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リアクション
ドージェ2
巨大火山アトラスの傷痕を越え、巨躯の漢がゆっくり東へと進む。
向かう先はシャンバラ大荒野だ。
波羅蜜多実業高等学校総長ドージェ・カイラスである。
ドージェのすぐ後ろには、彼のパートナーである剣の花嫁マレーナ・サエフが付き従い、さらに周囲にはドージェを神と崇めるパラ実生や蛮族が取り巻きとなって群れている。
巨大な手で器用に携帯電話を見ていたドージェが、かすかにニヤリと笑う。
だが取り巻きの向こうから、ひび割れた拡声器の声が耳障りに響いた。
「こちらはシャンバラ教導団。賊徒ドージェ・カイラスよ、素直に罪を認めて投降せよ。これより先に進むようであれば、我が軍及び無垢なる人民に攻撃の意思有りとして攻撃する。繰り返す……」
教導団の偵察部隊が、軍用バイクで走りながら拡声器で警告してくる。
ドージェは携帯電話をしまい、それに逆らうように先に進んだ。取り巻きが、うるさい軍用バイクを追い散らす。
前線の本陣に、ドージェの座標確認とその進行の報告が入る。
シャンバラ教導団団長金鋭峰(じん・るいふぉん)がそれを受けて、ミサイル発射の命を下した。
ドージェが進む前方に、スピーカーが置かれている。周囲に人はいない。スピーカーから無線で警告音が鳴り響く。
「警告します。ミサイル接近中。およそ十分後に到達。付近にいる方は至急、避難してください」
取り巻きたちの間にざわめきと動揺が広がるが、ドージェはその警告など存在しないように先を進む。
彼方では、それまで超解像度の望遠鏡でドージェの同行を見張っていた教導団の偵察部隊が、撤退指示を受けて大急ぎでバイクを走らせて避難していく。
それから十分近くが過ぎた頃。
ドージェがマレーナの胸に腕を突っこんだ。
血に染まるマレーナの服が破れ、ドージェの拳に光り輝くナックルが装着される。
ドージェは雄たけびと共に、その拳を空に向けて突き上げた。
凄まじい気が周囲を暴風雨のように襲い、逃げずに残っていた取り巻きたちが飛ばされていく。
ドージェの拳から出た気の塊は天高く消えていき……遥か上空で火花が上がった。
遅れて轟音が大荒野の枯れ草を振るわせ、やがて焦げ臭い匂いが空から漂ってくる。
「ミッ、ミサイルがレーダーより消滅?!!」
管制室ではレーダー担当士官が悲鳴のような声で報告する。
そのすぐ後に現場の偵察部隊よりミサイル迎撃の報が入り、技術者たちはパニック状態になった。
「バ、バカなッ?! どんな計算をすれば生身で迎撃など?!」
「ドージェはイージス艦並の防空能力を持つと言うのかッ?!」
技術者たちの狼狽ぶりに、野武は肩をすくめた。
「やれやれ、どちらがドージェを甘く見ていたのやら」