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リアクション
●エピローグ
イルミンスール・イナテミス攻防戦は、数名の犠牲を払いながらも契約者の勝利に終わった。
魔族の集中砲火の対象となったウィール遺跡はしかしその姿を残し、そしてアーデルハイトによって墜落させられた世界樹イルミンスールも、その身をピン、と天に立たせている。
イルミンスールの森は、顕現したクリフォトから放射状に侵食され、上空から見れば中心と外側とで二色模様を作り上げていた。
一時のような急激な侵食は収まったものの、今も少しずつ、森は侵食されている。
押し返すとはいかなくとも、せめて侵食を止めることが出来れば……契約者たちは、打開案を探る。
契約者の一部は、侵攻の首謀者である魔神と接触し、互いに血を流し合う戦い以外の決着方法を提案する。
相手は魔族、彼らの提案をどうするかは彼ら次第であろうが、可能な限り悲しみを回避しようとする者たちの、はじめの一歩となったのは間違いなかった。
世界樹セフィロトによるザナドゥ侵攻は、一応の成功を収めた。
しかし、契約者の反発は決して小さくなく、またザナドゥに加担する契約者の存在もあった。
国家神であり、セフィロトの化身であるイナンナの希望が失われるようなことがあれば、カナンのザナドゥ侵攻は頓挫し、再びザナドゥが勢いを取り戻すことは必至であった。
南カナン攻防戦は、東・南カナンそれぞれの領主に導かれたカナン軍、そして契約者の協力によって、多数の犠牲を払いながらもカナン側の勝利に終わった。
ザナドゥとカナンを繋いでいたとされる禍々しい樹は姿を消し、後には損害を受けた南カナンの光景が残った。それは、この地を大切に思う者たちに計り知れない影響を与えただろう。その影響が今度、どのような形で顕現するか、全く予測の付かないものであった。
――特に、妹を魔族に攫われた、南カナン領主シャムスなどは……。
橋頭堡の完成を潮に、ロノウェ軍は整然と戦場より撤退していった。魔族の軍に下った裏切り者たちの姿もそれに合わせて消えていた。
彼らを追撃する力はコントラクター側にも残っておらず、大多数の者が長引く緊張からの解放に、立っておれずその場に膝をついた。
辛勝だった。
いや、これは『勝った』と言えるのだろうか?
ギルガメッシュは魔神に完敗し、外装を全てはぎ取られ、内部に雷撃を受けて機能不全に陥った。カナンへ持ち帰り、すぐさま修理にとりかかったとしても、再度活動できるようになるまでは長い時間を要するだろう。
橋頭堡もまた、完成はしたが、その状態は無残でもあった。
数々の魔弾および魔力の塊を受け、折れた枝、削られた幹。緊急的に修復された箇所はぼこぼことこぶのようになり、うねって、とても聖なる樹としての美しい姿をしているとは言いがたい。
「……きっと……消えるわよね? これから少しずつ、自己修復して――」
嗚咽がのどにこみ上げ、言葉が続かなかった。
「ああ、きっと」
その言葉には、何の確証もない。
けれど、見守る全員が強く願い、それを信じた。きっとこのセフィロトの樹は、すぐにあのカナンのセフィロトのような美しい姿を取り戻すだろう。1年以上もの間イナゴに覆われながらも、決して屈しなかったあのセフィロトの分身なのだ。そうならないはずがない。
「さあ、帰ろう。われわれは橋頭堡確保の任務を全うした。あの激戦に耐え、生き残ったのだ。胸を張って、あの道をくぐろう」
橋頭堡における戦いの様子は、シオン・エヴァンジェリウスの手によって全てが映像におさめられていた……はずだった。
しかし彼も、その他の者も、ザナドゥでの様子を撮影したものは尽く再生が不可能になるか、もしくは再生できたとしても内容を確認することが出来ないという経験をすることとなった。
四魔将が手を施したか、ザナドゥ特有の現象なのか、理由は色々と考えられるが、どれも確証を得ない。セフィロトの力が強まればもしくは、ザナドゥも撮影することが可能になるのかもしれない。
それでも、直接剣を交えた者は、その記憶を決して忘れないだろう。これからあらゆる地で、そういった者たちの衝突が起きるかもしれない。
……しかしそれは、どちらに利があるかといえば、ザナドゥの魔族たちであった。契約者同士が争いをすれば、そこで生まれる負の感情は魔族を潤す。
そう、今も見えないところで、魔族は微笑んでいるのである。
こうして、魔族侵攻によって始まった『ザナドゥ魔戦記』に最初の1ページが書き込まれたのである。
残念ながら、誰も彼もこの物語の結末を覗き見ることは出来ない。……しかし、登場人物はすべからく、物語の展開を書き換えることが出来る。
今後この物語がどのような展開を迎えるかは、ひとえに登場人物である契約者の手にかかっている――。
『【ザナドゥ魔戦記】魔族侵攻、戦記最初の1ページ』 完』
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担当マスターより
▼担当マスター
蒼フロ運営チーム
▼マスターコメント
猫宮烈です。
イルミンスール関連・イナンナ関連・その他描写と、監修を担当しました。
まずは、今回のシナリオに当たり、数々の不手際、誠に申し訳ございませんでした。
今後より精進し、円滑なシリーズ運営が行えるよう邁進していく所存です。
今回のシナリオの結果につきましては、リアクションの最後のページに示しました。
また、今回のシナリオで判明しました結果につきましては、リアクションの随所で示すとともに、可能なものについては特設ページの方に追記という形で反映していきます。
今回ご参加頂いた皆様には、記念アイテムとして『ザナドゥ探索マップ』をプレゼントします。
(記念アイテムの配布は、7月中旬を予定しています)
ザナドゥに忠誠を誓ったり加担した方、あるいは魂を捧げたりした方へは、称号を付与しています。
今後【ザナドゥ魔戦記】のシナリオに参加する際、称号持ちの方は魔族との交流が図りやすくなったり、既に魔族側に付いている前提でアクションをかけることができます。
魂を奪われた方は、【ザナドゥ魔戦記】シナリオで再び魂を取り戻すまでは、魔族に反抗できなくなります。
無理に反抗しようとすれば身体が動かなくなったり、意思を曲げられ、強制的に魔族側として振舞わされることもあります。
リアクション作成に当たり、寺岡志乃マスター、夜光ヤナギマスターには大変ご尽力頂きました。
この場を借りて恐縮ですが、お礼申し上げます。
今後シリーズは、各地を舞台にしたマスターシナリオへと展開していきます。
そちらの方もどうぞよろしくお願いいたします。
***
シナリオにご参加くださった皆さま、お疲れ様でした。夜光ヤナギです。
主に南カナン領主シャムスに関連する、南カナン戦の執筆を担当させていただきました。
至らない執筆者ではありましたが、お付き合いいただけたことにまずは感謝を。
ザナドゥに対するそれぞれの思いや、あるいはカナンというものに対する思い。
今回は、それぞれのキャラクターの抱くそんな心の動きにも触れられたような気がします。
それがこの『ザナドゥ魔戦記』でこれからどのように変わっていくのか。
そんなことを考えつつ、今後を楽しみにも思っています。
それでは、またお会いできるときを楽しみにしております。
ご参加ありがとうございました。
***
こんにちは、またははじめまして。寺岡志乃といいます。
今回、西カナン防衛と南カナン攻防戦・東カナン軍編とロノウェ軍編、そして橋頭堡の確保を執筆させていただきました。
地下世界の新天地ザナドゥ。そこを統べる四魔将、そして魔族たち。
ご参加いただきました皆さんだれもが、彼の地、彼の者たちとの邂逅に、胸を高鳴らせていたのではないでしょうか。
わたしのつたない執筆でそれを十全にお伝えできたかは疑問を残すところではありますが、少しでも多くの方が楽しんでいただけていましたなら幸いです。
今回、さまざまな方面での皆さんのご尽力の賜物として、橋頭堡は無事ザナドゥに築かれました。
このことにより、いよいよ次のシナリオからはカナンを、地上世界を飛び出し、ザナドゥを舞台として展開していきます。
はたしてそこはどんな場所なのでしょうか。四魔将は、どのような手で皆さんを待ち受けるのでしょうか。
そしてザナドゥを知り、そこに住む彼らと相対することで、皆さんは何を感じ、どのような思いを巡らせるのでしょうか。
それを教えていただくためにも、皆さんをご案内できる日を楽しみにしております。
ぜひ、またお会いしましょう。
それでは、また。