空京

校長室

【神劇の旋律】聖邪の協奏曲

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【神劇の旋律】聖邪の協奏曲

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 カフェ・ディオニウス――。
 優雅に流れるクラシックの音色。
 芳ばしいコーヒーの香りに、安らぎを感じながら、天禰 薫(あまね・かおる)はふわあっと微笑んだ。
「ね、孝高。何だか二人でお茶をするって、何かデートみたいだね!」
 事件の終息と共に、カフェにいた人達の多くが帰っていった。
 トレーネは、寝室で休んでおり、シェリエとパフュームはまだ帰ってきていない。
「……あ、でも、お茶をするだけがデートじゃないから、違うのかな……」
 ストローでアイスコーヒーを飲みながら、薫はちょっと首を傾げた。
(デートだと……!? と言うか……やはり鈍いのか、天禰……)
 パートナーで恋人のはずの熊楠 孝高(くまぐす・よしたか)は、デートという言葉に一瞬ドキドキしたが、続く薫の言葉に、思わず肩を落とした。
「あれ、孝高、どうしてぐったりしているのだ?」
「いや、なんでも……」
 まあいい、今を楽しもう。そう思い、孝高は店内に目を向けた。
 落ち着いた雰囲気の、居心地の良いカフェだった。
(ある時は楽器を巡って戦い、ある時は共闘した三姉妹の店か……)
 三姉妹と繰り広げた戦いを思い出しながら、孝高もコーヒーを飲む。
 扉についた、鈴が音を立て、孝高と薫はそちらに目を向けた。
「たっ、だいまーーーー!」
 すっごい元気な声を上げて入ってきたのは、パフュームだった。
「だだいま、お腹すいちゃった」
 後から、シェリエも少し恥ずかしげな笑顔で入ってくる。
「お帰りなさい。お祝いの準備、出来てますよ」
 厨房から現れたのは、店を手伝っていた神楽坂 紫翠(かぐらざか・しすい)だ。
「オレ達の契約は今日いっぱいだからな。というわけで、いらっしゃいませ」
 ウェイターをしていたシェイド・ヴェルダ(しぇいど・るだ)が、2人に頭を下げて、席へと案内する。
「すぐに、ケーキ持ってきますね。それともお食事を召し上がりますか?」
 紫翠がそう尋ねると、シェリエ達が答えるより早く。
「お前は、また無理して。料理はもう済んだんだろ、休憩してろ。倒れるぞ」
 と、シェイドが引っ張って、紫翠を壁際の席に座らせた。
「ケーキが先!」
「うん、甘い物食べたいわ」
 パフュームとシェリエが笑顔でそう言い、バイトさんお勧めのケーキと、バイトさん特製ジュースを注文してきた。
「畏まりました。少々お待ちください」
 シェイドは軽く苦笑し、注文の品を取りに向う。
「イロイロ大変だったらしいな」
 客としてくつろいでいた夜薙 綾香(やなぎ・あやか)がシェリエ達に声をかけてくる。
「うん、お店守ってくれてありがとね!」
 パフュームがにこっと笑みを浮かべた。
「いや、私はないもしていない。手を貸せなくてすまなかたが、此方も此方でイロイロと大変でな」
「そっか、体調とか大丈夫?」
 シェリエが心配そうに聞いてくる。
「あ、いや、まぁ、アレだ。学生としての権利を謳歌している身としては、当然、義務も付随するわけで。まぁ、うん、此方もヤバかったのだ」
「お互い大変だったね」
 パフュームの言葉に、目を逸らしながら綾香はこくんと頷く。
 と、その綾香の足を、向かいに座るメーガス・オブ・ナイトメア(めーがす・ないとめあ)が軽く蹴った。
「素直に論文の提出期限がヤバかったから手伝えなかった、と言えば良かろうに。お前の技量ならば、何がしかの手助けも出来たろうにな」
「……メーガス、端的に言えばそうなるが、物事にはだな……」
 ごほんと、咳払いをして綾香は言葉を続ける。
「それに魔術師というのは傭兵でも戦闘屋でも何でも屋でもないぞ。騒ぎに首を突っ込んでまで魔術を行使する趣味は無い」
「うむ、そうか。ならば我からとやかく言うことではないな」
「はい、どうぞ」
 小声で話をしていた2人に、シェリエがコーヒーを出す。
 2人がいつも頼むブレンドだ。
「すまないな、疲れているのに。ああついでに、今回の騒ぎの顛末でも聞かせてくれないか?」
「うん、テレビの放送、再開されたかな!」
 パフュームが店内にあるテレビを付けた。
 契約者達の働きかけにより、多くの放送が止まっていたが、既に再開しているようだった。
 テレビには、現在の空京の様子が映っていた。
 石化された街の人々が、慎重に順番に治療されているようだ。
『買い物をしていたら、突然周りの人達が変になっていって……』
『外に出たら、石になっている人がいたり、怪我をしてる人がいたりで、もうびっくり!』
 女性二人(奥山 沙夢(おくやま・さゆめ)雲入 弥狐(くもいり・みこ))がインタビューに答えていた。
 その背後には、血痕の残る道が映っている。
『痛いっ、刺された……』
『傷は大したことないようだが、しばらく石像になっていたようだな……ん?』
 続いて映し出された、鑑 鏨(かがみ・たがね)が、蹲っている硯 爽麻(すずり・そうま)に手を伸ばして立たせたその時。
『あっ、きゃーっ』
『う、おっ!?』
 2人の服が、破けて、地面にはらりと落ちた……。なんと全国中継で、2人のヌードが映し出されてしまった。
 ちなみに、鏨は男だが、たまたま桃幻水を飲まされておりセクシー美女に女体化していた。
「ぐ、ごほっ」
 孝高は思わず、コーヒーを吹き出しかける。
 テレビ局は中継を中断し、一旦スタジオに切り替えていた。
「……大変な状況ですね。お2人もお辛い思いをされたのでしょうね」
 紫翠が心から三姉妹を案じる。
「うん、でも、でもね。すっごくいいこともあったよ!」
「そう!」
 パフュームとシェリエが顔を合せて、嬉しそうな笑みを浮かべる。
「パパとママが帰ってくるの!」
「お父さんとお母さんが、帰ってくるの!」
 二人は、同時に皆にそう報告をした。
「お帰りなさい」
 二人の声を聞いて目覚めたトレーネが、客席に顔を出した。
「トレーネ姉、起きて大丈夫?」
「お疲れさま、トレーネ姉さん」
 そう微笑む2人に、笑みを浮かべて近づいて。
 トレーネは2人に腕をまわして、抱きしめた。
「無事で良かったわ」
「うん!」
「よかった……」
 笑顔で抱きしめあう3人の姿に、店内にいる人々も安堵の笑みを浮かべていく。
 この安らぎの空間が、このままここに在り続けることを確信して。
「ご注文の品です、お嬢様方」
 シェイドがケーキと飲み物を持って、戻ってきた。
「いただきまーす!」
 テーブルに並べられるより早く、奪うようにトレーからとって、パフュームがケーキにかぶりついた。
「お行儀が悪いですわよ」
「お母さんが戻ってきたら、叱られるわよ〜」
 くすくす笑いながら、トレーネとシェリエもケーキと、お茶を戴いていく。

 テレビから流れる映像は、希望のある映像に変わっていき。
 店の中の雰囲気も、普段通りに戻っていく。

 カフェ・ディオニウスに。
 明日、あなたが訪れたのなら、美人三姉妹がとびきりの笑顔で、迎えてくれるだろう。

担当マスターより

▼担当マスター

川岸満里亜

▼マスターコメント

 【神劇の旋律】聖邪の協奏曲にご参加いただき、ありがとうございました。

 空京での犠牲者数については、詳しくは書きませんでしたが、少なくてもバルタザールと配下、及び守ろうとした契約者達の攻防で亡くなった人はいません。
 向ってくる者に手を出すことが出来ないという苦しい戦いでしたが、ご協力くださりありがとうございました。
 空京に訪れて、事件の対処に関わった方には、「【神劇の旋律】空京防衛功績者」の称号をお贈りしました。

 神劇の旋律の奏者として立候補し、人々を元に戻して下さった方には「【神劇の旋律】奏でし者」の称号をお贈りしました。
 こちらの称号をお持ちの方は、ストラトス・フルスコアの旋律を知っているということになりますが、神劇の旋律は危険な旋律ですので、外部で歌ったり、演奏したりするのは、お控えくださいませ。
 また、曲の心(女王に捧げる曲)を演奏に絡めてくださった方には「宮廷楽団員」の称号をお贈りしました(宮廷楽団員の立場を望んでいないことが明らかな方には発行しておりません)。この称号によって、行動が制限されることは特にありませんので、なるつもりはなかったのに、称号がついてしまった、という方もご安心いただければと思います。

 ディオニウス三姉妹の物語につきましては、こちらのグランドシナリオで終了となりますが、彼女達は今後も様々なシナリオに登場すると思われますので、見かけた際には、よろしくお願いいたします。
 ラストに出てきました「グランツ教」や「超国家神」につきましては、今後の展開をご期待ください!

 尚、今回のプレゼントアイテムは「予告状カード」になります。

 それでは引き続き、蒼空のフロンティアをお楽しみいただけましたら、幸いです。