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リアクション
無限の敵 1
イーダフェルトの上空、大きな光の切れ目から、
怪物たちは我が物顔で出現し続けていた
「たくさんいるでございますね……」
「か弱き者もここまでいれば、大局を左右するでしょうな」
大型飛空艇ワロニエンに登場するサオリ・ナガオ(さおり・ながお)、藤原 時平(ふじわらの・ときひら)が怪物たちを見つめる。
光の切れ目から永延と出現を続ける怪物たちを見て、だが絶望はない。
「生憎、言われましたの。一人も欠けるなと」
「無論だ。準備は万全。補給は任せよ、指揮官殿……にょほほ!」
「ありがとうございます。……傭兵部隊へ伝達!
貴方たち様はこのワロニエンの援護、しかし被弾により損傷したらすぐにドッグへ!
後は自己判断により撤退を許可します! その命、捨てることだけはなきように!
……では、開幕の合図、僭越ながらこのサオリ・ナガオが、やらせていただきます!」
ワロニエンから複数のミサイルが発射され、怪物に着弾。
それが合図となる。
全ての敵が途端に勢いを増してイーダフェルトへ進み始める。
「各員発艦してください! オフェンスは任せましたですぅ!」
サオリの言葉を聞くか否か、三機のイコンがワロニエンから飛び出した。
「……よき指揮官の才能を垣間見た。
そのようなものの才、未来をここで終わらせるわけにはいかん!」
ストーク拠点強襲攻撃改修型に乗りつつ相沢 洋(あいざわ・ひろし)は強く叫んだ。
同じく搭乗者である相沢 洋孝(あいざわ・ひろたか)はせわしなくレーダー等を見ていた。
「ヨーゼフ、エミリア、手はず通りに行くぞ!」
「……了解」
「では、まずわたくしが行きます!」
洋の言葉を聞いてエミリア・ヴィーナ(えみりあ・う゛ぃーな)が最前線へ。
その目標は大型の怪物。
狂い、涎をだらだらとたらしながら、その瞳は恐怖や絶望、ありとあらゆる負の感情を内包しているようにも見えた。
「コンラート!」
「周りに敵はいません。まずは一発切り込みましょう」
「了解です!」
コンラート・シュタイン(こんらーと・しゅたいん)を信じ、エミリアが操るORPOはブースターを全力で吹かした。
銃剣突きのビームアサルトライフルを手に、その銃剣を大型怪物の胸へと突き立てる。
まだ足りない。あと一歩足りない。
その横あいからまた別の敵がやってくる。
「エミリアさんの援護を!」
「……」
エリス・メリベート(えりす・めりべーと)の叫びに、ヨーゼフ・ケラー(よーぜふ・けらー)は返事をしない。
いやそうではない。返事はしていた。
ノルトから発射したプラズマキャノンで、敵を撃墜する。
それこそがヨーゼフの返事だった。
「はあああああっ!」
エミリアがブースターを壊さんばかりに吹かし、奥へ奥へと銃剣をつきたてる。
しかし、大型怪物もやられているばかりではない。
その頭を振り乱し、乱雑にエミリアを狙う。
「させん!」
飛び込んできた洋がアックスを振るい、その頭を断ち切る。
「エミリア、引き撃つぞ!」
「了解です!」
洋とエミリアはそのまま後ろへ移動しつつ、銃器を乱射する。
大型怪物はあわや蜂の巣となり、落下していく。
しかし、たったそれだけの間に、無数に沸いたワロニエンは敵に囲まれていた。
「にょほほ! やはり数とは脅威ですな!」
「“あきらめてはダメですぅ……最後の最後まで希望を捨てずに足掻いてみれば、道は必ず開ける……ハズですぅ!”」
そのサオリの言葉に反応してか、傭兵部隊も撤退しない。普段の彼等であれば、もう逃げているかもしれないのに。
己が勇気を振り絞り、必死にワロニエンを援護する。
「……ワロニエンもありったけをだしますわ!」
やめろ、とは言わなかった。指揮官として、ワロニエンを沈めるわけにはいかなかったから。
だが圧倒的な数に、サオリたちは押しつぶされそうになる。
「“冷静に頭を冷やして考えなさい。あなたには、まだ出来る事がある筈です”」
エミリアの冷静な声。接近戦で群がる小型怪物をなぎ払う。
「“単刀直入に言う。生きろ。……私が伝えたいのは、それだけだ”」
寡黙なヨーゼフが一言。それと共に放たれるは全てを打ち払う火力支援が行われる。
ヨーゼフとエミリアはワロニエンの援護に。
今のオフェンスは、洋だけだ。
「さて、一人ぼっちだね、じっちゃん」
「帰ったらげんこつな」
「うんっ、だから帰ろうね。さあ、未来を書き換えようかい!」
「ああ。……全火力投入! 命令ではなく私の意志で決定する。
全弾、叩きこめぇ!!」
洋は自イコンの兵装のありったけを解放。
押し寄せる怪物の波を、ビックバンブラストで破滅させ、
艦載用大型荷電粒子砲でボロボロにし、
ウィッチクラフトライフルで更に追撃し、
アックスでトドメを刺す。
揺るぎなき強さ、未だ底は知れず。