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リアクション
■世界樹を救え!・2
「目立つのはオレだ!
オレのステージを聞け!」
【C級四天王】吉永 竜司(よしなが・りゅうじ)が、
世界樹たちに呼びかける。
「こんなところにいても枯らされるだけだ!
オレの名前は吉永竜司。パラ実分校の超イケメンだ!
一緒に分校に来い!
元気が出るように歌を歌ってやるぜ!」
オレと野球やろうぜー
ぼえーぼえー
ディーヴァの魂を揺さぶる歌が、
世界樹の森にこだまする。
しかし、竜司は大変な音痴である。
だが、そのせいで、余計に目立ち、
世界樹たちは動きを止めていた。
「おい、てめぇらも歌え!」
舎弟たちも、一緒に歌い始める。
ウオー ウオー
「人質だか樹質だか知らないけど、
それで脅迫とかね、やり方が気に入らないね」
ブラッディ・ディバインへの怒りをあらわにしつつ、
上永吉 蓮子(かみながよし・れんこ)は、
ヒールで怪我をしている世界樹を治療する。
竜司の歌や、蓮子の治療で、動きを止めている世界樹に、
ブルタ・バルチャ(ぶるた・ばるちゃ)が人の心、草の心で語りかける。
パラミタの世界樹たちや大世界樹とは、なかなか上手くはいかないだろう。
世界樹がまだ“特別な存在”となる前だからか、少しは意思の疎通が出来たようだ。
「ボクたちはキミたちを救いに来た。
パラ実分校に一緒に来ないか?
ボクらと契約したり、
クリスマスには飾り付けをして一緒に遊ぼう」
(これで説得に成功し、契約に成功すれば、
上層部もパラ実分校に一目置かざるを得ないはずですわ)
ブルタのパートナーステンノーラ・グライアイ(すてんのーら・ぐらいあい)は、
そのように考えていた。
できれば、ウゲンにもパラ実分校の活躍を見せつけ、
仲間にしたかったが、ウゲンはここにはいない。
ブルタは、ドッグズ・オブ・ウォーの傭兵団と、
ハンニバルの戦象で、
世界樹を移動させる用意もしている。
真面目な説得に、世界樹たちに動揺が走る。
「なに、本当に、
てめえらを助けるつもりがあるのか、だと?
当然じゃねえか!
オレは超イケメンの吉永竜司様だぜ!
約束を守ることと、舎弟をかわいがることじゃ有名なんだ!」
意思を送ってきた世界樹に、
竜司がうなずく。
パラ実分校に移動を同意する意思を送ってきた世界樹を、
【パラ実世界樹救助隊】の【S級四天王】国頭 武尊(くにがみ・たける)が、
輸送準備で迎える。
「よし、世界樹の根や幹を傷つけないように、気をつけて掘り起こすんだ!」
ミニショベルカーを運転しつつ、
舎弟たちやドッグズ・オブ・ウォーの傭兵団と一緒に掘り起し作業を開始する。
シーリル・ハーマン(しーりる・はーまん)は、
ゴーレムたちを操って、
掘り起し作業を手伝わせる。
「世界樹を輸送のために寝かせる作業はゴーレムに行わせます。
人力での危険作業は避けるべきですからね」
また、空飛ぶ魔法↑↑で、
世界樹を少しだけでも浮かせることで、
シーリルは、世界樹の輸送作業の補助をする。
「安心しな、
仲間がパラ実分校のほうでも準備をしてくれている。
君たちが無事に移植できるようになっているはずだ」
武尊が、世界樹たちに呼びかける。
世界樹たちも、それを聞いて、幾分安心したようだった。
きちんと傷つけないように配慮しながら輸送準備をしているだけあって、
抵抗して攻撃されるようなこともなく、
パラ実生たちは、輸送準備を着々と進めていく。
■
そのころ、パラ実分校では。
弁天屋 菊(べんてんや・きく)が、
農場予定地の近くに、
世界樹本体の根元を埋めるための穴や、
根を広げるための四方八方に伸ばした溝を掘るという、
土地の整備を行っていた。
「肥料用意したりほうがいいんだろうけど、世界樹の肥料ってなんだ?
ラクシュミにでも聞いて見ようかね」
ガガ・ギギ(がが・ぎぎ)が、
世界樹移植のための知識を、知っていそうな人から集めていた。
とはいえ、世界樹についての知識を持っている者はなく、
もし、そうした存在がいるとすれば、
世界樹の守護者の役割を担っている者だろうということだった。
例えば……エリュシオン帝国のユグドラシルの整備を行っている“樹隷”とか。
しかし、エリュシオンで神聖視されている特別な存在をニルヴァーナまで借り出せる見込みは薄そうだ。
まあ、森で元気に育っていたのだから、それなりに適当でも大丈夫そうだが。
「農地に日陰を作らない位置、
でも休憩時に木陰として利用できるのが理想だね。
なるべく水はけがよくなるよう、整備もしないとね」
菊は、農作業を続ける。
■
こうして、菊の用意していた場所に、世界樹の輸送が開始されたが。
「ヒャッハー! 世界樹でも愛してやれる男だぜ俺はァ〜!
植物だけに求婚(球根)だ!」
南 鮪(みなみ・まぐろ)が、
モヒカンゴブリンたちと土器土器 はにわ茸(どきどき・はにわたけ)を連れて、
突っ込んできた。
「おまえらロリショタ世界樹は、
創世学園のほうがいいだろ!
初等部もあることだしなァー」
パンティーやモヒカンを世界樹にかぶせつつ、
人の心、草の心で鮪が訴えかける。
苗くらいの大きさの小さな世界樹をスパイクバイクにくくりつけた
スパイクリヤカーに載せて、どんどん拉致していく。
「樹が相手だけに根回しで
大世界樹に世界樹をちょっと分けてくれんか交渉したかったが、
さすがに無理みたいじゃのう。
まあ、細かいことは気にせんでええのう!
世界樹をゲットできればわしらも建国余裕じゃのう!」
はにわ茸は、
世界樹周辺の土も適当に集めて、リヤカーに載せる。
「肉体労働は面倒じゃが、
これも世界樹のためじゃ!」
「ヒャッハー!
パラ実農業科の俺が覚えた、
パラ実式農法が真価を発揮するときだゼェー!」
どさくさにまぎれて世界樹の移送をする鮪だが、
かどわかされた小さな世界樹も、
創世学園に行けば安全だろう。
「まあ、あっちはあっちでほっとくか」
武尊はそうつぶやいて、作業を再開したのだった。