空京

校長室

創世の絆第二部 第一回

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創世の絆第二部 第一回

リアクション

 南の森には深い霧が立ちこめていた
 回廊からに向かった者たちは、隊を成すでもなく各々の興味と関心に従って深い森の中を探索していた―――
 と言えば格好は良いのだが―――
「巫女さん……巫女さんん……巫女さんギフトぉお!!」
 坂下 鹿次郎(さかのした・しかじろう)は己の欲望全開で探索を行っていた。パートナーの姉ヶ崎 雪(あねがさき・ゆき)だって負けてはいない。
「巫女さんなんて面白くないわ、美味しくもないし。ネギにタマネギ、バナナにたくわんでも持っているなら話は別ですけど」
 すっかりさっぱり何の話をしているのか不明だが、とりあえず彼女は美味しいものを探しているようだ。
「巫女さん……巫女さんん……巫女さんは何処でござるぅう?」
 器用にアカガネの上に直立して目を血走らせて生え立つ枯れ木の森のそこを見回していると―――
「ん?!! あれはなんでござる」
 視界の先、森の奥。一層に霧が濃くなっているその中に人の影が動いているのが見えた。
「巫女さんに違いないでござる!」
「あれは……食べ物ではありませんね」
 鹿次郎が急いで慌てて駆け寄ると、その人影に何者かが襲いかかった
「ふっ!!」
 人影の頭上から藤原 優梨子(ふじわら・ゆりこ)が『真空斬り』を放つ。人影はそれを後方へ退いて避けたが、それこそが優梨子の狙い。
「いただきDEATH!!」
 仕込んでおいた『ナラカの蜘蛛糸』が人影の首を絞め斬―――
「なっ……」
 人影の左腕から何かが噴出……いや、巨大な顔が飛び出し、その口で包囲糸を噛み切った。
 人影はすぐに枯れ木の影に、そして濃い霧の中へと姿を消した。優梨子はすぐに追ったが、正面から「凍気の弾」が飛んできて、それを避けるために一時足止め、気付いた時には人影の気配は消えていた。
「うまく逃げられたな」
 宙波 蕪之進(ちゅぱ・かぶらのしん)が笑いながら言う。「どうみても首は胴体に付いたままだったぜ」
「えぇ。殺気も消えたわ。もったいない」
 あと一歩で「新たな干し首素材」が手に入ったというのに。
「追うかい? それとも仕掛けるかい?」
「そうね……」
 どんな生き物が居るか分からないし、そもそもこの森に生き物が居るかも分からない。さっきの人影を追う方が早いような気もしたが、
「罠にしましょう。さっきの方なら戻ってくるような気もしますし」
 優梨子は再び『ナラカの蜘蛛糸』を木々の間に通して仕掛けを作ってゆくのだった。
 ちなみに先程の人影……霧が深くて姿形が見えづらいということもあるのだが、実は黒衣を纏っていたために影のように見えただけなのだ。正体はエッツェル・アザトース(えっつぇる・あざとーす)、パラミタでは「仮面をつけた異形」として噂になっている怪物である。
 普段から所構わず誰彼構わず襲いかかるモンスターだが、なぜか今日は制御役である緋王 輝夜(ひおう・かぐや)も連れていないために、もう、やりたい放題だった。優梨子の奇襲を回避した後も、すぐに次の獲物を探しに森の中をさまようのだった。
「なっ……なんでござるか、あれは……」
 巫女さんを探していた鹿次郎が、とんでもない物を発見した。
 目の前で優梨子エッツェルのバトルが始まったとき、「関わらぬが吉」と一目散に明後日の方向へ駆け出した。アカガネに引き返すことも忘れて、霧の中をガムシャラに駆け抜けた先に―――
 広大な海が現れたのだ。
 はじめは湖かと思ったが、弱々しくも打ち寄せる波がそこが海であることを物語っている。そしてその先、少しばかりの沖合にソレはあった。
 海面に生えた尖角。
 それはまるで海に沈むピラミッドの先端のようだった。