空京

校長室

【神劇の旋律】聖邪の協奏曲

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【神劇の旋律】聖邪の協奏曲

リアクション

「ママ、うん、大きな岩見えるよ。あの先にいるんだねっ!」
 パフュームが母親からのテレパシーに答えたその時。
「フハハハ! これ以上先には行かせはしない!」
 白衣をまとい、眼鏡をかけた男が立ち塞がった。
 警戒していた一行は、接近に気付いていたため、防御態勢は整っていた。
 男の後ろから表れたのは明らかに生者。
 バルタザールと共に、空京にいた者達のようだった。
「ククク、ここは我ら秘密結社オリュンポスが引き受けよう! バルタザールの部下よ、先に行っているがいい!」
 白衣の男――ドクター・ハデス(どくたー・はです)の言葉がそれを肯定する。
「なあに。契約者どもを倒し、すぐに追いついて見せよう」
 バルタザールの部下と思われる者の他に、ハデスが連れてきた戦闘員、特戦隊、影武者も岩陰からぞろぞろと現れる。
「あらま、随分と湧いて出てきたわね」
 言いながら、シオンは司を押した。
「折角パワードスーツ着てるんだから頑張って戦いなさいよ♪」
「パワードスーツが破損したら……とか言っている場合じゃないですよね」
 司は覚悟を決める。
 更にシオンはこう指示を出しておく。
「場合によっては話を聞く必要があるかもしれないから、とりあえず弱らせて捕まえなさいね♪」
「捕まえるといっても、こう人数が多いと……あの白衣の男性は捕まえた方がなんだか厄介な気もするんですよね」
 パワードスーツの中で、ひそかに司はため息をついた。
「パフュームさん……友人のあなたとは、できれば争いたくなかったのですが……」
 ハデスのパートナー、魔鎧のアルテミス・カリスト(あるてみす・かりすと)は、何度も楽器を巡って争いながらもパフュームに対しては親しみを感じていた。
 主であるハデスの命令と、友情のはざまで揺れ動きながら、剣を抜いた。
「今までとは違うよ。今回はママの命がかかってる。友人と思ってくれるなら、道を開けて」
 パフュームの切実な言葉に、アルテミスの瞳が揺れる。
「私はパフュームちゃんを守るよ、友達だから」
 クレアがパフュームの前に出て、アルテミスと目を合わせる。
「私の剣は友を助けるためのもの。我が剣にかけてあなたたちの好きにはさせない」
 剣を向けて、そう宣言するクレア。
 アルテミスは胸に痛みを感じた。
「背中は任せてください。あなたは母親になんて声をかけるのか、そのことだけに集中してください」
 涼介はパフュームに背後からそう声をかける。
 パフュームは緊張した面持ちで頷いた。
「まずは、貴様の手並みを見せてもらおうか」
 バルタザールの部下と思われる強面の男が、ハデスにそう言った。
「フハハハハ、とくと見るがいい! さあ行け、戦闘員たちよ!」
 バッとハデスはパフューム達へ手を向ける。
「黒薔薇の魔導師リリ・スノーウォーカーの名において命じる。来たれ! ロードニオン・ヒュパスピスタイ(薔薇の盾騎士団)よっ!」
 対抗し、リリは全身が鋼鉄の軍勢を召喚する。
「この場は私達に任せてパフュームは皆と先に行くんだ。母に会い給え」
 ララはレーザーナギナタを手に、前に出る。
「ふむ、あの男も、グリューネル・ディオニウスの居場所を探しているということだな」
 ブルーズは後方にいる強面の男に目を向けながら、魔人のランプから魔人を呼び出して、後方のバルタザールの部下の方へ差し向け、攪乱する。
「あの男――気になるね」
 天音はHCの情報を確認しながら、強面の男を注意深く見ていた。
「では、俺達は突破口を開きましょう」
「私達に任せなさい」
 真人は氷雪比翼で氷の翼を生み出し、ヴァルキリーのセルファと共に、バルタザールの配下の元に飛ぶ。
 そして天の炎で、炎を降らせ、サンダーバードとフェニックスを召喚。
 魔人に隊列を乱されていた敵が、激しい雷と炎に包まれる。
「はあっ!」
 セルファは、魔法攻撃を躱した者達を、ソードプレイで薙ぎ払い、道を開いていく。
「今です、走り抜けてください!」
 炎が治まり、焦げた道が見えると同時に、真人が叫ぶ。
「行って、パフュームちゃん!」
 クレアは賢騎士の剣を振るい、周囲の敵を斬り倒していく。
「ありがと、危なくなったら、ちゃんと逃げてねっ!」
 パフュームはそう言って、仲間と共に駆けていく。
「振り向かないで走ってください。背中は守ると言ったでしょ?」
 追ってくる敵を、涼介がサンダーバードを召喚して退ける。
「うん!」
 パフュームと共に走り、彼女が仲間の作った道を通り抜けるまで、敵を退け続け。
「お母さんが待ってるぞ」
 そう、パフュームに言うと、涼介はその場に残り、バハムートを召喚。
 多くの敵が炎に包まれる。
「ママと会ったら、戻ってくるからっ」
 パフュームは言われた通り、振り向かずに駆けて行った。
「この先に、貴方達が通れる道はありません」
 真人は、空から追おうとする有翼種の敵の前に回り込んだ。
 そしてサンダーブラストを放つ。
 更に、天の炎をも。
 敵を倒すというより、行く手を阻む為に広範囲魔法を連続で放っていく。
「追ってください。目的の人物の元に導いてくれるはず」
 敵の魔術師の女がそう言い、魔法で対抗して道を作っていく。その道を強面の男達が走り抜ける。
「道を作りたいのなら、私の全力受けてみなさい!」
 セルファがバーストダッシュで魔術師の女に急接近、そしてランスバレスト。
 魔法を放ちながら、女は倒れた。
「オリュンポスの騎士アルテミス、行きます!」
 揺れる心を抑え、アルテミスが飛び掛かってくる。
「君をパフュームの友とは思わない。全力で倒す」
 ララがレーザーナギナタをアルテミスに放つ。
「そうですね……彼女の友達にこうして剣を向けて本気で挑む私はもう……」
 悲しげに言いながら、アルテミスはララの攻撃を躱して、魔剣ディルヴィングをララへと叩き込む。
 ララは加速ブースターで辛うじて避けると、アルティマ・トゥーレで、アルテミスを攻撃。
「……っ。あ……!」
 ダメージを受けたアルテミスは手に軽い違和感を感じた。
「指輪、似合ってないから外してあげたわ♪」
 ララとの戦いに集中している彼女の指から、シオンがサイコキネシスでデスプルーフリングを外したのだ。
「くっ」
 拾う余裕はない。
「大人しくしていてもらおう」
 ララが機晶爆弾を投げつける。
 アルテミスは自由に動かない体で、必死に盾を構える。
 そんな彼女の側面に回り込み、ララは強烈な一撃を繰り出し、アルテミスを倒した。
「ほら、ツカサもちゃんと働きなさいよ♪」
「やってますよ。前線には出られませんが……」
 シオンの側で、司はアシッドミスト、真空波でハデスの差し向けた戦闘員達の武具を狙い、戦闘能力を削いでいた。
「ゆくぞ、一気に倒せ!」
 リリが、不滅兵団に命じる。
「させるか! 撃て!」
 ハデスが、大砲を撃つよう、部下に命じる。
「止めさせていただきます」
 司が真空波を放ち、発射しようとした部下を弾き飛ばした。
「部下と共に眠れ!」
 ララが加速ブースターでハデスに急接近。
「フ、ハハハハハ。さらばだ!」
 退却しようとしたハデスだが、その指には既にデスプルーフリングはなく。
「モーション大きいし、隙だらけだし♪」
 シオンにスキルも封じられていた。
「うぐああああああああ」
 ララの強烈な一撃に、叫び声をあげてハデスは倒れた。

 パフュームは、協力者共に彼女の母、グリューネルの元へと駆けていた。
「!!」
 そんな彼女達の前に、凄まじいスピードで、強面の男が回り込んだ。
 隣には、剣士の男の姿があった。
 バルタザールの部下数人も、足止めに動いた仲間達を振り切って、こちらに向かってきている。
「くく、感じるぞ。この近くに目的の女がいるようだな」
 強面の男が笑みを浮かべ、細身の剣を抜いたかと思うと、パフュームに迫った。
「この男は俺に任せろ」
 強面の男の剣を受けたのは、レギオンだった。
(この男、どうも気になる……。ステージで指揮をしていた男だよな。何故、バルタザールはこの男をこっちに向かわせた?)
 強面の男の細身の剣は目にもとまらぬ速さで繰り出され、レギオンの体を傷つけていく。
(……殺さないよう最善を尽くすが、加減が上手くいくか……)
 迷いながら、レギオンは剣を払い直撃を避け、毒を塗った剣で強面の男を攻撃する。
 レギオンの一撃は、強面の男の腕を軽く裂いた。
「さあ、行きますよ」
 白竜がパフュームの腕をとって、走る。
 剣士が、轟雷閃を放つ。
「あた……っ、あいや、平気平気」
 パフュームを庇った羅儀は、一瞬顔をしかめるが、すぐに笑みを見せた。
「君への攻撃は全部代わりに受けてあげるから、大丈夫」
 羅儀は、腕を広げて、彼女を守りがなら後に続く。
「早くお母さんを助けてください」
 丈二はその場で銃剣銃を構えた。
「うん。ありがとう。みんな、ありがとうっ」
 パフュームは礼を言うと真剣な表情で、母の力を感じる場へと走っていく。 
「あなたの相手は、ヒルダがッ」
 剣士の前には、ヒルダが飛び出した。
 高周波ブレードを手に、バーストダッシュで接近し、ソニックブレード。
 剣士は紙一重で躱し、長剣をヒルダの脇に叩き込んだ。
 ヒルダは斬られた方向へと飛び、負傷を抑える。
「邪魔だ」
 男もヒルダの元へと跳び、彼女の肩に剣を振り下ろす。
「邪魔しているのは、あなた方の方です」
 丈二が銃剣銃でスプレーショット。
 男の剣の軌道が変わる。彼の剣は、ヒルダの服を軽く裂いた。
「そんなにここの住民になりたいの!?」
 ヒルダが大地を蹴って、男の胴を斬り裂く。
「終わりです」
 丈二がシャープシューターで狙いを定め、とどめの一撃を放った。
 弾丸が男の胸を貫いた。
「そのガキをよこせ。女の居場所に案内してもらおうか!」
 血を飛び散らせながら、強面男は、レギオンに攻撃を続けている。
 手加減できる相手ではなかった。
 レギオンは歴戦の武術で立ち回り、強面の男の弱点を見定めていく。
(速いが隙が多い!)
 繰り出された剣を躱さず踏み込んで、レギオンは強面の男の腹を貫き、即座に抜く。
 動きの鈍った強面の男の頭部に刀を振り下ろす――。
「やりすぎーっ!」
 途端、カノンが歴戦の魔術で、2人を吹き飛ばす。
「ご、ごめんっ。このままじゃ殺しちゃうと思って」
 カノンはすぐにレギオンに近づいて、歴戦の回復術で彼を癒した。