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リアクション
魔法学校以外の寝所捜索
魔法学校が捜索した後に、クイーンヴァンガード隊員の蒼空学園生シルヴィオ・アンセルミ(しるう゛ぃお・あんせるみ)とアイシス・ゴーヴィンダ(あいしす・ごーう゛ぃんだ)がやってくる。
イルミン生の苦心の跡が見られる室内を見回し、アイシスが言う。
「この部屋はもう探索済みね」
シルヴィオは残念そうだ。
「ここもか。先にケンカ吹っかけてきたのはイルミンの校長だし、お灸を据える為にも先回りして情報を引き出してやるってのもアリだと思ったんだがな」
アイシスは彼を「仕方のない人」と言うように見る。しかしシルヴィオは、別の事に気を取られていた。
「お? あいつら、この端末は調べてないのか?」
シルヴィオは、イルミン生が「模様が刻まれただけの台」としてスルーした台の上に指先を走らせる。しばらくは何も起きないが、突然、台が半透明になり、文字が浮かび上がった。
「やっぱりな。これは古王国時代のコンピュータみたいなモノか。機械に関しちゃ、こっちの方が強いってコト、思い知らせてやるぜ」
シルヴィオは自信に満ちた笑みを浮かべ、端末を勘で操作する。だが、やがてその指が止まる。
「……変だな。あまりにも使用容量が少なすぎる。まさか、イルミン以外の誰かに、もうデータを盗まれた後か?」
「こうした事に造詣の深い砕音様なら、何かご存知かもしれないわ」
アイシスの言葉に、シルヴィオは眉を寄せた。
「そういや砕音先生の救助依頼も校長から出てたな。先生、なんだって寝所……に……」
シルヴィオは固まった。確か砕音は、本人の言葉によれば「データ泥棒」をしに寝所に入ったはずだ。
「そうだ。砕音先生なら何か知ってるハズだ。先生を探している奴に聞いてみよう」
シルヴィオは携帯電話で、仲間に連絡を取り始めた。
クイーンヴァンガードの二人が去った後、今度は教導団員の一団がそこに来る。
みずからが結成した黒豹小隊を率いる黒乃音子(くろの・ねこ)が周囲を観察して言う。
「寝所って、ちょっと『工場』に雰囲気似てるよね。こっちは、なんだか急場作りで粗い感じがするけど」
【新星】の青野武(せい・やぶ)が音子に偉そうに説明する。
「両者とも古王国期のテクノロジーの結晶であるのは間違いない。つまり! この寝所のあらゆる物資、その構造、材質までもが我々にとって重要な財産となりうるのだよ! ぬぉわはははは!」
野武と協力する香取翔子(かとり・しょうこ)が、彼をなだめつつ誘導にかかる。
「野武さん、これらは古王国期の端末じゃない?」
「むっ、どれどれ……」
野武は経験を元に、端末のカバーを外しにかかる。その下に現れた基盤やコードなどの部品に目をこらす。
「うむむむむ! これはどうして宝の山かも知れんぞ?!」
「さっそくサンプルを採取しましょう」
野武と翔子は、慎重に端末を分解にかかる。
それを見た音子は、小隊の仲間に発破をかけた。
「ボク達も負けてられないな。秘術科に遅いクリスマスプレゼントだよ! さあ、みんな運べるだけ運んでいくよ!!!」
黒豹小隊は人数を生かして、端末を床から取り外すと、そのまま運び出しにかかる。
「モンスに壊されないよう、ちゃっちゃと運びだすニャー!」
ニャイール・ド・ヴィニョル(にゃいーる・どびぃにょる)がアサルトライフルを構え、隊員らと警備しながら運び出していく。
シラノ・ド・ベルジュラック(しらの・どべるじゅらっく)が、黒豹小隊が端末を持ち去った後の空間を、唖然として見る。
「あちらは人海戦術ですか。引越業者も驚きの働きぶりですね」
しかし野武は自信たっぷりに反論する。
「なぁに、こちらは我輩の選択眼をもってサンプルを選別すればよいだけの事。大人数で重い物資を運ぶ必要など無いのだよ! ぬぉわはははは!」
「なるほど、そういうものですか」
シラノは納得した様子で、取り外された物品を壊さないようにカバンに詰めていく。
「でも、あまりノンビリしている時間はないようね」
翔子が部屋の壁を指す。固いはずの壁が、生物のように蠢きだしている。ダークヴァルキリーの影響が現れつつあるのだ。
クレア・セイクリッド(くれあ・せいくりっど)が怯えた様子で、出口ににじりよる。
「怖いのだぁ! 早くお家に帰りたいー!」
野武や翔子は手早く作業を進め、サンプルを詰めたカバンを持って脱出して行った。
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