空京

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終焉の絆

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終焉の絆
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ミルザムの応援演説 2

ミルザムが演説を始めようとする中。

「地球に危険をもたらすミルザム・ツァンダめ!」
ミルザムに食って掛かるチンピラが現れる。

「いかん!」
アイン・ブラウ(あいん・ぶらう)が、ミルザムとの間に自分の身体を割り込ませる。

「きちんと選挙のルールを守っていただかないと、
困ってしまいますわ」
「なんだてめえ、うおっ!?」
リーブラ・オルタナティヴ(りーぶら・おるたなてぃぶ)が、
暴徒の身体を片手でつまみ上げる。

「どなたの指示でこのようなことをされているんですか?」
「そんなの俺の判断に決まって……」
リーブラは、暴徒の身体を放り投げた。
暴徒はゴミ捨て場に突っ込んで気絶する。

「あなた方もそうなのですか?
選挙活動の邪魔になりますので、
今すぐご退場願えますでしょうか」
リーブラは、仲間らしい暴徒たちを見据えて言う。

「何者かの手引きによって動いているのではないのか。
隠し立てするとためにならないぞ」
「う、うるせえ!
何言ってんだかわかんねえよ!」
「俺たちは、パラミタの連中が気にいらないだけだ!」
アインの問いに、暴徒たちが答える。

「あの様子……。
どうも、組織だっての犯行には見えませんわ。
そうであれば、とっととお帰りいただきましょう」
「ああ、そうだな」
リーブラとアインは顔を見合わせ、
契約者ではない暴徒たちが怪我をしないように気をつけながら、
相手取る。

鎮圧はあっという間であった。

ミルザムを襲ったのは、
大きな組織によるものではなく、
反パラミタの機運に煽られた者たちであった。


ミルザムは、騒然とする会場で、怯まずに演説を続ける。

「私がこうして、今までやってこれたのも、契約者の皆さんのおかげです。
そして、この東京で、
異世界からやってきた都知事である、
私のことを受け入れてくださった都民の皆さん。
そして、地球の皆さん。
これからも、地球とパラミタをつなぐ玄関口として、
東京の、そして、二つの世界のことを考えていきたいです!」

【S級四天王】の国頭 武尊(くにがみ・たける)が進み出ると、
学帽とサングラスを外す。
それと同時に、武尊は、
覚醒とエンド・オブ・ウォーズを使う。

「オレはかつて、エリュシオン帝国による
『2つの世界の繋がり』を断つ作戦に協力した事がある者だ」

武尊の発言に、人々はざわめく。

「当時のオレは、2つの世界の繋がりを断つ事が
世界を救う最善の手段だと信じていた。
そして、その事は今でも間違っていたと思わない」

しかし、武尊は、冷静に演説を続けた。

「ミルザム候補が2つの世界の協調を続けるべきだと
信じ行動するのであれば、
具体的な行動で証明させるべきではないだろうか。

計画なくして行動なし 行動なくして結果なし 結果なくして改善なし
改善なくして成果なし

彼女の今までの言動と行動。
そして再び知事になった際の行動を信じる事ができるなら、
ミルザム候補に投票して欲しい」

武尊の演説の様子は、
パートナーの猫井 又吉(ねこい・またきち)が、
宣伝広告を使って、生放送で全世界に中継していた。

また、資産家の資金で、
ネットでの生中継や
街頭の大型スクリーンの広告枠を購入するなどして、
地球とパラミタに広めている。

この中継は、
ミルザムの支持者を増やすだけでなく、
武尊のエンド・オブ・ウォーズで、戦意を失わせ、
対立候補の陣営に打撃を与えるのも目的であった。

地球での通信網の発達は凄まじく、
リアルタイムで生中継を見てしまった敵陣営は力を失っていた。

そして、
遠野 歌菜(とおの・かな)が、
ワールドメーカーの演出を駆使して、訴える。

「皆さん、聞いてください!」

歌菜は、パートナーの月崎 羽純(つきざき・はすみ)と手を取り合い、
イメージの奔流をあふれさせながら演説した。
いや、それは、むしろ、歌声といってよかった。

「滅びの上に、安定を得る。
誰かの犠牲の上にしか未来がないなんて、おかしい。

私は地球人です。
地球を、故郷の日本を愛しています。

それと同じくらいパラミタが好きです。
私はパラミタで色んな出会いと経験をしました。
パラミタの人々は地球人を受け入れてくれて
種族や出自が違っても『心』は同じという事を学びました。

同じなんです。
私達は。

運命とか秩序とか、そんな言葉で決めないで。
一緒に進む道は必ずあります。

どうか、パラミタの手を離さないで下さい」

CGも追いつけない、美しいパラミタと地球の映像が。
人々の笑顔が。
歌菜の歌声とともにあふれていく。

「それが運命や秩序と言うのなら、俺達でそれを変えていけばいい。

誰かの犠牲の上の平穏を得るという事は
次に、誰かの犠牲になる覚悟をするという事だ。

それでいいのか?
俺は絶対に御免だ。
ここで断ち切るべきだ。

立ち向かうために、パラミタと地球の繋がり……絆が必要なんだ」

羽純が、歌菜の言葉に重ねて訴える。
二人の手は、強く繋がれ、
それが、そのまま、パラミタと地球の絆を示している。

そして、
シリウス・バイナリスタ(しりうす・ばいなりすた)もまた、
ワールドメーカーとして、
これまでのミルザムの功績を、
クリエイト・ザ・ワールドで示していた。

魂に訴えかける歌声によって、
聴衆の心がひとつになる。

「そうですね。これが、私らしいやり方かもしれません」

「ミルザム、いつのまに!?
わかったよ、じゃあ、派手に行くぜ!」

踊り子の衣装に着替え、現れたミルザムに、
シリウスは笑みを浮かべると、
シュトゥルム・ウント・ドラングを用いつつ、バックミュージックを奏でる。

争いではなく、共存を望む、歌菜の歌声に乗せ、
ミルザムが踊る。

ミルザムの踊りが終わった時。
会場は、大きな拍手に包まれた。

「私もまた、ここに集まってくださった、多くの方々と同様、契約者ではありません。
しかし、契約者の友人たち、仲間たち。
そして、地球とパラミタの多くの方々に支えられ、ここまでやってきました。
これからも、二つの世界が手を取り合い、
よりよい未来を目指していきましょう」

ミルザムが言った。
会場は、大きな一体感に包まれていた。
再び、拍手が巻き起こり、それは、東京の街に、いつまでも響いていた。




そして、選挙当日。

都知事選の投票率は過去最高となった。

ミルザムは無事に再選を果たす。

一方、ドクター・ハデス(どくたー・はです)も派手なパフォーマンスのため、
それなりの人気を集めていた。
「次こそは必ず、世界征服を成功させてやる!」
再戦を誓うハデスなのであった。


「皆さんのおかげで、
もう一度、都知事をやらせていただけることになりました。
これから、私はますます努力していきます。
パラミタと地球は友として、共存していける。
今回、選挙を手伝っていただいたことで、
私は改めて実感したんです」

ミルザムは、契約者たちに深く感謝した。

「これは、始まりです。
これから、私たちが創っていく世界の……。
世界の終焉を、きっと回避してみせましょう」

ミルザムの言葉に、多くの契約者たちがうなずいた。

また、この言葉は、
ネットやテレビ、新聞など、様々なメディアを通じて報道され、
地球の人々に、再び希望を与えたのであった。