵器を対戦車用ライフルとし、相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)と共にフロアに通ずる広くとられている通路の前で防衛線を張った。
「無駄です。火力がダンチですから」
通路の先――煙の中から人影が見えた瞬間、躊躇わず引き金を引いて吹き飛ばした。
「エリス、フロアへの侵入は絶対許すなよ! そうなれば必然的にボス達を襲う連中も袋小路だし、逃げていく連中の中にも実行犯がいるはずだしなッ!」
「了解。2発目いきます」
洋孝は片耳を塞いで、エリスの援護を続けた。
*
スロット・マシン傍――ロッソの娘アンジェリカにも魔の手が襲ってきた。
「アンジェリカはやらせないよ!」
美羽は物質化・非物質化でメイド服の背に隠し持っていたスピアをコハクに手渡し、自身は光条兵器のマシンガンを手にした。
「どさくさに紛れて卑怯な手を使うなんて――」
「そぉんなズルする人達は、私達がやっつけちゃうもんね!」
コハクが近接で飛び掛かるマフィアを薙ぎ払い、美羽が銃撃によってアンジェリカを狙うマフィアを撃ち倒していく。
「逃げよう――!」
美羽がアンジェリカの手を取り、コハクを露払いに走り出した。
*
天井からもコンクリが落ちてくると――その屋上から見える月光の光に照らされた人影が甲高い笑い声を響かせて宣言した。
「フハハハ! 我が名はドクター・ハデスッ! 世界征服を企む悪の秘密結社オリュンポスの大幹部、そして、紛うことない天才科学者! ククク、このエデンの街は、我ら第5のファミリー『オリュンポス』が支配する!」
ドクター・ハデス(どくたー・はです)が街にとってのビッグ・ニュースを叫んだ。
叫んだのだが――。
「……あれ、ちょっと、マフィアの皆さーん、聞いてます? おかしいな……これは登場に懲りすぎたか――」
銃声で聞こえるはずもなく、まあ、良いと諦めてハデスは腰を下ろし高みの見物を決め込んだ。
「このドクター・ハデスが不調で失敗に終わっても、私のパートナーと新たな仲間が仕事を遂行してくれるだろう。ここでゆっくり勢力図の変化でも見てればいいさ」
まるでスポーツ観戦を決め込むように階下を見るハデス。
パートナーであるアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)、天樹 十六凪(あまぎ・いざなぎ)、デメテール・テスモポリス(でめてーる・てすもぽりす)の3人と、この街にきて新たに仲間となったアキュートとクリビアのことを考えていた。
「……全く、この街は愉快でならない。馬鹿が絶え間なく紛れ込んでくる」
「ミス・ベレッタ、どうかしたかね?」
「上で叫んでる『お山の大将』だよ。もう1つマフィアを立ち上げたらしい」
が、ベレッタとロッソには聞こえていたようで、ハデスは知らないがある種の目的は達成されていた。
ただそれに気付いてないのはカーズのマルコとニューフェイスのシェリーで、彼らは高揚する自分の気持ちを止められそうになかった。
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