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リアクション
協調交渉
百合園女学院のどりーむ・ほしの(どりーむ・ほしの)は、教導団の部隊に説得に来ていた。
「今は他校の脚をひっぱる余裕など誰もないはずです! ばらばらに攻撃するより一箇所を集中して攻撃すれば、より早く倒せるはずです! 倒せるかどうかじゃないです! はやく倒して街の人たちを安全にしなきゃいけないんです!」
しかし教導団員の反応は冷たい。
「貴校らとの協力は本校からの指示に無い」
どりーむは、校長ならともかく一般生徒なら自分の頼みを聞いてくれると思っていたが、甘かったようだ。
彼女を放って先を進もうとする教導団員に、どりーむは食い下がる。
「待ってください」
「これ以上うるさくするなら、我が軍への妨害行為とみなして対応させてもらおう」
教導団員が銃口を彼女に向ける。
「いい加減にしないか」
同じく教導団の説得に来ていた、蒼空学園の閃崎静麻(せんざき・しずま)が止めに入った。どりーむを守るように、彼女と銃口の間に立ち、静麻は教導団の指揮官に言う。
「ここで梃子摺ってて真っ先に死んでいくのは空京にいる一般人なんだ! 下らない見栄や面子、建ってもいない国の利権争いでそいつらを見殺しにしてんじゃねぇ!」
「引け。一生徒の下らない個人的感傷が、我が軍の作戦に影響を与える事はない」
態度を変えない教導団に、静麻は激昂した。
「てめぇら、本当にやるべき事をやりやがれ!!
止める教導団員を振り切り、静麻は指揮官に殴りかかった。しかし、カウンターであっけなく殴り倒される。
「この野朗ッ!」
教導団が彼に銃を突きつけるが、指揮官は言う。
「面倒だ。恐怖にとち狂って襲ってきた馬鹿がいた、として処理しておけ。それより準備はいいか?!」
教導団員は陣形を組み、モンスターとの戦いに出て行く。
どりーむは「大丈夫?!」と静麻の介抱にかかる。どりーむはあれもこれもやろうと気ばかり逸って、結局、交渉だけしかできない。
「ってぇ……。予想以上に分からず屋だな」
アゴをさすって起きた静麻にふぇいと・たかまち(ふぇいと・たかまち)が言う。
「教導団は行ってしまいましたし、いったん戻りましょう」
「仕方ねぇな。何か嫌な予感もするし、戻るか」
静麻は、急にパートナーレイナ・ライトフィード(れいな・らいとふぃーど)が心配になる。生真面目な彼女は今頃、ダークヴァルキリーとの戦いに身を投じているはずだ。
なお、これに先駆けて、どりーむと静麻は蒼空学園に同じ説得を試みていた。
しかし、そもそも協力を断って対立姿勢を作ったのはイルミンスール魔法学校とシャンバラ教導団の側である。
「そう思うなら、それをイルミンや教導団に言ってやってくれ」
話を聞いた、クイーンヴァンガード親衛隊長のヴィルヘルム・チャージルは二人にそう言った。一方的に協力を断られた側の蒼空学園を説得しても、仕方がないだろう。
少なく見ても、この戦いには日本、米国、欧州、中国の国益がかかっているのだ。それら国々が自国の国民の利益を損ねてまで、ここ数年で空京に流れ込んだ、にわか山師や出稼ぎ労働者百万人を守る訳が無い。
特に、日本の影響力が強い空京など、欧州や中国にとっては少々壊れた方が良いくらいなのだ。
サブプライムローンに端を発する世界大恐慌を、各国はシャンバラへの投資に依存する形で解消してきた。ここでシャンバラへの影響力を弱めるという事は、それらの負債をすべて背負う事になる。
また、各国とも環境破壊にともなう大災害の頻発で、国力を落としている。
今、シャンバラの建国で他国に先を越されれば、その国の未来は無いと言っても過言ではない。
もっとも、多くの学生はそうした事を意識していない。彼らは異世界探検気分に浸って、口では「上」の文句を言いつつも、結局は国の手駒となっているのだ。
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