リアクション
少女の見た夢
花火が打ち上がったのを、イーダフェルトの神殿の屋根の上に座っていたエルピスは見ていた。
どんっ、どどんっ、と大きな音と一緒に、色鮮やかな光の華が空に咲きみだれた。
その日の夜は満月だった。空には見事なまでに真ん丸とした月がのぼっていた。地球では、月にはうさぎがいるとささやかれているらしいが、パラミタではどうだろう? あるいはイーダフェルトでは? エルピスは、もしかしたらいるかもしれない、と思った。
「だって、文明があるぐらいですからね」
エルピスは一人で口に出す。
足もとには三匹のポムクルさんがいて、もぐもぐと出店で買った夕食のたこ焼きを食べていた。エルピスが見ているのに気づくと、ポムクルさんたちは首をかしげた。
「なのだー?」
「ええ、そうですね。きっと、見つかるかもしれませんね」
エルピスはつぶやいて、また花火の音を耳にした。
どんっ、どどんっ、どんっ! 大きな華が、大きな満月の下で鮮やかに散る。
今日はとても楽しかった。色んなものがあったし、色んなものを見た。きっと、ポムクルさんたちだって、一緒のはず。
「ポムクルさんたち」
エルピスが呼びかけると、ポムクルさんたちは彼女を見あげた。
「明日からも、よろしくお願いしますね」
微笑んだエルピスを見て、三匹のポムクルさんたちはいっせいに手をあげた。
「なのだー」