空京

校長室

浪の下の宝剣

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歓迎会場立食パーティ:page09

 シェス・リグレッタ(しぇす・りぐれった)御魂 紗姫(みたま・さき)に向かって力説していた。

「いいことサキちゃん? トモミンなどにお色気担当は渡さないんだからねっ!」

「ちょ、シェス!バニーガールなんて聞いてないわよ!?
 〜〜〜ッ! ……あとで覚えてなさいよ!!」

日下部 社(くさかべ・やしろ)がそこへ通りかかった。

「俺は『846プロダクション』っちゅうとこでプロデューサーしとるもんなんやけど。
 キミ達アイドルに興味あらへん?」

「きょ、教導団に配属になりました、御魂紗姫です。
 この格好は、その……相方にムリに着せれたもので、決して、私の趣味とかでは…!」

「にひ、同じく教導団のシェス・リグレッタですよん。よろしくぅ〜
 見ての通り、ウサギの獣人ですねぃ」

日下部のパートナー、望月 寺美(もちづき・てらみ)がふむふむとうなずく。

「お、いい感じですね〜」

セレンフィリティ・シャーレット(せれんふぃりてぃ・しゃーれっと)がそこにやってきた。

「あらぁ、面白そうねぇ」

セレアナ・ミアキス(せれあな・みあきす)は嫌な予感がした。

(珍しく国軍の制服なんか着て……でも絶対ウラがあるとは思ったんだけど)

セレンフィリティがにいっと笑った。

「今日は歓迎会なんだから無礼講よねっ!」

そしておもむろに制服をぱぁっと脱ぎ捨てた。露出度の高いビキニ姿に、周囲の男性の目が釘付けになる。声にならないどよめきが走った。調子に乗って、踊ったり、男子学生のところへ行き、サービスと称して頬をつんつんしたりするセレンフィリティ。

(……やっぱり。恥ずかしいたらありゃしない)

セレアナは嘆息した。

シェスがそれをみて俄然対抗意識を燃やしだした。

「ほらほらサキちん、折角お色気系なんだし!! がんばらないとっ!
 ……ほれほれ、胸とか寄せて上げてサービスサービス」

「シェス! いい加減に……ひゃう!? や、やめてよっ!」

「おおおー」

周囲からどよめきが上がる。

「よかったら連絡してや」

それを見て日下部はさっと名刺を差し出した。

朱野 芹香(あけの・せりか)が日下部に声をかける。

「あの、よかったら芹香のデモも見てもらえませんか?」

「ええで〜。何かやってみてくれ?」

言われて芹香は、小型の音楽プレイヤーからセレクトした曲を流し、それにあわせて華麗なジャンプスタイルのダンスを披露した。

「うわあ、すごいです! かっこいい!」

「そこのキミ! 合格や! ウチに来てや〜!」

寺美が歓声を上げた。紗姫とシェスもそれに見とれている。
逢坂 楓(おうさか・かえで)のパートナー、エリオット・クーガー(えりおっと・くーがー)がその一角に気づいた。

(こ、これはデビューのチャーンス!!)

急いで日下部に声をかける。

「あの、あたしのパートナーも参加させていただいても?」

「ああ、もちろん!」

急ぎ楓の元に戻ると、

「ね、ね、かえちゃん。今そこで何人か新入生歓迎のパフォーマンスしてるんだって。
 かえちゃんにも参加して欲しいんだって」

「そ、そうなの? でもボクも新入生だよ?」

「だからいいんじゃない〜!」

何がいいのかわからないまま、気づくと楓は日下部の前に立たされていた。

「ほんじゃま、よろしゅう」

「えと…天御柱学院、新入生。逢坂 楓……男です……
 みんな、仲良くしてくださいね。歌は『小さな翼』宜しくお願いします」

「キャー!かえちゃんかわいぃー!!
 エリちゃんも一緒に歌いたいなー」

「……男の子……なんだ」

寺美がつぶやく。それを見ていた弓槻 美津留(ゆづき・みつる)がパートナーの東雲 遼太(しののめ・りょうた)に言う。

「あの子なかなか良さそうな感じだよ」

「女の子だろ?」

「どう見ても女の子だけど、男って言ってた」

「ほう」

東雲が、歌い終わった楓にすっと近寄った。

「今は大人数アイドルと言えば女性ばかりだが、大人数男性アイドルの時代が来ると思う。
 キミは磨けば光る! 教育は惜しまないよ。将来性もあると思うんだが、どうだ?」

「あ……の……え?」

そこへ日下部が割って入る。

「ちょっと待ちや。あんさんもスカウトか?
 悪いが良い子がいたらウチが貰うで〜!」

「そういうのを決めるのは、本人だと思うのよ」

弓槻が言った。

芹香のパートナー、鼎・ホワイト(かなえ・ほわいと)はことの成り行きに目を白黒していた。

「パラミタ新入生の歓迎会だと思ってたんだけど、ここってアイドル養成学校だったの?」

それを聞いた寺美が我に帰って叫ぶ。

「そ……そうですよ! 社長ぉ〜。ここで自分の事務所にスカウトする行為はルール違反ですぅ〜!
 ほらほら、新入生の皆さんも戸惑ってるじゃないですかぁ〜!行きましょう!」

「えー、そんなカタイこと言わんでも、なぁ〜」

東雲は抜け目なく楓に名刺を渡し、次なる有望そうな人材を探しに彷徨っていった。