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リアクション
巨大人型 4
伊勢により、巨大人型は停止。
これを受けて、大部隊は総攻撃の準備を行い始める。
その忙しくなる前、エールヴァント・フォルケン(えーるう゛ぁんと・ふぉるけん)が小暮 秀幸(こぐれ・ひでゆき)と通信をしていた。
『……となるわけだ』
「なるほど。じゃ作戦の成功率はどれくらいになるのかな?」
そう尋ねられた秀幸は即座に返事をしようとする。
『この作戦の成功率は79.……』
「もちろん100%って言ってくれるよね」
素敵な笑顔でそう言った。むしろそれ以外の言葉は望んでいないかのようだ。
『……本来ならばそのような数値は非現実的でだが、この戦いではそうじゃない。
……この作戦の成功率は100%、いや120%です!』
「そっか、そうだね。成功して更にその先もハッピーになるくらいじゃないとね。
わかった。僕もそうなるよう尽力するから、小暮君も頑張ってね。報告もよろしく」
『ああ、わかった』
小暮との通信を終えたエールヴァントが、巨大人型を睨む。
フォルセティに登場、同乗者としてアルフ・シュライア(あるふ・しゅらいあ)の姿もある。
「まったく無茶するぜ……。俺もあれくらいすればモテるのかねぇ!」
「それは一人でやってきてね」
アルフのいつも通りの言葉に、エールヴァントもいつも通りに返した。
「聞いた話だと勝率は100%だって。そのためには僕たちも頑張らないと」
「いやっほー!
宴会が俺達を待つ! 酒池肉林! 女の子たちのサービスサービス!」
とアルフは絶好調だった。
「はっはっは、いつも通りだな? だが絶望するより、それくらいが丁度いいさ!」
その様子を通信で聞いていたウォーレン・アルベルタ(うぉーれん・あるべるた)が素敵な笑顔を浮かべて、笑い飛ばした。
後方ではジュノ・シェンノート(じゅの・しぇんのーと)が忙しそうに手を動かし続けている。
「……伊勢、葛城吹雪もそう長くはもちそうにありません。至急助けなくては」
「わかってるよ、部隊だけじゃない……この戦場で共に戦っている味方は全員仲間だ!
絶対に助けて見せるさ!」
「よくぞ言った。して、後は実行するのみぞ!
“さあ、その想いを刃に託し、邁進せい!”」
「うお! 関羽様、馬で参戦?!」
突如現れた、赤き馬、赤兎馬に乗りし関帝聖君こと関羽・雲長(かんう・うんちょう)。
その威圧力は、それだけ敵を動かさなくさせるほど。
「我が先を行く! 貴殿らも続けい!」
その美しき髯を翻し、関羽が駆ける。駆けた道のりに、敵は残らず。
「うおおおーかっけー! 俺もあれくらいになったらモテるかなー!?
くー!
“まだ出会わぬ数多の女の子たちが、俺とのデートを熱望している、に違いない!
彼女たちとの出会いの為に、新たな世界は訪れるのが必然なんだぜ。
デートに忙しい毎日が俺を待つ! 新たな世界カモーン!”」
アルフの心からの叫びにエールヴァントも思わず笑い出す。
「そうだね。“新たな世界が平和に満ちているように、今僕たちも頑張ってるから!”
ここで無に帰すわけには、行かないんだ!」
関羽に続いてエールヴァントも攻撃を開始。
押し寄せる敵を押し返す。それは、他の味方からの援護もあってこそ。
「こちら【新星】REYER、ケーニッヒ・ファウスト(けーにっひ・ふぁうすと)」
「同じくギュンター・ビュッヘル(ぎゅんたー・びゅっへる)だ」
ダス・ライヒのケーニッヒと、ニーベルンゲンのギュンターがウォーレンに通信する。
「我らはジーベック少佐の命により、そちらと連携することにした。よろしく頼む」
「これはこれは、ご丁寧に。鋼鉄の獅子、ウォーレン・アルベルタだ。
協力、感謝する。フォローは任せてくれ」
「よく知ってるよ、サポートさせたら天下一品のパイロットがいるってね」
ギュンターの言葉にウォーレンは頭をかきながら少し笑った。
「そんなことないって……だがそこまで信用されちゃ、やらないわけないはいかないってな!」
ジャーマを勢いよく動かすウォーレン。
それに続き、ケーニッヒとギュンターも巨大人型へと接近。
「泣いても笑っても、これが最後の戦いだ! 全力で行くぞ!」
「ええ! 戦場の状況把握は任せて!」
ケーニッヒの威勢のよさに触発された八上 麻衣(やがみ・まい)も大きな声で答える。
「左からきます!」
「そこか!」
一度静止し、ウィッチクラフトライフルで敵を迎撃するケーニッヒ。
敵は左からも来ている。が、麻衣はそれを攻撃しろとは言わなかった。
「一応、用心はしているようだが、戦場では何が起きるか分からないからな……
私がいる場所で、不意打ちなどできないと思ってもらおう!」
それはニーベルンゲンを操縦するギュンターを信頼しているからこそ。
「巨大人型はどうだ!」
「未だ伊勢に集中、動く気配はなし。だがもう伊勢もまずい状態だ」
巨大人型の動きを注意深く観察していたサミュエル・ユンク(さみゅえる・ゆんく)が報告する。
「くそっ、そこをどけ! どぉりゃあああッッッ!!!!」
仲間の危機を救おうとケーニッヒが遮二無二構わず突貫する。
それは危険、それは無謀、それは無茶。
「だとしても、仲間を愛する気持ち、俺にもわかるぜ!
だからよ! みーんな、愛してんぜ☆」
ウォーレンがそれを全力でカバーし、ケーニッヒの無茶を押し通させる。
「助かる!」
更にギュンターのフォローも入り、敵を寄せ付けない三機。
「隊長、俺たち死んでも貴方についていきます! だから必ずあいつを倒しましょう!」
ケーニッヒの僚機についていた部下がそんなことを口にする。
と、ケーニッヒは部下を一喝した。
「“馬鹿野郎! 戦いってのはなァ、生きるためにするもんなんだよ! 死ぬためじゃねえ!”
我も、貴様らも、ここにいる全員生きるんだよ!」
それに続いてギュンターも言葉をかけてやる。
「“他人の生き方にどうのこうのと注文を付けるのは性に合わないが、これだけは言っとくぜ……
死ぬのはまだ早い。もう少しだけ、生きてみろよ”」
二人の言葉に部下たちは心を入れ替える。生きるために、戦おうと心に誓う。
「と、伝えたいのはあのデカブツに、なんだがな」
ギュンターがそう零す。
「“これだけのエネルギー、どうして、もう一度生きるために使おうとしないの?”」
ふと呟かれた麻衣の疑問に、巨大人型は答えてはくれない。
「“生きる事は確かに怖い事、でも……それ以上に眩しく暖かなもんだぜ!”
それを教えてやらないとな!」
「“世界は貴方方を待っています、祝福します。
困難があるのが人生、苦しんだ分 幸せにならないとですよ。
あぁ、案外何とかなるものですよ”
俺だって、ウォーレンたちに逢えて幸せになりましたからね」
ウォーレンに続いてジュノが本心を吐露した。
「……ん!? え!? デレ?! ジュノさん、ちょ」
「さあ行きますよ!」
ジェノはウォーレンに二の句をつがせなかった。
『それじゃネージュちゃん、後方支援、どがんどがんと頼むぜ!』
「わかった! ……ウォーレンさんは嬉しそうだね?」
『ちょっと、嬉しいサプライズがあってな!
この戦いが終わったら皆に話すさ☆』
「うわー楽しみ! それじゃちゃんと戦わないとね!」
ウォーレンからの通信を聞いて楽しそうにするのはミニュイ・プリマヴェールの搭乗者、ネージュ・フロゥ(ねーじゅ・ふろう)。
「あらあら、楽しそうですわね」
それを見ていた高天原 水穂(たかまがはら・みずほ)も嬉しそうに、にこにことしている。
「それじゃお話が早く聞けるように、できることをしないとですわね!」
「うんっ、よっし! やっるよー!」
その外見とは裏腹に、搭載しているのは艦載用大型荷電粒子砲。
「“新しいことは怖くないから。きっと大丈夫!”
だから、怖がらないで道を空けて!」
祈願と共に放たれる粒子砲は巨大人型の頭部に炸裂する。
だが、これだけの攻撃を受けながらもまだ倒れない。
最早伊勢の陥落は目前だ。
「そうはさせん!」
「ってことらしいからさ、手伝うってなぁ!」
ネージュのイコンの両サイドに重火力パック仕様のプラヴァーが二機、同時にプラズマキャノンを放ち、巨大人型を狙い打つ。
トーテンコップ、及びホーエンシュタウフェン。
その乗り手であるマーゼン・クロッシュナー(まーぜん・くろっしゅなー)と三田 アム(みた・あむ)、ハインリヒ・ヴェーゼル(はいんりひ・う゛ぇーぜる)と川原 亜衣(かわはら・あい)。
「すっごいすごい! すっごい火力でどばんどばんだね!」
「遠距離砲撃の命を受けた」
「一緒のことやってるやつがいたから、協力してこいって言われたわけ……
最終決戦だか何だか知らないけどよ、さっさと終わらせてナンパにでも行きたいもんだ」
ハインリヒの軽薄な発言に亜衣は周辺の警戒をしながらも、突っ込みをいれる。
「最後の大事な戦闘中になんということを……だめよ、そんなんじゃ」
そんなハインリヒと亜衣のやりとりを見ていたネージュが笑う。
「あははは! まるでアルフさんみたいだね!」
「あらあら、そうかもしれませんね。うふふ」
四人は戦闘の最中とは思えないほどに打ち解けていた。
「最後の戦いだろうが最初の戦いだろうが、我々のやる事は変わらん……任務を遂行する。それだけだ」
「そうね。任務を遂行して、その上で私は言ってあげたいわ。
“……一度だけ、未来を信じてみてはどうかしら?”、って」
アムの問いかけを聞いて、マーゼンは「そうだな」と言い、言葉を続ける。
「そのためにも、遂行しきらねばならん」
「“確かに人生は辛い事だらけだよな……だが、決してそれだけじゃないってのも事実だ”
ついでにナンパの方法でも教えてやるか!」
「ああ、そうしてやれ……!」
ハインリヒとマーゼンが再度プラズマキャノンを発射。
前衛で戦う味方たちを厚く支援する。
「うん! フィナーレまで最高速度で駆け抜けるよー!! はっしゃー!!」
ネージュもまた同じように荷電粒子砲を放つ。
更に前線では関羽や他のイコン部隊が巨大人型の周辺で懸命に攻撃を継続。
他の敵からの反撃を被弾しながらも、一機として引く気配はない。
そのおかげにより、伊勢はまだ落ちていない。巨大人型も動いていない。