校長室
リアクション
● ギフトは動き出したが、それだけでイレイザーに対抗出来るわけではない。戦いには武器が必需品だ。そして、ギフトはいまや核となる意思が動き出し、自分たちにその制御を預けている。制御も武器も、自分たちがどうにかせねばならないということだった。 むろん、ギフトはそれを助けるためには助力は惜しまない。モニタに映る制御マニュアルをもとに、技術者として参加していた富永 佐那(とみなが・さな)が制御卓を半分は勘便りに弄っていた。 「見つけた!」 そしてようやく発見する。 それは巨大なエネルギー砲――あの、黒い月から降りてきたものを吹き飛ばした武器だった。 「義輝! エネルギー残量は!」 「まだ十分量残っている。問題ないぞ」 佐那の確認に、パートナーの足利 義輝(あしかが・よしてる)が頷きながら答えた。彼の見ているモニタにはエネルギー量が表示されている。しばらく眠りについていたとはいえ、どうやら劣化はほとんどしていないようだった。 「どうする? ギフトの自動制御に任せるか?」 「いや――こっちで照準を合わせます。黒い月からの塊は軌道が決まっていたからこそ自動でも当たったんです。本来は数秒のタイムラグが生じるものですよ。その間に避けられたらたまったものじゃありません」 佐那は軌道計算を瞬時に終えると、そう言って皆に確認の意味を込めて視線を配った。 「ましてや敵は水中に適応しているイレイザー。手動で誤差を修正します」 異論を唱える者はいなかった。 巨大なモニタに映るのは、イレイザーの姿。そしてそれらを戦う仲間たちだった。テレパシーで繋いだ探索チームからの通信を受けて、エネルギー砲の巻き添えを食らわないように仲間たちが戦域から離脱していく。 そして――ギフトの先端部から出てくる砲筒。 「――発射!!」 佐那が合図とともに引き金を引くと、爆発的な熱量のエネルギーが発射された。 ● そして、戦闘領域で戦っていた仲間たちが見たのは、水を裂いて走った粒子の線。水中であるにも拘わらず、それは形を一片も崩さずイレイザーの身にぶち当たり、そしてその身体を貫いた。 眩い熱の光が視界を覆い、イレイザーを焼き尽くす。耳を打ったのはエネルギー砲の音か、あるいはイレイザーの叫びか。 いずれにしても――光が全て消え去った後、残されていたのは塵になり、無へと帰したイレイザーの姿だった。 ● 水中から飛び出してきたエネルギー砲の姿と爆発を、小型船のメティスたちも見届けていた。そしてその後、しばらくして探索チームから連絡が入る。 曰く――『イレイザーを撃退した』と。 「良かった……」 その通信を横で聞いていた牙竜はそう呟いた。 そして、メティスは最後に通信相手――ルシアに状況の確認をした。 「今回も、多くの負傷者が出ましたね。やはり……イレイザーの力は強力でしたか」 その負傷者というのは、牙竜も含んだものだろう。それ以外にも、イレイザーとの戦闘で少なからず傷ついた仲間はいる。それらの仲間を思って、自然と口を出た台詞だった。 「クジラ型ギフトの力がなければ、どうなっていたことか。本当に……ギフトにはギフトには感謝ですね」 『ううん、ギフトじゃないよ』 と、そう言われて、メティスは訳が分からず顔で首をかしげた。 『クジラ船長だよ』 「……え?」 彼女はきょとんとしたまま、立ち尽くしていた。 |
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