空京

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創世の絆第二部 第一回

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創世の絆第二部 第一回

リアクション



第三世代機


 北ニルヴァーナの探索から数日後。
 創世学園、イコン整備場――。
 
「まず、言えるのは『第三世代機が第二世代機の性能を全て上回る』というわけではない、ということです」

 長谷川 真琴(はせがわ・まこと)は、技師たちを前に説明を続けていた。
 第三世代機の開発メンバーとして天御柱学院から“第三世代機のプロトタイプ”と共にニルヴァーナへ渡っていた。
 機体は追々搬入されてくるため、今は仕様について技師たちに伝えているところ。
 
「第三世代機の最大の特徴は、ツインリアクター・システム。
 イコンの動力炉である機晶リアクターを二基搭載し、これを一基ずつ交互に稼働させることによって、稼働時間の問題を解消しています」
「従来のイコンではリアクターのエネルギー生成ペースの限度を超える消費を行った際に、一時的にエネルギー切れとなってしまっていたわ。
 これが解決された形ね」
 
 イーリャ・アカーシ(いーりゃ・あかーし)が補足を行う。
 彼女もまた、真琴らと同じように第三世代機プロトタイプ運用チームに参加していた。
 真琴は技師たちへと視線を返し、続けた。

「ツインリアクター・システムではトリニティ・システムと違い、相乗効果は生まれません。
 これが第三世代機の性能が単純に第二世代機を上回るわけではないということの理由です」
「それにジェファルコンやプラヴァーなんかに比べて、機体もデカイ」

 説明を受ける技師たち側の一番後ろの椅子。
 足を組んでいたクリスチーナ・アーヴィン(くりすちーな・あーう゛ぃん)が言う。
 イーリャたちの傍でアシスタントを行っていたジヴァ・アカーシ(じう゛ぁ・あかーし)が、機晶スクリーンに広がっていた数字を切り替え、クリスチーナの言葉はイーリャが受けた。

「機晶リアクターを二基搭載する都合上、多少の大型化は避けられなかった。
 見ての通り、機動性はジェファルコンなどに劣るわね。
 ただ、長くネックとなっていた機晶リアクター切り替え時に生じるオーバーロードの問題が、ニルヴァーナで得られた新しい技術によって解決されていて、結果的に高エネルギーを必要とする大型の武装も使い易くなるわ」
「例えば、最近、創世学園都市で開発された艦載用大型荷電粒子砲とか」
「そして……地下遺跡で発見された“膨大なエネルギーを必要とする特殊なギフト”に関するデータ。
 まだ、このギフト自体は見つかっていないけれど、これに対応できるシステムも、急ぎ、組み込まれています」

 真琴はやや真剣な面持ちを強め、続けた。

「ギフトそのものが無いために実証は行われていませんが、データで示された量のエネルギーを出力した場合、このツインリアクターが保つかどうか……」
「それでも、これからの戦いには、きっと第三世代機によるギフトの使用が必要となるわ。
 早く実証実験を行いたいところだけれど……こればかりは、ニルヴァーナ探索の成果を待つしかないわね……」
 
(パビモン ミラボーが地下遺跡の隠し部屋で入手したデータに示されていた、まるで、このイコンの存在を想定したかのような、生身では到底扱う事の出来ない“特殊なギフト”の仕様……)

 話は、やがて専門性を増していく。
 新たな技術の運用に関われる喜びと、言葉にするほどに感じる少しの違和感とを持ちながら、真琴は技師たちへの説明を続けていった。
 
 じきに、回廊を渡ってきたプロトタイプがここへ搬入される。