空京

校長室

創世の絆第二部 第一回

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創世の絆第二部 第一回

リアクション


■ウゲン

(ウゲン様が生きておられた……)
ナンダ・アーナンダ(なんだ・あーなんだ)は、
呆然としながらも、ウゲン・カイラス(うげん・かいらす)の後を追った。
(ボクはウゲン様に超霊の力を与えられ、ウゲン様のためにパラミタを守る人々と戦った。
そして放校されたが、今も後悔していない。
ウゲン様の力になれなかった事は今も心残りなんだ。
ウゲン様の心の闇は深い。ボクには計り知れない。
だけど、ボクはウゲン様の力になりたい。
もう一度その機会を与えられるのならば……)
そう願う、ナンダは、
ふらふらと、ウゲンの前に現れる。
「おひさしぶりです」
「ふぅん、君か」
ウゲンは、片目を細めて、
ナンダを見やった。
「それ、まだそのままなんだね。
まあ、別にたいしたことじゃないだろうけど?」
身体の一部が怪物化したままのナンダを見て、ウゲンが言った。
これは、かつてウゲンの与えた超霊の力による副作用だった。

「放校された後、ナンダ様と各地を転々としておりました
自分たちのした事に後悔はしておりませんが、
ナンダ様のお元気な姿が見られない事だけがマハヴィルにとっては辛い事でございました」
マハヴィル・アーナンダ(まはう゛ぃる・あーなんだ)の言葉に、
ウゲンが笑む。
「それは、面白い感性だね」

(ウゲン様は今、この世界についてどう思っておられるのだろう。
再び破壊を望んでおられるのだろうか……。
ボクは……ウゲン様には違う道を見つけて欲しい)
しかし、今は三賢者と名乗る者たちが、ウゲンとともにいる。
その存在が、ナンダにとっては気になるものであった。
「あの、三賢者とは――」
「俺がナラカを漂った時の知り合いさ。
それぞれ自分たちの大陸の崩壊を防げず、ソウルアベレイターになった負け犬たちだ」
ウゲンは嘲笑するように言って、ナンダを置いて行った。
それでも、ウゲンの行動を見守り続けること。
それがナンダにとっての目的だった。
それは、突き放されたとしても、変わりなく、
ウゲンの後を、ナンダはただ、ひたすらついていった。
それを、特に、ウゲンは振り払いもしなかった。

(復活したのは微妙なものを感じるけど、
立ってる者は親でも使え方式で利用して利用されてなのかねぇ?)
クリストファー・モーガン(くりすとふぁー・もーがん)が、
ウゲンに問う。
「質問と頼みがある。
お礼は夜の相手でもいいよ」
「別に、夜の相手とかいらねーし」
ウゲンが肩をすくめる。
「じゃあ、聞かせて。
三賢者とはどういう知り合いなの?」
「こいつら、ナラカでちょっと構ってやった時から、妙にまとわりついてたんだよ。うぜー」
ウゲンが三賢者を冷ややかに見て言う。
「つれないよウゲンー」
「その内、同じようなものになるだろー?」
「仲良くしよーよー」
「ああ、うるさい」
「……だろうね」
クリストファーは、その様子を見て苦笑した。
「じゃあ、一緒に記念撮影取らせてくれる?」
「何の記念だよ」
「入学祝い、とか?」
「却下。あ、虫唾」
ウゲンに断られたため、クリストファーは記念撮影は断念した。
「ボクからも質問がある」
クリスティー・モーガン(くりすてぃー・もーがん)が、
進み出て問う。
「シャンバラ刑務所を出てきたのは、
学生刑事か何かそんな役割で、
刑期を減らす代わりに仕事をしてるのかな?」
「別に、そんな話はないよ。
あの刺青ハゲはどんなつもりか知らないけど、僕は僕で好きにやらせてもらう。
まあ、刑務所での話し相手もいなくなったし、
ニルヴァーナで暇つぶしがてら、“あいつ”が来るのを待つのも悪く無い」
ウゲンの言っていることに特に嘘は感じられないが、
まだ、何か企んでいるのは確かなようだった。

「ウゲンおにーちゃんは妹萌えだもんね!」
牛皮消 アルコリア(いけま・あるこりあ)が、
現れ、いきなり、そう宣言した。
「かなちゃんはツンデレ妹か、見慣れましたね。正直、ガッカリしてるんだ」
夏來 香菜(なつき・かな)のことをディスりつつ、
アルコリアがウゲンに言う。
「つまり監獄で死体だった間に、
看守に何度もぶッ挿されて、
挿すのに目覚めたので、
お中元も終わったようなこの時期にギフトにブライトなんですね、わかってます」
アルコリアの下ネタ発言に、
パートナーのシーマ・スプレイグ(しーま・すぷれいぐ)がため息をつく。
「こいつは……」
「なにそれ、まだ妹ごっこしてるの?」
【ドージェの妹がこんなに可愛いわけがない】と恐れられたアルコリアの発言に、
ウゲンが口の端を吊り上げる。
「なるほど。呼び方が気にいらないと……。
にぃに! ウゲンにぃに! にぃにーーっ!」
手近な大蟲を捕まえて、
アルコリアが百獣拳を叩き込む。
「なにその技」
「センザンコウとカモノハシとコビトカバの力を借りてみました!」
「意味わかんないし」
かわいらしい仕草をしてみせたつもりのアルコリアにウゲンが言う。
「マイナー動物とか、彼女わかってるよね?」
「ひゅーひゅー」
「マイナー趣味妹萌えなの?」
はしゃぐ三賢者に、アルコリアが言う。
「三賢者……テレポート……」
顔を伏せたアルコリアが、いきなり顔を上げて叫ぶ。
「死体だったにぃにに好き放題してたんでしょ、いやらしい!!
賢者モード! 賢者モードなの!?」
「いやーそれほどでも」
「俺らを褒めるなんてわかってるじゃん」
「俺ら超マブダチだもんね!」
「そんなわけあるか」
ウゲンの回し蹴りを、三賢者は「きゃっ」と言って逃げた。
「まあ、おまえが妹ならそれなりに面白かったかもな」
アルコリアの奇行に、ウゲンがニヤニヤする。

「つまり、これは創世神話ね!」
マリー・ランチェスター(まりー・らんちぇすたー)が、
いきなり会話に参加してくる。
「洪水で兄妹が生き残り結婚して大地と人類を誕生させる。
兄が大樹を回りながら妹を追いかけ求婚。
最初の子どもの出産には失敗し、肉塊を生むが、
それが壊れ人類が誕生、と……」
マリーは解説をする。
「つまり、三賢者の言う妹萌えとは、創世神話のことだったのよ!」
「な、なんだってー」
棒読みでアルコリアが言う。
「ねえねえ、
ウゲンくん、香菜ちゃんを見て『期待ハズレ』と言ってたのは、
キミ、神になりたいの?」
ローリー・スポルティーフ(ろーりー・すぽるてぃーふ)が、
ウゲンに問う。
「僕はすでに神だけどね。
香菜が期待はずれなのはつまんない奴だからだよ。
力の使い方がわかってない奴は本当にがっかりだね」
「じゃあ、
そろそろ香菜ちゃんの本名を教えてくれてもいいんじゃないかな?」
「あいつは『ドマ』だよ。誰にとっても、もう何の役にも立たない名前だけどね」
ウゲンはあっさりと教えてくれた。
「あらら。個人的に『ニマ』かぶりを期待してたんだけど」
ローリーが言う。
「ニマ。彼女も血縁みたいなもんだ。狭い世界だったからね」

「それよりニル子、ギフトの居所は突き止めたのか?」
「あぅ、わかんないです……」
「つっかえねぇ」
ニルヴァーナの地祇 ニル子を小突くウゲンに、アルコリアが言う。
「ウゲンにぃに、妹はロリがいいの!?」

そこに、度会 鈴鹿(わたらい・すずか)が割って入る。
「ウゲンさん、あまりニル子さんを苛めないで下さいね」
「ほら、こっちにおいで」
織部 イル(おりべ・いる)に手招きされて、
ニル子はとことこと近寄る。
「ほほほ、ニル子殿は随分純真なようじゃ。
じゃが、無理は禁物じゃよ。
どれ、妾がおいしいバナナを剥いて進ぜよう。
これを食したら、もう少し辛抱してくりゃれ。
無事作戦を終えたら、残りのバナナをのんびりと味わおうではないか」
「おいしいです」
イルにバナナをもらったニル子はにこにこする。

「……でも、良かったです。
ウゲンさんにこんなにお友達が出来て」
三賢者を見回し、鈴鹿が微笑む。
「君、冗談が壊滅的に下手だって言われない? あるいは根性が捻くれてるね」
ウゲンは吐き捨ててギフト探しに戻っていく。
鈴鹿は、特に気にした様子もなく、微笑を浮かべたままで、
ニル子の護衛を続けた。

「ウゲンさんもお友達ぃ……」
ニル子は何かしら覚えたようだった。
「お友達ってなんですかぁ……?」