空京

校長室

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歓迎会場立食パーティ:page01


 小谷が背を返したあと。しばしの沈黙の後。

「パラミタからの新入生は、海京は初めての者も多かろう。迷子になる者がおるやもしれん」

悠久ノ カナタ(とわの・かなた)緋桜 ケイ(ひおう・けい)に向かって言った。

「そうだな。天沼矛にやって来た新入生を会場まで案内するか」

「うむ、このような役目のものがおらぬと、困ろうぞ」

それを聞き、宙野 たまき(そらの・たまき)が言う。

「じゃ、俺らは参加受け付けで学校名、所属学科、名前を書くための名札を渡すよ」

星崎 弾気(ほしざき・たまき)が頷いた。

「オレはじゃあ、会場内での呼び出しやなんかの総合受付も設定しておくよ」

沙 鈴(しゃ・りん)が言った。

「呼び出しなどは、混乱が予想されます。
 インフォメーション兼緊急連絡先として、コールセンターを設置してはどうでしょうか?
 無論わたくしが詰めさせていただきますわ」

そこで一度言葉を切り、やや小声で続ける。

「……メガフロートが揺れなくてホントに良かった。……わたくし船に弱くって」

綺羅 瑠璃(きら・るー)も言う。

「海京のハイテク施設に慣れない人もいるでしょう。
 新入生歓迎会用に海京ガイドを作成してきましたから、配布してはいかがでしょう」

たまきがぽんと瑠璃の肩を叩いた。

「お、じゃそれ俺らに渡しておいてくれ。受付で配るから」

瑠璃が頷いて、背後に積み上げられた箱を箱を指し示す。

「はい、では、よろしくお願いします」

「おう、任せてくれ」

弾気がぱらぱらと見て言った。

「おお、すげーな。本格的だ」

瑠璃がにこっと笑う。

エマ・ルビィ(えま・るびぃ)を伴ってやってきていた神楽 授受(かぐら・じゅじゅ)が言うた。

「じゃ、あたしはエマと一緒に、新入生の胸に飾るお花を配るわ!
 目印があったら新入生ってわかりやすいしね」

エマがにこにこと言った。

「わたし、お花屋さんの店員なので、お店からお花を提供しますわ。
 新入生にお花のブローチを配ります。
 明るいピンクのカーネーションなら、目立つかと思いますし」

沙 鈴が言った。

「歓迎会が終わったら、運営側で打ち上げでもやりましょう」

弾気が頷く。

「それもいいな」

「おお、名案だぜ」

ケイもにまっと笑う。

「では行こうかの」

ケイとカナタは、続々と生徒たちが到着しだした天沼矛へと向かった。戸惑っている新入生らしき生徒を見つけ、声をかけてゆく。

「俺はイルミンスール魔法学校三年の緋桜ケイだ。
 みんなを会場まで案内するから、しっかり着いて来てくれよな!」

「会場は複合レジャー施設となっておる。会場では魔法を使ってはならんぞ。
 これからの冒険で共に歩んでゆける仲間を見つけられるよう、大いに楽しんでくるがよい」

神楽とエマも、自らが配る花のような微笑みを振りまき、生徒たちに次々声をかけてゆく。

「今日はぜひ楽しんでいってね! はい、お花よ〜」

「ようこそ、シャンバラへ。ゆっくり楽しんでいってくださいね」

 秋葉 つかさ(あきば・つかさ)は、せっせと厨房から料理を運んでいた。もの珍しそうに、少し緊張感を漂わせた新入生を見つつ、一人ぶつぶつとつぶやいている。

「新入生の初々しい姿をのぞくのもまた一興ですね〜。
うーん、「のぞき部」に有力な人はいませんでしょうか……」

つかさのパートナー、ヴァレリー・ウェイン(う゛ぁれりー・うぇいん)はうーん、と唸った。

「酒が飲めると聞いてやってきたのにな〜。カタい事言うなよ……
 ……仕方ないな。俺様もつかさと共に裏方に回ってやろう、意外と料理は上手いんだぞ?」

鏡 氷雨(かがみ・ひさめ)はエントランスをくぐりながら、一人ごちた。

「おいしいお料理とかあるかなー。
わぁー、人がいっぱいいるねー」

パートナーの姫神 夜桜(ひめかみ・よざくら)がニコニコと言う。

「ひー君ご機嫌だね。
 そんなに楽しみだったの?」

氷雨は満面の笑顔で頷いた。

「うん。あ、おいしそうなお料理だー、ねね これ食べてみて、美味しいよ」

姫神に料理を取り分ける。姫神が頷く。

「あ、ほんとに美味しいね」

氷雨は次に何を食べようか、とビュッフェに立っていったところで、傍らに料理を取ろうかと悩んでいる様子の伊藤 ひな(いとう・ひな)と、そのパートナー六合 くらら(ろくごう・くらら)がたたずんでいるのに気づき、声をかけた。

「君も食べてみなよ。コレすごくおいしいよ!」

「ありがとう、あたい伊藤 ひなや。
 こっちがパートナーの六合 くららって言うねん。よろしくなぁ」

「うん、よろしくね」

そこへヴァレリーがカットステーキを持った皿を手にやってきた。

「ふっ、これを見て驚くな。どうだこの絶妙な焼き加減のステーキは? 美味そうであろう?」

「うわあ、美味しそう」

「ほんまや〜」

氷雨とひなが歓声を上げる。照れくさそうにヴァレリーが、

「べ、べつにお前たちの為に作ってやってるのではないぞ、残ったら俺様がいただくためだ」

そんなやり取りを見つつ、姫神は一人静かに笑みを浮かべた。

「どうやら、友達はすぐ出来そうだね」

つかさがそこへ、サラダを持って現れた。

「皆様にとってこの学校が良い場所となりますように。
 ……そして私の夜の……ごほんごほん」

「ほら、さっさと運ばんか!!!」

「……はーい」

すかさずヴァレリーが突っ込みを入れ、つかさは早足で厨房へと向かったのだった。