校長室
終焉の絆
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ミルザム・ツァンダ選挙事務所にて ミルザム・ツァンダ(みるざむ・つぁんだ)の選挙事務所にて。 白砂 司(しらすな・つかさ)と サクラコ・カーディ(さくらこ・かーでぃ)は、 裏方として事務仕事を手伝っていた。 「思ったよりも多くの書類整理をする必要があるな。 2024年だというのに、FAXを使っているのか……?」 「意外とローテクですよね。 でも、こーいうのは確実性が大事なんですよっ」 司に、サクラコが笑顔で言う。 「ああ。事務仕事でも、警備員でもなんでもするつもりだったからな。 文句はないさ。 俺は、応援演説などするガラでもないしな」 司は、来客者にお茶くみをしているサクラコを見て思う。 (サクラコにも応援演説などさせたいと思わん。 余計なことを言うだろうからな) 「……どうしたんです? 私だって、お茶くみくらいちゃんとできるんですよっ」 サクラコが、パートナーの視線を感じて、 口をとがらせてみせる。 「いや、なんでもない。 それより、今の人たちは?」 「ボランティアで選挙活動を手伝ってくれる方々だそうですので、丁重におもてなししました」 「そうか。ますます忙しくなっていくな」 司はうなずくと、書類整理を再開した。 「どうもありがとうございます。皆さん」 「ミルザムさんは、たくさんお仕事あるでしょうから、 こういうのは私たちに任せておいてください。 司くんも、いつも書類に囲まれて研究してますから、書類整理は手慣れたものですし」 ミルザムに、サクラコは笑顔を向ける。 一方、 湯上 凶司(ゆがみ・きょうじ)は、 パートナーのディミーア・ネフィリム(でぃみーあ・ねふぃりむ)とともに、 ネットでの選挙活動を行おうとしていた。 「お久しぶりです、ミルザム様。またお手伝いさせてもらいますよ」 凶司は、クイーン・ヴァンガード時代も、ミルザムに協力していたことから、 今回も、また協力を申し出ていた。 「アイドルとしての活動をアピールして、 ファンの皆さんにも応援してもらいましょう」 「そのために、私も協力しようと思って」 凶司のパートナーである、ディミーアは、 かつて、【『【M】シリウス』予備メンバー】として、 ミルザムとアイドル活動を共にしていた。 ディミーア本人としては、 自分の仕事はアイドルではないと、普段なら言うところだが、 今回ばかりは自分から進んでその役目を買って出ている。 「できれば新規の映像も取りたかったんだけど……」 「すみません、さすがにその時間は……」 「そうよね。ならいいわ。 ミルザム様の動画はこれまでのもたっぷりあるし」 ディミーアは、ミルザムに笑みを浮かべて答えた。 「じゃあ、一気にやっていくとするか」 機晶脳化で接続を行い、 凶司が、大量のデータをアップロードしていく。 無料の動画サイトなど、 アイドルとしてのミルザムのファンが集まるサイトで、 ミルザムのコンサートの映像などをアップしていく。 「巨乳すぎる都知事ミルザムたん……!」 「都知事やめちゃったら、地球でのアイドルも辞めちゃうのかな……」 コメントでは、ミルザムのファンたちから心配の声が上がっている。 「よし、計画通りだ」 ミルザムのファンは、これで、ミルザムに投票してくれるだろう。 そして、凶司は、 別のサイトでは、 現役都知事であるミルザムの、 現行での実績をアピールしていく。 他の候補に「対案はあるのか?」と追い詰めるのが狙いであった。 (人間、一度便利になったものは手放せないからな…… デメリットを上回るメリットがある事を強調していけば、勝てる選挙のはず!) たしかに、ミルザムが都知事になったことで 東京の治安や景気も安定している。 一方。 御神楽 陽太(みかぐら・ようた)は、 空京の家から、ミルザムを応援する旨、 ネット上に声明を発表していた。 空京からであるため、ネットの常時接続は可能である。 「先日、娘が誕生しました。 娘はパラミタ生まれの地球人ということになります。 親として、娘には地球とパラミタ両方の良い部分を見て育ってほしいと切に思います。 それ故、地球とパラミタがお互いを尊重し助け合える 真のパートナーとして手を取りあって発展して行くことを願っていますし、 その為の支援の手も惜しまないつもりです。 だからこそパラミタと地球の懸け橋として、 その絆を守り続ける為に奔走してくれるミルザム候補に心から期待し応援します」 陽太の妻、御神楽 環菜(みかぐら・かんな)との間には、 先日、娘が生まれたばかりである。 その子を育てるために、 パートナーたちと一緒に、陽太は、空京の家に住んでいるのだ。 ノーン・クリスタリア(のーん・くりすたりあ)は、 陽太と環菜の娘の、 お世話を引き受けていた。 「ミルザムさんがスゴク頑張れるよーに、いっぱい応援してあげてね!」 ノーンは、笑みを浮かべる。 「ふふ。わたしも妹ができたみたいで、こうしていると、なんだかとってもうれしいな」 陽太は、ネットに声明をアップロードするほか、 自筆でも同じ内容の手紙を書き、ミルザムの元に送っていた。 「どうもありがとうございます……!」 心のこもった手紙を見て、ミルザムは笑みを浮かべた。 こうして、ネット上での応援などで、 ミルザム応援のネットワークが広がっていった。