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リアクション
歓迎会場立食パーティ:page07
料理の皿を手に、座るスペースを探していたアクロ・サイフィス(あくろ・さいふぃす)とフィンラン・サイフィス(ふぃんらん・さいふぃす)は、同じように場所を探していたらしい上島 まつり(かみしま・まつり)に声をかけられた。
「やぁ、食べる場所探し?」
「はい、そうです」
応えたアクロに、まつりのパートナーセルリィ・ロー(せるりぃ・ろー)が言う。
「結構人がいるもんなぁ」
近くにいた瀬野 小太刀(せの・こだち)が言う。
「あ、こっちのテーブル、結構あいてるぜ。俺らと一緒でよかったらどう?」
小太刀のパートナーティリア・ロージェセン(てぃりあ・ろーじぇせん)がひそっとつぶやく。
「ここは一つ、社交ね」
6人はテーブルにつき、食事を始めた。
「俺は瀬野 小太刀。何かの縁でパラミタで出会ったんだ。これからも仲良くしようぜ」
「ワタシは小太刀のパートナー、ティリア・ロージェセンよ。よろしくね」
「僕はアクロ・サイフィスと言います。
パラミタに来たばっかりで右も左もわからないのでこれを機に仲間をつくれたらいいなと思っていて」
「アクロの妹のフィンランです。この歓迎会を機に私もお友達を作れるといいな
……もちろん、兄さんが一番大事だけどね」
そう言ってフィンランがアクロの腕に自分の腕を絡ませる。
「私、上島まつりって言うんだ。何かあればよろしくね」
「オレ、セルリィってハーフフェアリーなんだけどまつりって地味だろ?」
セルリィは言って、いったん言葉を切った。
「まぁ、そんなわけでまつりをオレみたいにイケてる男にしたいわけよ!
……ま、コイツは女なんだけどな」
新入生同士の会話は、来るべき学校生活の話題へと移っていった。
エメ・シェンノート(えめ・しぇんのーと)はいった。
「ホスト喫茶『タシガンの薔薇』としては、この機会にトモミンこと小谷先生を接待する」
リュミエール・ミエル(りゅみえーる・みえる)はテーブルに焼き菓子を盛り付けた皿を配置し、南臣 光一郎(みなみおみ・こういちろう)とオットー・ハーマン(おっとー・はーまん)は、マッサージ用の台の据付を行っている。エメは近くで驚いた表情で突っ立ている鬼院 尋人(きいん・ひろと)と呀 雷號(が・らいごう)に向かって言った。
「そういうわけで君たち、小谷先生をここに連れてきてくれ」
「私が……ホスト……?」
愕然とする雷號に、尋人が宥めるように言った。
「まあ、野獣系ホストの南臣もいるし、いいんじゃない?
あ、オレ源氏名はローラがいいな。雷號はワイルドローズね」
「……源氏名はつけなくていい」
話題の小谷は大ホールの盛況振りを見てつぶやいていた。
「結構大規模になったわね〜」
その前に、黒いスーツに身を包み、渋面を貼り付けた雷號がぬっと立ちはだかった。どこから見ても立派にその筋の方である。
「な……なに??」
「……どうぞ……こちらへ……」
押し出すように言う雷號の迫力に、小谷は真っ白になりながら素直に従った。脇から尋人が話しかけてくる。……が、しかし。
「お姉さんは、年下の男は好きですか?
「お姉さんは、神社とか好きですか?」
固まった小谷の耳にその言葉は入らず、スルーされた尋人は頭を抱えた。
「ダメだオレ……」
固まった小谷をつれて雷號と尋人が戻ってくると、すかさずエメが声をかける。
「タシガンの薔薇へようこそ、トモミン先生。香り高い紅茶をどうぞ。
こちらのプティ・フールは私が焼いたものです。お口に合えばよいのですが」
すかさずリュミエールが小谷をエスコートして座らせる。
「とても綺麗だよ」
ようやく事情がわかった小谷はリラックスして紅茶を飲み、焼き菓子を口にした。
「あらぁ、これ美味しいわ」
「光栄です」
南臣がマッサージ用の台を指して言う。
「さー、小谷先生。こっちへどうぞ」
「わー、マッサージサービス? いいわねぇ」
南臣が言う。
「上半身はリュミエール先生にお任せ。
リュミエール先生とエメ先生ははわかっていないが、女は脚だろ脚!」
「臣君、何を言ってるんです……女性は肩と首ですよ」
エメがおっとりと反論する。リュミエールが肩のツボを押しながら言う。
「あ、結構……ん。……すぐに解してあげるからね
こっちと…こっち、どっちが好き?」
「あ……!」
小谷が呻く。南臣がすかさず足裏のマッサージを始めた。
「ここがイイんだ?……もっと強い方が好みだなんて、意外と激しいのが好きなんだね?」
「あ、いい感じ、ん……」
「ふふ。……いいだろう?」
言いつつ南臣は思った。
(意外と守備範囲広かったんスね俺様、本人すらも知らなかったっスよ)
オットーがついたて越しに立ち、2人がマッサージしている影でこっそり「清浄化」や「リカバリ」で小谷のの肌の状態回復や疲労回復を行っていた。
なんとなく気恥ずかしくなった尋人と雷號は、顔を赤らめて部屋の端の方へ行ってしまった。
「お、ほん。過半はそれがしの手柄。
トモミン殿はお主らごときの児戯で転がせる相手でない!喝ぁーっ!」
「ん〜〜!!! あ、も少し優しく……」
小谷がうめくような声で叫ぶ。
「……しかし物陰から話し声だけ聞いてていると……
怪しい……怪しいである……それがしの妄想、大暴走である!」
五条 武(ごじょう・たける)は小谷を探していた。すっかりリフレッシュした小谷が、ちゃっかりとタシガンの面々とメアド交換を済ませ、ぶらぶらと通路に出てきたところを発見する。
(何でも美人教師とやらが……お、アレか!
……自分のこと『トモミン』とか言いやがって、変な女だ)
小谷の前に歩いていくと、おもむろに言った。
「友美センセよォ、アンタ、いくつだァ?
見たところずいぶん若ェしキレイだが、なんでわざわざ彼氏募集なんかしてンだよ。
「なによいきなり。……文句あるわけ? ……なかなかシブイ声だけど」
「……変に若く振舞おうとしてよ? 自分でトモミンはねーだろ。痛ェよ」
「……なっ!」
まだ何か言い募ろうとした五条が、紅蓮の炎に包まれる。パートナーのテッド・ヴォルテール(てっど・う゛ぉるてーる)の仕業だ。
「先生、ホント、悪かったな。武口が悪くてよ。……炎は他に引火しないからそこは心配なく」
五条が黒こげでどさりと倒れる。
「ただ、その……やっぱり自分で『トモミン』は…止めたほうが良くねーか?
先生にゃ『大人の魅』」っつーモンがあると思うしよ?」
そこでいっぺん言葉を切り、小谷の目を見据えてテッドは言った。
「偽りの自分じゃ、素敵な彼氏のゲットは、できねーと思うぜ」
そう言うと、五条を引きずって立ち去っていった。小谷はしばし、ぼんやりとその場に立ち尽くしていたのだった。
いつものように、全裸をマントで覆った変熊 仮面(へんくま・かめん)も、立食パーティ会場にやってきていた。今回は弟子(?)のにゃんくま 仮面(にゃんくま・かめん)も伴っている。見た目は愛らしい子猫だが、性格はなかなか極悪である。
「師匠!海鎮の儀とやらの会場はここでいいのですかニャ?」
「うむ、そのはずだ……騒がしい会場だな。ここを俺様の美しい肉体をもって鎮めるというわけだな!」
おもむろに、人の多い通路上の仮設ステージに飛び乗る変熊。
「はーい、皆さんちゅうも〜く!」
よく通る声が、周囲に響き渡る。
「これから薔薇学一美しい俺様が開陳の儀を行いまーす……それっ、開ち〜ん!」
おもむろにマントをばさりと開く変熊。続いてにゃんくま仮面も……。ただし、見た目的にはこちらの精神的ダメージはない。
「にゃーっはっはっ! フワフワ、モフモフ、可愛い仔猫のにゃんくま仮面だ!」
周辺から悲鳴と怒号が響き渡る。近くにいたヴァーナー・ヴォネガット(う゛ぁーなー・う゛ぉねがっと)とセツカ・グラフトン(せつか・ぐらふとん)、が騒ぎに気づいた。
「百合園女学院のヴァーナー・ヴォネガットです。どうしたんですか〜?」
「何かのいたずらですの?」
柔道部の勧誘のため、百合園柔道着で参加していたマリカ・ヘーシンク(まりか・へーしんく)と、そのパートナーテレサ・カーライル(てれさ・かーらいる)も、騒ぎを耳にして立ち止まった。
「……ちょうどいい具合に、暴漢ならぬヘンタイさんですか!」
テレサが言う。
「これは、成敗、ですね」
ヴァーナーとセツカはにゃんくまに突進した。ヴァーナーがすかさずにゃんくまを捕獲する。
「わあ〜 ぬいぐるみみたい〜」
セツカが覗き込んで言う。
「……とはいえ、いたずらな子はオシオキですわね」
ヴァーナーに力いっぱい抱き潰されたにゃんくまが悲鳴を上げる。
「ぐ……ぐるじい……にゃ〜……」
「あ、加減しなきゃダメですよ」
セツカが言う。一方のマリカはすかさず変熊に近寄った。
「どう?俺様の美しい肉体……って、わっ!ちょっ、やめっ」
「こ……の……へんたあああああい!!!! 触りたくないけど……でも……
えええーい! いやあああーーーーっ!!」
気合一閃。手加減一切なしで渾身の双手背負いを見舞う。景気良く吹っ飛んだ変熊は壁に激突し、ぐしゃりと崩れ落ちた。
警備員が駆けつけ、変熊とにゃんくまを連行してゆく。襟首を掴んでぶら下げられたにゃんくまが言う。
「……ここ……新入生歓迎会のほうだった……か」
「師匠、やっぱ『海鎮の儀』の場所をきちんと確認しとけばよかったんだにゃ!」
マリカがさわやかな笑顔で、拍手する生徒たちに言う。
「よろしかったら柔道部にどうぞ!」
「結果的に勧誘デモとしては良いんでしょうけどけど……はぁ」
元気良くひたすら勧誘を行うマリカを見ていたテレサは嘆息した。セツカは同意をこめた目でテレサに言う。
「……お互いお目付け役は、大変ですね」
万感の思いが、二人の間に行き交ったのであった。
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