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リアクション
全ての命を取りこぼさない
イーダフェルト外、その空。
先ほどよりも多くの怪物が出現し、巨大な人型もより早く前進してくる。
つまりそれは、戦闘の激化を意味していた。
負傷者は増え続けていくばかり。
だがそれに手を差し伸べ続ける者たちもいる。
病院船ドール・ユリュリュズの内部では多くの負傷兵がうめいていた。
彼等の救護を行うのは結和・ラックスタイン（ゆうわ・らっくすたいん）にアンネ・アンネ 三号（あんねあんね・さんごう）。
そこかしこから聞こえる助けてくれという声。
軽傷から重傷まで、ありとあらゆる怪我が揃っている、地獄のような光景。
「大丈夫ですからね。必ずよくなりますから、もう少し頑張ってくださいね」
結和が負傷兵を治療しながら、安心させるように言い聞かせる。
まだまだ多くの負傷兵がいるにも関わらず、彼女はその全てを助けようと本気で考えていた。
その賢明な姿を見て、負傷兵たちも少なからず勇気をもらっていた。
「……まだ来るよ」
「全て受け入れてください」
結和は即断した。その言葉にアンネも頷いた。
駆け込んできたのは、負傷兵と彼等に肩を貸しているエミン・イェシルメン（えみん・いぇしるめん）と金襴 かりん（きらん・かりん）だった。
彼等は小型飛空艇で飛びまわり、自力で帰還できない兵士たちを見つけてはここへ連れてきていた。
自分が持てるすべてのスキルを駆使して応急処置を行い、その上でここに連れてきて結和に治療を任せていた。
だが戦場を駆け抜けるせいか、二人の身体も傷だらけだった。
「お二人とも、平気ですか？」
結和がそう尋ねると、二人は笑顔で首を縦に振った。
「なんともないよ！」
「ワタシたちも、手伝う、よ」
そう言って二人も治療の手伝いをし始める。
しかし、それ以上の負傷兵の多さに手が追いつかない。
「……もう、いい。俺、以外の人を……俺は、ここでおわ」
誰かが、犠牲を申し出た。その兵士は確かに虫の息だった。
息も絶え絶え、その様子から自らの死期を悟ったのかもしれない。
だが、かりんはそんな兵士の手をぎゅっと握った。
「“死んだと 思った…きょうだいと。また、あうことが、できたの。
ここで。終わらせたり、は しない。よ”
だから、あなたも、がんばるの」
ちらりと、操縦に専念するアンネを見るかりん。
しかしそれでも現状は地獄。
その地獄を、結和が変えていく。
「“優しい願いと想いは、きっと、あなたの運命をも変えるって思います。
みんな一緒に幸せに。あなたたちも一緒に、きっと”」
両手を組み合わせて、神に祈りを捧げるように。
ドール・ユリュリュズを範囲に指定し、巨大な魔方陣を発生させる。
魔方陣からは暖かな光が溢れ、負傷兵たちの傷を癒し、体中から力が漲らせる。
「遅くなりました。これも長く続きませんので、なるべく多くの人が集まったらと。
辛い思いをさせてしまい、申し訳ありません」
先ほどまで死期すら悟っていた兵士の面持ちもよくなっている。
「さあみんな！ この世界はきっと平気だよ。生きて愛する人のところへ帰ろうよ！
“怖がらないで、大丈夫。この世界は愛に溢れているんだよ！”」
エミンの愛の溢れる言葉に、涙する負傷兵たちも多い。
その涙は生きたいと願う気持ちが溢れ出し、零れ落ちたものかもしれない。
この四人ならきっと誰も取りこぼすことはないだろう。
終始笑顔で、明るく、治療は続けられていった。
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