校長室
リアクション
(駐車場の方にお願いします。今のところ落ち着いていますが、突然魔獣が現れる可能性もあります。院内までの搬送もお願いできますか?) ○ ○ ○ 水原 ゆかり(みずはら・ゆかり)は小型飛空艇で上空から状況を見ていた。 「そこの交差点にお願いします」 駐留軍にお願いをした後、深く息をつく。 彼女がした提案は、交差点を大型車両でふさぎ、炎上させて通れなくすること、だった。 また、放水車、消防車を動員して市民に対しての放水を行い進行を出来なくすること、なども。 『将棋倒しになったりしないよう、水圧には注意してるから安心して』 パートナーのマリエッタ・シュヴァール(まりえった・しゅばーる)からそんな連絡が入る。 彼女は消防隊員に協力して、放水を行っている。 また、氷術で濡れた地面を凍結することで、市民の進行をも阻んでいた。 ゆかりの目に、転んでいる市民達の様子が入る。 「怪我人が出てしまうだろうけれど……やむを得ない。市民は出さないように手を打っていかなきゃ」 人々の様子に胸を痛めながら、ゆかりは状況を見て回り、通信で知らせていく。 「お水、いかがですか? 喉が渇いたでしょう?」 ペルディータ・マイナ(ぺるでぃーた・まいな)は、施設の中に集められている市民にペッドボトルを差し出した。 だけれど市民達は、受け取ったものをそのままペルディータに投げつける。 「女王、女王、女王」 「通せ、通せ、通せ」 そう騒ぐが、彼らの足は縛られておりその場から動くことは出来ない。 「入るぞ」 声が響き、ドアが開く。 七尾 蒼也(ななお・そうや)が、女の子を連れて入ってきた。 「この子、魔獣に襲われていたんだ。傷は治したけれど、心は戻らなくて」 蒼也は悲しそうな顔をする。 「女王さま、女王さま、女王さま……ふふ、ふふふ……」 虚ろなめでいう少女は、とても可哀相だった。 避難の呼びかけも、優しい語りかけも今は人々に届かない。 「それじゃ、この子頼むな。多少宮殿が壊れても、市民は守らなきゃな。警察は市民を守ってくれないからな……」 そう呟きながら、蒼也は街へと戻っていく。 魔獣だけではない。警備に当たっている者が必要以上に市民を傷つけることがないよう、見回っていく。 「多少怪我させた方が結果的に大人しくなる。効果的だよ」 対照的にメシエ・ヒューヴェリアル(めしえ・ひゅーう゛ぇりある)は、宮殿を守ることが最優先と考えていた。 「一般市民は多少減ってもまた増えるが、女王はそういう訳にはいかないのでね」 そう言うと、共に対処に当たっていたエース・ラグランツ(えーす・らぐらんつ)が眉を顰める。 エースはメシエのその考えには賛同できない。 だが、一般市民を傷つけたくはないが、女王や代王に何かがあれば、無政府状態になりかねないし、シャンバラの衰退は勿論のこと、パラミタの崩壊も早めてしまう。 ロイヤルガードや軍隊が市民を攻撃するのは、政府への反感を招きかねないが、一市民の自分達なら『一般人の喧嘩です』で大事にならず済ませそうだとも考えて。 「アレらは野生動物と同じで効率など考えず突っ込んできているから、こちらに来ると生命が危険だと感情的に判らせた方が抑制できる」 そんなメシエの言葉に反論が出来なかったこともあり、エースは乗り気ではないながらも、魔法攻撃でメシエに協力をしていた。 「ほら、私達を避けようとしている。危険と感じてね。ま、避けさせないけど」 メシエはブリザード、ファイアストーム、サンダーブラストを連続で放っていき、市民を死に至らしめない程度に攻撃していく。 起き上がれなくなった市民は勿論、危険を感じた者も2人を避けて、別の方向から宮殿に向かおうとしだす。 宮殿に向かう小道にて。 「愚かなことはおやめなさい!」 技能で防御を固めてから、ネイジャス・ジャスティー(ねいじゃす・じゃすてぃー)は市民達の前に立った。 「……っ」 彼女は手を出さず、市民達を阻み通さない。 市民達が突破しようと集まったその時。 「これ以上はやめておけ! もし突破できても何もいいことはないからな」 ヤジロ アイリ(やじろ・あいり)が、毒虫の群れ、野性の蹂躙で毒虫と魔獣を呼び寄せ、市民達にぶつけた。 市民達はダメージを受けて、毒に侵され、崩れ呻いていく。 「宮殿に入ったら射殺……はあの女の妄言だろうけれど、武力で押し返えされるのは確かだろうだから。それに比べれば、カワイイもんだろ」 言いながら、ヤジロは市民達の中で攻撃魔法を使える者から、ワイヤークローで捕らえて皆から引き離していく。 「こんな卑怯な手を使う者の思惑通りには絶対いかせませんよ!」 ネイジャスもヤジロと同じように、ワイヤークローで攻撃能力の高い市民を、これ以上傷つけることなく捕らえて引き離す。 少しでも、宮殿にいる皆の負担を減らすために。女王とシャンバラのために。 |
||